「最低賃金」の改定で10月から“時給が1226円”になり、心配なのは「年収の壁」。今年から「103万円の壁」も引き上げられたそうですが、“年間120万円以上”稼いでも大丈夫でしょうか?

配信日: 2025.09.26
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「最低賃金」の改定で10月から“時給が1226円”になり、心配なのは「年収の壁」。今年から「103万円の壁」も引き上げられたそうですが、“年間120万円以上”稼いでも大丈夫でしょうか?
東京都では、最低賃金額が10月より「1226円」に改定され、労働者にとっては嬉しさもある一方で、「年収の壁」を気にしている方にとっては気がかりな点もあるかもしれません。いわゆる「103万円の壁」も令和7年度税制改正によって引き上げられたそうですが、年収が120万円程度になっても問題がないのでしょうか。本記事で詳しく解説します。
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令和7年度の「地域別最低賃金」が改定され10月1日より順次適用される予定

厚生労働省は、2025年8月に令和7年度の「地域別最低賃金」について、賃金改定の目安を公式に発表しました。今回の引き上げ額は制度開始以来最高額となり、昨年から続く物価上昇による賃上げの
影響もあるとみられています。
 
今回の引き上げ額の決定に先立ち、政府は各都道府県ごとの経済実態を加味し、引き上げ額の目安を以下の表1のようにランク付けしていました。
 
表1

ランク 都道府県 金額目安
A 埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪 63円
B 北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、
滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡
63円
C 青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、 宮崎、鹿児島、沖縄 64円

出典:厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について」を基に筆者作成
 
2025年9月現在、すべての都道府県で答申がなされ、全国の加重平均額は1121円となり、結果として最低賃金はすべての都道府県で1000円を超える額となりました。
 
なお、一都三県の最低賃金額と実際の効力発生日をまとめると、以下の表2のようになります。
 
表2

都道府県 最低賃金額 効力発生日
東京都 1226円 令和7年10月3日
神奈川県 1225円 令和7年10月4日
埼玉県 1141円 令和7年11月1日
千葉県 1140円 令和7年10月3日

※参考資料を基に筆者作成
 

令和7年税制改正にて「年収の壁」が見直しに

最低賃金額が上がることは、多くの労働者にとって喜ばしいことかもしれません。しかし、同時に「年収の壁」はどうなったのか、気になる方も少なくないのではないでしょうか。今年、令和7年度の税制改正において、所得税の基礎控除の控除額および、給与所得控除の最低保障額の引き上げが実施されたためです。
 
今回の税制改正における具体的な金額としては、以下を含めたさまざまな変更がなされました。
 

・基礎控除を48万円から58万円へ
・給与所得控除の最低保障額を55万円から65万円へ

 
これにより、課税最低額は103万円から123万円に引き上げられました。
 
また、低所得者層の税負担への配慮や中所得者層を含めた税負担軽減を背景に、基礎控除の上乗せ特例を新たに創設するなどの変更も行われています。
 
具体的には、低所得者層に対する基礎控除に加えて特例控除を設けることで「課税最低限を160万円に引き上げ」るという仕組みを導入しました。また、中所得者層については令和7年・8年の時限措置として「高所得者優遇とならないよう工夫して上乗せ」といった措置が取られるそうです。
 
これらの政策の見直しは、令和7年度の年末調整から実際に適用されるということです。
 

「年収123万円」までなら所得税はかからない!ただし「社会保険」に注意が必要

令和7年度の税制改正により、従来の「年収の壁」であった年収103万円から、123万円まで引き上げられることとなりました。同時に、配偶者控除および配偶者特別控除の適用条件も見直されているため、扶養の範囲内であっても年収123万円までであれば課税されない、ということになります。
 
一方で、これは所得税の課税に限った話であり、社会保険に関する「年収の壁」は引き上げに至っていないという点には注意が必要です。要件を満たした場合に社会保険の加入義務が生じる「106万円の壁」や、社会保険の扶養から外れる「130万円の壁」は従来のまま継続されるため、混同しないようにしましょう。
 

まとめ

最低賃金の引き上げとともに、税制改正によって「103万円の壁」も123万円まで引き上げられることとなりました。一方で、社会保険の加入要件である「106万円の壁」や、扶養から外れる「130万円の壁」は依然として存在しているため、働き方には引き続き注意が必要です。
 

出典

厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について」
厚生労働省 全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました
東京労働局 東京都最低賃金を1,226円に引上げます
神奈川労働局 神奈川県最低賃金額63円の引上げへ-本日、神奈川地方最低賃金審議会が答申-【賃金室】
埼玉労働局 令和7年度埼玉県最低賃金の改正答申 時間額1,141円へ引上げ
千葉労働局 千葉県最低賃金の64円の引上げを答申
財務省 令和7年度税制改正の大綱(1/9)
財務省 基礎控除等の引上げと基礎控除の上乗せ特例の創設
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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