「危ないから寝るときもエアコン付けて」熱中症リスクより“電気代”を気にする高齢の母。夜間8時間くらいなら、そこまで高くないですよね? 実際の金額で見る「安心のコスト」とは
例えば、2025年6月、神奈川県の住宅で90代の女性が熱中症の疑いで搬送され、病院で死亡が確認された─今年の夏もこういった報道がなされています。女性は寝室におり、エアコンは使われていなかったということです。
このように、夜間でも熱中症で命を落とすケースは決して珍しくありません。では、就寝中にエアコンをつけっぱなしにすると、どれくらいの電気代がかかるのでしょうか。
本記事で詳しく解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
8時間つけっぱなしでも電気代は1日20円台
まず、1時間あたりの電気代を各種エアコンのカタログに記載のある「消費電力量の目安(冷房時)」を使って求めましょう。
この数字は、「JIS C9612:2013」という基準に基づくもので、5月23日から10月4日の135日間、6時から24時までの18時間、設定温度を27度にしてエアコンを使った場合の消費電力量を示す数字です。つまり18時間×135日間=2430時間の消費電力量を示しています。
例えば、「消費電力量の目安(冷房時)」が225キロワットアワーのエアコン(6畳用)を使っている場合、「225キロワットアワー÷2430時間」で計算した0.093キロワットアワーが1時間あたりの消費電力量となります。
もちろん、外気温や環境によって多少の違いはありますが、1つの目安になるでしょう。1キロワットアワーあたりの電気代の目安単価は、公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会が31円と定めており、1時間あたりの電気代は「0.093キロワットアワー×31円」で約2.88円となります。
つまり8時間使っても、2.88円×8時間=23円程度で、7月から9月の3ヶ月間(92日間)、毎日続けても2116円です。命の危険から身を守るためと考えれば、決して高い金額とはいえないのではないでしょうか。
もちろん、使っているエアコンの機種によって、電気代は異なります。家族が使うエアコンのカタログを確認し、電気代を概算して伝えてあげると良いでしょう。
少しでもエアコン代を安くしたいなら
もちろん、電気代をできるだけ抑えたいという家族の気持ちも理解できます。そうした場合は、無理のない範囲でエアコンを効率よく使う方法を意識してみましょう。
まず、フィルターの掃除が効果的です。環境省は2週間に一度の掃除を推奨しており、消費電力を約4%削減できるとしています。
また、室外機の周りに物を置かず風通しをよくすることも有効です。放熱効率が改善し、冷房効率の向上が見込めます。
可能であれば、設定温度を上げてみましょう。環境省の発表では、設定温度を1度上げるだけで約13%の電力量削減につながるとされています。とはいえ、設定温度を上げることが熱中症につながることもあるため、設定温度の変更は慎重に行いたいところです。
まずは、無理のない範囲で工夫して節電に努めるようにしましょう。
節約よりも命を守る行動を!
使っているエアコンの機種にもよりますが、就寝中に6畳用のエアコンを8時間使用しても、1日あたりの電気代は20円台、3ヶ月間使い続けても2000円台です。一方、夜間の熱中症は命にかかわる危険があります。
夏の間のエアコン電気代を、「命を守るための必要な出費」と考えれば、それほど高いものではないのではないでしょうか。高齢の親に説明する際は、具体的な金額や実例を示すことで、理解を得るようにしましょう。
出典
一般社団法人日本冷凍空調工業会 期間消費電力量を省エネ性の目安にお選びください
公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会 よくある質問 Q&A
環境省 家庭でできる節電アクション
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
