10月に「最低賃金」が改定! 妻は「時給が上がると106万円を超える」と言いますが、“壁が撤廃された”と聞きました。妻は年収を気にしなくて大丈夫ですよね?

配信日: 2025.08.31 更新日: 2025.09.01
この記事は約 3 分で読めます。
10月に「最低賃金」が改定! 妻は「時給が上がると106万円を超える」と言いますが、“壁が撤廃された”と聞きました。妻は年収を気にしなくて大丈夫ですよね?
野村総合研究所が2024年に実施した調査によると、パート勤務の主婦の約6割が年収の壁を意識して働き方を調整していると回答しました。そのような人にとって、今年は特に最低賃金の大幅な引き上げが予定されており、今までどおりの時間で働くと106万円の壁を超えてしまうケースも出てくるかもしれません。
 
一方、年金制度改正法により、106万円の壁が撤廃されることが決定したというニュースが話題になりました。このニュースを聞くと、もはや最低賃金の引き上げと106万円の壁を結びつけて心配する必要がないと思うかもしれませんが、2025年は引き続き106万円の壁が影響することに注意が必要です。
 
本記事では、106万円の壁の仕組みや2025年の最低賃金引き上げの内容と、それらによる家計への影響について解説します。
東雲悠太

FP2級、日商簿記3級、管理栄養士

106万円の壁が2025年も影響する理由

106万円の壁とは、次の条件を満たすと、家族の扶養から外れて厚生年金や健康保険への加入義務が生じ、保険料の自己負担が発生する年収の基準を指します。

●従業員51人以上の企業に勤めている
●月収が8万8000円以上(年収が約106万円以上)
●週の勤務が20時間以上
●2ヶ月を超えて働く予定がある
●学生ではない

2025年6月に成立した年金制度改正法では、年収106万円以上という要件を撤廃する方針が明記され、106万円の壁が撤廃されると話題になりました。
 
しかし、撤廃することは決まったものの、施行されるのは法律の公布から3年以内で、週20時間働くと年収が106万円を超える水準まで全国の最低賃金が上がるタイミングを見極めて判断されるため、2025年の最低賃金引き上げ時点では、106万円の壁は従来どおりです。
 

2025年度の最低賃金はどれくらい上がる?

最低賃金とは、労働者の生活を守るために定める賃金の下限額のことで、事業主はこの金額以上の時給を支払う義務があります。最低賃金は毎年改定が行われており、厚生労働省が公表した改定の目安額によると、2025年10月からの最低賃金は、全国の加重平均で時給1118円となり、現行の1055円から63円の引き上げとなります。
 
具体的な都道府県の例ではありませんが、全国の加重平均額の時給で月80時間働くパート社員を例として計算してみましょう。

●時給1055円(現行)×80時間×12ヶ月=約101万円
●時給1118円(改定後)×80時間×12ヶ月=約107万3280円

このように、働く時間が同じでも106万円の壁を超えてしまうケースが出てきます。結果として、家族の扶養内で働くためには、勤務時間を減らすなどの調整が必要といえます。
 

106万円の壁を超えたときの家計への影響はどれくらい?

年収106万円を超え、そのほかの条件も全て満たす場合、厚生年金と健康保険への加入が必要になります。例えば、年収110万円で社会保険に加入した場合、東京都の協会けんぽの料率を基準にすると、年間あたり健康保険料で約5万2000円(介護保険料は含まない)、厚生年金保険料で約9万7000円の自己負担が発生します。
 
一方、厚生年金に加入すると将来の年金額が増えるというメリットもあります。同じく年収110万円の人が1年間厚生年金に加入すると、受け取れる年金額が年間約5800円増加します。
 
仮に10年間加入すれば、年間約5万8000円が一生涯にわたって上乗せされる計算です。短期的な手取りの減少だけでなく、将来の受給額への影響も踏まえて判断することが大切です。
 

目指すべき年収をよく考えて自分に合った働き方を選択しよう

2025年10月より最低賃金が全国の加重平均で時給1118円とされ、現行の1055円から63円の引き上げとなることが見込まれます。
 
大幅な賃金の引き上げがある一方、施行までに時間がかかるため2025年に関しては「106万円の壁」は依然として残っています。そのため、今まで通りの勤務時間では収入が106万円の壁を超えることで扶養を外れ、社会保険料の自己負担が発生する人が現れる可能性があります。
 
保険料の自己負担で、短期的には損に感じるかもしれませんが、扶養を外れて個人で社会保険に加入することは、将来の年金額の増加など、中長期的な視点でのメリットも意識することが必要です。年金の仕組みなどを正しく理解し、どのような働き方が適しているかを家族で話し合いましょう。
 

出典

厚生労働省 社会保険の加入対象の拡大について
厚生労働省 令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表 (東京支部)
 
執筆者 : 東雲悠太
FP2級、日商簿記3級、管理栄養士

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問