同僚は「財形貯蓄がお得」と言うけど…実際「銀行預金」よりお得ですか? 利息非課税の“550万円の壁”は効果が小さいのでしょうか?

配信日: 2025.09.13
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同僚は「財形貯蓄がお得」と言うけど…実際「銀行預金」よりお得ですか? 利息非課税の“550万円の壁”は効果が小さいのでしょうか?
給与天引きで貯蓄ができる財形貯蓄制度というものがあります。会社の福利厚生としておなじみの制度で、利用している人も多いのではないでしょうか。
 
給料から自動でお金が貯まっていく手軽さはありますが、その一方で「銀行預金と比べて、具体的に何がどうお得なのか」と問われると、はっきりと答えられる人は少ないかもしれません。
 
本記事では、財形貯蓄のメリットとデメリットを整理し、銀行預金と比べてどちらがお得なのかを判断するための明確な基準を解説します。
大垣はち

FP2級

利息が非課税になる「550万円の壁」とは?

財形貯蓄制度には、「550万円の壁」と呼ばれる非課税の仕組みがあります。これは、財形貯蓄のうち「財形住宅貯蓄」と「財形年金貯蓄」の2種類を対象に、元本合計550万円までの貯蓄から発生する利息に税金がかからなくなる制度です。
 
では、この「利息が非課税」というメリットは、現在の金利水準でいくらくらいになるのでしょうか。仮に、元本550万円を年利0.02%の財形貯蓄に預けた場合で計算してみます。


・1年間の利息:550万円×0.02%=1100円
・本来かかる税金(20.315%):1100円×20.315%=約223円

このように、「550万円の壁」で得られる非課税効果は最大でも年間で223円ほどです。この金額にメリットを感じる人は少ないでしょう。さらに、この制度には注意点が2つあります。
 
1つ目は、お金の使い道が自由な「一般財形貯蓄」は非課税の対象外であることです。非課税の適用は、国が定めた「住宅取得」や「老後の年金準備」といった、特定の目的だけとなっています。
 
2つ目は、お金を使える目的が「住宅の取得」や「老後の年金準備」に限定されていることです。これら以外の目的で資金を引き出すと、非課税制度が取り消され、過去5年分の利息に対して税金がまとめて徴収されてしまいます。
 
年間わずか数百円の節税効果のために、これだけ制約があると、「550万円の壁」という非課税制度だけを目的として財形貯蓄を始めるのは、あまり現実的ではないでしょう。
 

財形貯蓄と銀行預金はどっちがお得?

財形貯蓄が銀行預金よりお得になるかどうかは、勤めている会社に「奨励金(しょうれいきん)」という制度があるかどうかで変わります。奨励金とは会社が福利厚生の一環として、社員が財形貯蓄で積み立てた額に対して、一定の割合でお金を上乗せしてくれる制度です。
 
この支給率は会社によって異なります。一般的には、積立額の1~5%程度が目安とされています。例えば毎月3万円を財形貯蓄し、会社が積立額の3%を奨励金として支給してくれる場合を考えてみましょう。


・毎月の上乗せ額:3万円×3%=900円
・年間の上乗せ額:900円×12ヶ月=1万800円

これは、元本に対して年利3%がプラスされるのと同じです。日本金融通信社が算出する預金平均金利によると、普通預金の平均金利は2025年9月8日時点で0.182%です。
 
自身が勤めている会社に奨励金制度があれば、財形貯蓄は銀行預金よりお得といえます。奨励金制度が導入されているか分からない場合は、人事部や総務部に奨励金制度の有無とその内容を確認してみましょう。
 

低金利の財形融資を利用できる

奨励金制度のほかに、将来、住宅の購入を考えている人向けのメリットとして「財形持家融資制度」があります。これは、財形貯蓄を1年以上続けており残高が50万円以上あるなどの条件を満たすと、住宅購入やリフォームのための融資を申し込める制度です。
 
金利は5年固定で、市場金利の状況によっては民間の住宅ローンよりも有利な条件で借り入れができる可能性があります。ほかのローンよりお得とは限りませんが、マイホームを検討する際の選択肢の1つとして知っておくと良いでしょう。
 

財形貯蓄は「非課税のメリット」より「会社の奨励金制度」で判断しよう

財形貯蓄は、勤めている会社によって、お得度が異なる制度です。「550万円の壁」という非課税メリットは、現在の金利水準では効果が小さく、財形貯蓄を始める判断材料としてはあまり重要ではありません。
 
それよりも、勤務先の会社が独自に上乗せしてくれる「奨励金制度」があるかどうかが、財形貯蓄を始める際の判断材料となり得ます。財形貯蓄を検討する際は、自身の会社の奨励金制度の有無とその内容を確認することから始めましょう。
 

出典

国税庁 No.1316 財形住宅貯蓄
国税庁 No.1319 財形年金貯蓄
厚生労働省 勤労者財産形成促進制度(財形制度)
厚生労働省 財形持家融資制度
株式会社日本金融通信社 最新預金平均金利情報
 
執筆者 : 大垣はち
FP2級

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