「1泊2日の出張に、夏休みの子どもを同伴」→子ども分の“旅費・宿泊費も請求”で懲戒解雇に!? 経費に入れる実務・法律上のリスクとは
中には、出張の日程が子どもの休みと重なったことで、「せっかくの機会だから一緒に連れて行こう」と考える人もいるようです。子どもとの時間を大切にしつつ、仕事もこなすという発想は一見効率的にも思えます。
しかし、子どもが業務に関与しないにもかかわらず、子どもの旅費や宿泊費を経費として処理した場合には、後々重大な問題に発展する可能性があります。
本記事では、子ども同伴出張における経費処理のルールと、会社に発覚した際の実務上・法律上のリスクについて解説します。
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同伴した子どもの旅費や宿泊費、なぜ経費にならない?
会社の経費として認められる出張費は、業務の遂行に直接必要な支出に限られます。交通費や宿泊費も、業務に関連していることが前提となっており、業務に関係のない支出は「私的な費用」として取り扱われます。
この原則に照らせば、子どもを出張に同伴させた場合、子どもの旅費や宿泊費は業務に関与しない限り経費とは認められません。法人税法上、私的な支出は損金算入の対象外であり、会社の経費として処理することはできないのです。
実際、国税庁が示す法人税基本通達では、役員が海外出張の際に親族などを同伴させた場合、親族の旅費は「役員への給与」として取り扱うとされています。
この規定は役員の海外出張に関するものですが、「業務に関係ない支出は経費にできない」という基本的な考え方は、社員にも、国内出張にも当然あてはまると考えるべきでしょう。
経費に入れてしまったらどうなる?
同伴した子どもの旅費や宿泊費を経費として精算してしまった場合、「経費の不正請求」とみなされるおそれがあります。たとえ軽い気持ちであっても、社内規定や法令に反する行為であり、処分の対象となる可能性があります。
会社側が不正と判断した場合、注意指導にとどまらず、減給や出勤停止などの懲戒処分、悪質な場合は懲戒解雇に至るケースもあります。実際に、出張に家族を同伴させ、家族分の費用も経費として申請したことが発覚し、解雇された事例も報告されています。
さらに、意図的に請求したと見なされた場合は、刑法上の詐欺罪や業務上横領罪に問われる可能性もあります。会社の資金を不正に使用したと評価されれば、民事上だけでなく刑事上の責任が問われる事態にもなりかねません。
精算が通っても、それで終わりではない
同伴した子どもの宿泊などに関する費用を申請し、経費として支払われたとします。しかし、それは業務上適正な支出と認められたわけではなく、あくまで形式的に処理されたにすぎないと考えておいたほうが良いでしょう。
同伴の事実は、意外なところから発覚することがあります。宿泊先の予約内容や領収書、交通手段の記録、さらには本人や家族のSNS投稿など、行動の痕跡はさまざまな形で残るものです。
最近では、経費処理の適正性がより厳しく問われるようになっており、税務調査などで内容が精査されるケースも見られます。
加えて、発覚した場合のリスクは決して小さくありません。懲戒処分や信用の失墜など、取り返しのつかない結果を招くこともあります。バレなければ問題ないという考え方は、結果的にもっとも危ういと認識すべきでしょう。
まとめ
子ども同伴の出張費用は、業務に関係しない分は経費として認められず、私的な支出とみなされるのが原則です。たとえ精算システムを通っても、それで問題がなかったことになるとは限らず、後から発覚すれば重大な処分につながるおそれもあります。
夏休み中に子どもを出張に同行させる場合は、自身の業務費用と子どもに関わる費用を明確に区分し、子どもにかかった費用は私費として処理することが基本です。制度や会社のルールを正しく理解し、不要なリスクを避けましょう。
出典
国税庁 基本通達・法人税法
e-Gov法令検索 刑法
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
