「退職」までに「有給休暇」を消化できそうにありません。「買い取り」をしてもらうことは可能でしょうか?

配信日: 2025.08.27
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「退職」までに「有給休暇」を消化できそうにありません。「買い取り」をしてもらうことは可能でしょうか?
退職が決まっても、業務の引き継ぎや繁忙期の影響で、有給休暇をすべて使い切れないということもあるかもしれません。使わずに終わる休暇が「お金」に換えられるなら、納得感も大きく変わるでしょう。
 
しかし、有給休暇は本来「休むための権利」であり、安易に買い取りができるものではありません。そこでこの記事では、有給休暇の買い取りに関する制度的な背景から、実際に買い取られる可能性があるケースなどについて解説します。
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退職直前でも有給休暇を買い取ってもらえる可能性はある?

退職間際になると、業務の引き継ぎ、最終出社日、人員不足などの事情により、「すべての有給休暇を使い切るのは現実的に難しい」と感じる人は多くいます。このようなとき、「余った有給休暇を会社に買い取ってもらえないか」と考えることもあるかもしれません。
 
しかし制度上、有給休暇の買い取りは一部の例外を除いて制限されています。背景には、労働者の健康や働き方の改善を目的とする、労働基準法の趣旨があります。
 
では、その「一部の例外」とは、具体的にどういったケースなのでしょうか。
 

法律上は原則NG、それでも買い取りが認められる「例外」とは?

有給休暇の買い取りについて、労働基準法では原則として以下のように定められています。

●法定日数分の有給休暇は買い取り禁止
●労働者が休むことを前提に付与された制度であり、金銭での代替は認められない

しかし、実務上や厚生労働省の見解では、次の3つの例外に該当する場合に限り、買い取りが違法ではないとされています。

(1)法定日数を超える「会社独自の有給休暇」
例・年間20日支給されているが、法定日数は10日。その超過10日は買い取り可能。

(2)有効期限が切れる直前の「時効直前有給休暇」
有給休暇には2年間の時効があり、それを超えると消滅してしまいます。消滅前に会社が自主的に買い取るケースもあります。

(3)退職時に未消化の有給休暇が残っている場合
退職日に有給休暇を使いきれない場合、それを「金銭で補償する」ことは、制度上容認されています。

ただし、これらの買い取りはあくまでも「会社の裁量」によるものであり、労働者が請求すれば必ず支払われるわけではありません。企業によっては、「買い取りには一切応じない」という運用をしているところもあるため、まずは自社の就業規則を確認することが重要です。
 

「有給休暇を買い取ってほしい」と伝える前に知っておくべきこと

買い取りを希望する際には、いくつか注意しておくべきポイントがあります。
 
まず、自社の就業規則や過去の運用実績を確認しましょう。中には「退職時に限り、買い取り可能」と明記されている企業もあります。このような規定があれば、労働契約の一部として会社側にも履行義務が生じます。
 
次に、買い取り金額の計算方法を理解しておくことも大切です。有給休暇の1日あたりの金額は、以下のいずれかで計算されるのが一般的です。

●通常賃金方式(直近の給与をもとに日割り計算)
●平均賃金方式(過去3ヶ月の給与総額 ÷ 日数)
●標準報酬日額(社会保険の報酬月額 ÷ 30日)

金額は勤務形態や給与体系によっても異なりますが、月給制で手取り25万円の場合、有給休暇1日分の買い取り相場は8000円前後となるケースもあります。
 
また、交渉の際には「忙しくて取得できなかった」「引き継ぎの都合で取得を控えた」など、企業側の事情によって取得できなかったことを説明することで、交渉を前向きに進めやすくなる可能性があります。
 
加えて、有給休暇は「取得希望日を申請し、会社が時季変更権を行使しない限りは原則認められる」ものです。退職日までに申請していれば取得できるのが原則ですが、現場が多忙で協議できなかったなどの事情があれば、それも交渉材料となるでしょう。
 

まとめ

原則として有給休暇は「休むための権利」であり、法律上は買い取りが制限されています。しかし、退職時などの特定の場面では、会社の判断により未消化分を買い取ることが可能です。
 
自社の規定を確認し、過去の事例や金額の算出方法を把握したうえで、冷静に交渉を進めることが重要です。円満な退職に向けて、有給休暇を納得のいく形で処理できるよう準備しておくとよいでしょう。
 

出典

e-Gov 法令検索 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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