去年の8月の電気代が「1万5000円」でした。今年も“支援制度”があるそうですが、どれくらい安くなるのでしょうか?
ただし、今年は補助額が縮小されており、昨年ほどの軽減効果は期待できないかもしれません。本記事では、今年実施されている支援制度の内容や実際の軽減効果のほか、申請の必要性について分かりやすく解説します。
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目次
電気・ガス料金負担軽減支援事業とは
「電気・ガス料金負担軽減支援事業」は、一般家庭や企業を対象とした、電気・ガス料金の負担を軽減する事業です。7~9月の3ヶ月間、電気とガスの使用量に応じた金額が、請求額から自動的に値引きされます。
値引き額は、電気が1キロワットアワーあたり、ガスが1立方メートルあたりで単価が決められています。
支援事業が実施される背景
支援事業は、令和6年11月22日に閣議決定された「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」に基づき、実施されています。
エネルギー価格を含めた物価高騰を受けて、国民の生活を支援することがおもな目的です。また、冷房使用を控えることによって生じる熱中症のリスクを減らし、命を守ることも目的の一つとされています。
補助内容
ここからは、電気・ガス料金の補助内容を確認しましょう。
電気料金の値引き単価
2025年7~9月の電気使用における、契約種別の値引き単価は表1の通りです。
表1
| 時期 | 契約種別 | 値引き単価(1キロワットアワーあたり) |
|---|---|---|
| 7月 | 低圧 | 2.0円 |
| 高圧 | 1.0円 | |
| 8月 | 低圧 | 2.4円 |
| 高圧 | 1.2円 | |
| 9月 | 低圧 | 2.0円 |
| 高圧 | 1.0円 |
出典:経済産業省 資源エネルギー庁 「電気・ガス料金支援」に基づき筆者作成
値引き単価は、契約種別によって異なります。一般家庭や小規模なオフィス、小売店、飲食店などは「低圧」、大規模な施設や工場などは「高圧」での契約が多いようです。
また、電力使用量がピークになる8月の値引き単価が、7月と9月よりも高くなっていることがポイントです。
ガス料金の値引き単価
都市ガス料金についても、表2の通り、電気と同様に値引き単価が設定されています。
表2
| 時期 | 値引き単価(1立方メートルあたり) |
|---|---|
| 7月 | 8.0円 |
| 8月 | 10.0円 |
| 9月 | 8.0円 |
出典:経済産業省 資源エネルギー庁 「電気・ガス料金支援」に基づき筆者作成
都市ガスについても、3ヶ月間のうち8月の値引き単価が最も高いことが特徴です。
なお都市ガス料金の値引きについては、家庭および年間契約量1000万立方メートル未満の企業などが対象となります。
支援額は昨年を下回るが、一定の節約効果は期待できる
経済産業省によると、昨年(令和6年)の夏に実施された「酷暑乗り切り緊急支援」における、8~9月使用分の低圧電気料金の1キロワットアワーあたりの値引き額は4円でした。一方、2025年は最大2.4円であり、値引き単価は縮小しています。
しかし、今年も一定の節約効果は期待できる可能性が高いでしょう。
ここからは、昨年8月の電気料金が1万5000円だったと仮定し、今年も同量の電気を使用した場合の電気料金、および一般的なガス料金の節約額の目安を計算します。
電気料金の節約額の目安
公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会が算出した電力料金の目安単価は、1キロワットアワーあたり31円です。ここから昨年の値引き額4円を引くと、1キロワットアワーあたり27円になります。
昨年8月の電気料金が1万5000円だった場合の電気使用量は、次の通りです。
※本来、電気料金は「基本料金+(電力使用量×電力単価±燃料調整費+再生可能エネルギー発電促進賦課金」で計算されるようですが、今回は計算を簡略化するため一部を省略します
・1万5000円÷27円=約556キロワットアワー
今年の電気の値引き単価には、低圧の2.4円を適用します。この場合、値引き後の電力単価は1キロワットアワーあたり28.6円です。
以上より、今年8月の電気料金は次のように推測できるでしょう。
・約556キロワットアワー×28.6円=約1万5902円
通常の目安単価で計算した電気料金が約1万7236円のため、約1334円の節約となります。
ガス料金の節約額の目安
都市ガスについては、1ヶ月のガス使用量を、1世帯あたりの平均的な使用量である1ヶ月15立方メートルと想定します。15立方メートルに、8月の値引き単価10円を掛けると、値引き額の目安は8月が150円です。
これにより、電気とガスを合わせて、月1500円近い節約効果が期待できるでしょう。
補助を受けるための申請は不要
支援事業の補助を受けるための申請は不要です。契約中の電力会社・ガス会社が代行して制度に参加しているため、対象期間中に電気やガスを使用すれば、自動的に請求額から値引きされます。
実際の値引き額は、請求書やWeb明細で確認するといいでしょう。
ただし、値引きされた後の金額のみが記載されているほか、契約している会社によっては、値引きの対象外である可能性もあります。詳細は、契約している電力会社・ガス会社に問い合わせることをおすすめします。
去年8月の電気料金が1万5000円の場合、今年の8月の電気料金は支援制度で1000円以上の節約効果がある見込み
電気・ガス料金の補助制度によって、昨年8月の電気料金が1万5000円だった家庭が今年も同程度の使用量である場合、電気料金は約1万6000円になると推測されます。補助制度がない場合の電気料金と比較すると、1000円以上少ない計算です。
対象期間中の電気・ガスの使用により自動的に値引きを受けるため、申請は不要です。暑さが厳しい季節だからこそ、支援制度を味方にして夏を乗り切りましょう。
出典
公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会 よくある質問 Q&A
経済産業省
資源エネルギー庁 電気・ガス料金支援
2024年8月、9月及び10月使用分の電気・ガス料金支援の実施に伴い、電気・都市ガス料金の値引きを行うことができる特例認可を行いました
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
