大学生の息子が「YouTube」で動画配信をしています。月に「8万円」ほどの収入があるようなのですが、扶養に入れたままで問題ないですか?
本記事では、2025年時点の制度を踏まえ、税法上の扶養控除や社会保険の扶養、さらには確定申告や住民税の扱いについて解説します。
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YouTube収入も含めた「扶養の年収の境界」は?
まず、確認しておきたいのが「税法上の扶養控除」です。大学生の場合、親が所得税の扶養控除を受けられるかは、子どもの年間の所得額で決まります。
令和7年(2025年)からは、扶養に入れるための条件は合計所得金額58万円以下となりました。16歳以上の一般の扶養親族は控除額が58万円ですが、大学生世代が該当する「特定扶養親族(19歳以上23歳未満)」では控除額が63万円に拡大されました。
YouTube収入は、給与所得とは異なり「雑所得」か「事業所得」として扱われます。給与所得には最低65万円に引き上げられた給与所得控除が適用されるため、給与年収では年収約123万円以下まで課税されませんが、YouTube収入にはこの控除は適用されません。
そのため、月8万円で年間96万円の収入がある場合、経費を差し引いても合計所得が58万円を超えると扶養控除の対象外となる可能性があります。
ただし、撮影機材の購入費や通信費、取材の交通費などの必要経費を計上できれば、所得を圧縮でき、経費差し引き後の所得が58万円以下に収まれば、親は引き続き扶養控除を受けられます。特に大学生の場合は「特定扶養親族」に該当し、控除額も大きいため扶養のメリットはとても大きいといえます。
また、合計所得金額が58万円超~123万円以下の場合は、令和7年度から新設された「特定親族特別控除」の対象となり、段階的に控除を受けられます。この仕組みにより、より多く収入があっても親の税負担が急激に増えるのを防ぐことができます。
社会保険の「扶養範囲」はどうなる?
もう一つ気を付けたいのが、「社会保険上の扶養」です。こちらは税法上の扶養とは異なるルールが定められており、一般的には年収130万円未満であれば扶養に入れます。
なお、令和7年10月1日以降、19歳以上23歳未満の大学生など若年層の被扶養者については、年間収入の上限が130万円未満から150万円未満に引き上げられます。
ただし、健康保険組合によって扱いが異なるため確認が必要です。
今回のケースでは年間96万円の収入であり、社会保険の扶養の基準である130万円を大きく下回ります。したがって、この範囲内であれば親の扶養から外れることはありません。息子さん自身が国民健康保険や国民年金に加入して保険料を負担する必要もなく、現在の扶養状態を継続できます。
確定申告・住民税の扱いは?
次に気になるのが、確定申告の要否です。YouTubeの収入は「雑所得」または「事業所得」として申告が必要になる場合があります。
ただし、会社員や学生アルバイトのように給与所得がある人の場合、給与所得以外の所得金額(雑所得や事業所得など)の合計が年間20万円以下であれば確定申告は不要です。給与所得がない場合は、基礎控除額の年間58万円以下であれば確定申告をする必要はありません。
大学生で給与所得がない場合、令和7年度は基礎控除58万円以下であれば確定申告は不要です。今回のケースでは年間96万円の収入がありますが、機材代や通信費を経費として差し引けば58万円以下に収まる可能性もあります。経費を差し引いても58万円を超える場合は確定申告が必要ですが、超えない場合は確定申告は不要です。
また、確定申告をしたとしても、基礎控除などを考慮すると、所得税額が発生しないケースも考えられます。
一方、住民税については申告が必要となる場合があります。自治体によって取り扱いが異なるため、息子さんの住所地の市区町村役場に確認しておくと安心です。
子どもの収入が増えたら早めに確認しよう
月8万円、年間96万円ほどのYouTube収入は、税法上の扶養控除の基準である合計所得金額58万円(給与所得者なら年収123万円)以下に収まらない場合が多いため、親の扶養から外れる可能性があります。特にYouTube収入は給与所得ではなく雑所得や事業所得として扱われ、給与所得控除が適用されません。
一方で、社会保険の扶養基準は年収130万円未満であり、2025年10月1日以降は19歳以上23歳未満の学生であれば年間150万円未満まで認められるケースもありますので、こちらの条件は比較的緩やかです。
収入が増えて基準を超えれば、扶養を外れて自ら税金や社会保険料を負担する必要があります。
また、確定申告や住民税の扱いは経費を差し引いた所得金額や自治体のルールによって異なるため、必要に応じて確認しておくことが大切です。今後収益が増える可能性のある方は、節目ごとに最新の制度を確認し、適切に対応することが安心につながります。
出典
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
全国健康保険協会(協会けんぽ) 被扶養者とは?
日本年金機構 19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります
国税庁 確定申告が必要な方
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
