パートの「106万円の壁」について質問です。「月9万円」を超えて働いているのですが、今後いくらか引かれてしまうのでしょうか?
本記事では、その条件とは何か、社会保険への加入のメリット、そして「106万円の壁」の今後の撤廃へ向けた動きについて解説します。
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
106万円の壁の適用条件とは?
106万円の壁が生じるのは、以下5つの条件がすべて満たされた場合です。
1. 勤務先の従業員数が51人以上
2. 週の所定労働時間が20時間以上
3. 月額賃金が8万8000円以上(年収換算で約106万円)
4. 雇用期間の見込みが2ヶ月以上
5. 学生ではない(ただし、夜間の学生は対象となります)
したがって、今回のケースで「月9万円」を超えて働き、かつ他の要件にも合致する場合には社会保険への加入が義務となり、健康保険料と厚生年金保険料が給料から天引きされることになります。
ただし、勤務先の従業員数が50名以下の場合や週の所定労働時間が20時間未満である場合など、一つでも当てはまらなければ、社会保険料への加入は不要であるため給料からの天引きもありません。
自身の現在の状況がこれらの条件に当てはまるかどうかについては、勤務先に確認されるとよいでしょう。
ちなみに、扶養内で働いていた人が月額9万8000円で働いた場合には、健康保険料が約4900円、厚生年金保険料が約9000円、合計約1万3900円が社会保険料として天引きされます。
社会保険への加入のメリット
「106万円の壁」を超えて働くと、健康保険料や厚生年金保険料が発生し手取りが減少するというデメリットはありますが、社会保険に加入することで以下のメリットもあります。したがって、ご自身の働き方を検討される場合には、こういったメリットも踏まえて検討されることをお勧めします。
1. 厚生年金のメリット
(1)老齢年金の充実
厚生年金に加入することで、基礎年金に加えて報酬比例部分が上乗せされるため、いわゆる「2階建て」の年金を受給することができます。
(2)障害年金の充実
病気やけがなどで障害等級1級もしくは2級と認定された場合には、障害基礎年金に加え、障害厚生年金も上乗せされた年金を受け取ることができます。また、3級以下の障害と認定された場合でも、国民年金加入のみだと障害年金を受給することができませんが、厚生年金保険に加入することで、障害年金または障害手当金(一時金)を受給することができます。
(3)遺族年金の充実
被保険者が亡くなった場合、残された遺族は遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金を受給することができます(各種要件あり)。
2. 健康保険のメリット
(1)傷病手当金
業務外の理由により療養にために働くことができなくなった場合には、その期間中(最長1年6ヶ月)に給与の3分の2相当を受給することができます。
(2)出産手当金
産休期間中、給与の3分の2相当を受給(出産手当金)することができます。
まとめ
「106万円の壁」を超えて社会保険料が発生した場合、手取りは減少するものの、健康保険や厚生年金など社会保険に加入するメリットもあります。メリットとデメリットを総合的に鑑み、今後の働き方を検討されることをお勧めします。
なお令和7(2025)年の年金制度改正法により、「106万円の壁」については、令和8(2026)年10月をめどに撤廃される予定です。また、従業員50人超の企業を対象とする企業規模要件についても、段階的に縮小・撤廃される予定ですので、法改正の動向についても注視をする必要があります。
詳細については、勤務先の担当者に確認してみるとよいでしょう。
出典
内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン 「年収の壁」対策がスタート!パートやアルバイトはどうなる?
厚生労働省 『年収の壁について知ろう』
厚生労働省 社会保険適用特設サイト パート・アルバイトのみなさま
執筆者 : 堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー
