60歳で「貯蓄3000万円」という両親。同世代の「平均・中央値」と比べて多いですか? 老後に“安心できる資産額”とは

配信日: 2025.09.12
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60歳で「貯蓄3000万円」という両親。同世代の「平均・中央値」と比べて多いですか? 老後に“安心できる資産額”とは
「老後2000万円問題」がクローズアップされ、5年以上になります。その間にインフレが進み、「2000万円では足りないのではないか」とも言われるようになりました。それでも、夫婦で60歳時点に3000万円の貯蓄があるとなれば「これで老後は安心だ」と感じるかもしれません。
 
客観的なデータと照らし合わせると、この金額は同世代と比べて多いのでしょうか。そして、老後の生活を安心して送るためには、一体いくらあれば良いのでしょうか。
山田圭佑

FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

60歳代夫婦の貯蓄、平均値と中央値はいくら?

日本において、世帯種が60歳代の家庭がどれほどの金融資産を保有しているのか、最新のデータを見てみましょう。金融経済教育推進機構が実施した「家計の金融行動に関する世論調査」の2024年(令和6年)調査によると、60歳代の二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)は以下のようになっています。

平均値:2033万円
中央値:650万円

このような統計における「平均値」は一部の富裕層に引き上げられる傾向があるため、「中央値」が実態に近いと言われていますが、60歳で保有金融資産3000万円というと、中央値(650万円)を3倍以上も上回り、平均値(2033万円)と比較しても、かなり高水準な状況であることが分かります。
 
統計的に見れば、両親の資産額は同世代の中でも「多い」部類に入るでしょう。
 
ただ、詳しくデータを見ていくと、60歳代の世帯において「3000万円以上の金融資産を保有している」と回答した世帯は、全体の20.0%を占めています。
 
同世代の5世帯に1世帯が当てはまると考えると、両親の状況は「極めて珍しい事例」とまでは言えません。「同世代の全体としてみると上位だが、富裕層と言えるほどではない」程度のランクに属していると認識しておきましょう。
 

「老後にこれだけあれば安心できる資産額」は、必ず自分で計算しよう

そもそも「老後2000万円問題」とは、「2019年時点において、一般的な年金受給額と一般的な老後の支出額を差し引きすると、毎月約5万5000円が不足する。年金受給を始めてから亡くなるまで30年程度あると考えると、不足額は累計で約2000万円となる」という、大変ざっくりとした計算を基に提言されたもの、という事実は、何度でも指摘したいところです。
 
あくまでも、これは「2019年当時の」「一般的な年金額と、老後の支出額」を根拠に試算されたもので、現在の社会情勢とは大きく異なり、個人がそれぞれに置かれた状況とは全くの別物であることを理解しましょう。
 
「60歳時点で保有資産が3000万円ある」という事実は、一般的には老後の安心を保証してくれそうに見えますが、両親の状況や今後の社会情勢(インフレの進行・年金額の減少・社会保障の水準低下など)によっては、資産額が多すぎて使い切れないということも、足りなくなってしまうということもありえます。必ず、両親を取り巻く現状と将来の希望を確認しましょう。
 
最も重要なことは、現在の資産保有額の数字だけを見て安心するのではなく、「老後のライフプラン」を、できるだけ現実的に、また具体的に描くことです。

●老後にどのような暮らしをしたいのか?
●そのためには、いくらお金が必要なのか?
●貯蓄をどのように取り崩していくのか?
●現時点からでも投資をするべきなのか?
●遺産をどれだけ、誰に向けて残したいのか?

このような問いを自ら立ててそれに答え、自分たちのための現実的なプランを立てることが、老後を豊かに生きるための第一歩となります。特に老後の医療費や介護費、住居費を具体的に計算し、インフレなどのリスクを考慮に入れた上で、資金計画を立てていくことが大切です。
 
不安がある場合は、ファイナンシャル・プランナー(FP)などの専門家に相談し、正確なライフプランの試算を行うこと、そして定期的にライフプランを見直すことをお勧めします。貯蓄額が十分にあるからこそ、それをどう生かすかという「使い方」を考えることが、老後の充実と安心につながるのです。
 

まとめ

60歳時点での保有資産額が3000万円であれば、同世代では上位5分の1に入る、比較的経済的余裕のある世帯だと言えるでしょう。ただ、この金額が充実した老後を送るのに十分なのかについては、今後の本人たちが希望する生活環境や社会情勢によって変化するため、断言することはできません。
 
経済的な「老後の安心」を得るために必要な金額は、「2000万円」であるとは限りません。不安がある場合は、必ず専門家に相談して老後のライフプランを試算してみましょう。
 

出典

金融経済教育推進機構(J-FLEC) 家計の金融行動に関する世論調査 2024年
 
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

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