“持ち家”の方が正解だと思っていましたが、税金や修繕費を考えると、“賃貸”の方が結果的にお金がかからないという声も…。実際どうなのでしょうか?
本記事では、見落としがちな費用やライフスタイルの違いも含め、持ち家と賃貸の“本当のコスト”を比較しながら、あなたに合った住まい選びのヒントをお伝えします。
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表面的な比較だけでは不十分? 持ち家・賃貸で見落としやすいコストとは
総務省が5年おきに行っている調査「平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」によると、持ち家は3280万2000戸で住宅総数のうち61.2%を占めます。
一方、賃貸は1906万5000戸で35.6%でした。そして、多くの人が住まい選びで注目するのは「毎月の支払額」です。持ち家ならローン返済、賃貸なら家賃。しかし、それだけを比較して「持ち家の方が得だ」と判断するのは危険です。持ち家には、購入後に必要となるさまざまな維持コストがあります。
【持ち家にかかる主な費用】
・固定資産税・都市計画税
土地・建物にかかる税金。年10〜20万円が一般的。
・修繕費・リフォーム費
屋根や外壁、設備の老朽化対応で10〜30年スパンで高額に。
・火災保険・地震保険
自然災害への備えとして必須。年間数万円。
・管理費・修繕積立金(マンションの場合)
月1〜2万円ほどが目安。
・購入時の諸費用
仲介手数料、登記費用、ローン手数料などで数十万円〜数百万円。
一方、賃貸はどうでしょうか。
【賃貸にかかる主な費用】
●毎月の家賃
●契約更新料(地域によって異なる)
●引っ越し費用や敷金・礼金(初期費用)
基本的に建物の修繕費や税金は大家負担のため、予想外の出費が少ない点がメリットです。ただし、家賃を支払い続けても将来の資産にはなりません。
このように、単純に「家賃とローンの額」だけで比べるのではなく、トータルコストで考える必要があります。
具体例で比較! 持ち家 vs 賃貸の総コストシミュレーション
実際にどちらがお金がかかるのかを、モデルケースをもとに比較してみましょう。
■ 前提条件
●物件価格 4000万円(戸建て)
●ローン金利 年1.5%、35年返済
●固定資産税 年間20万円
●修繕費 平均年間30万円(屋根・外壁・水回りなど)
●保険料 年間5万円
●家賃 月15万円(年間180万円)
●更新料 2年に1回、家賃1ヶ月分
●家財保険 年間1万円
図表1
■ 30年間住んだ場合の想定総コスト
| 費用項目 | 持ち家 | 賃貸 |
|---|---|---|
| 住宅費(ローン/家賃) | 約4800万円 | 約5400万円 |
| 固定資産税 | 約600万円 | — |
| 修繕・保険など | 約1050万円 | 約90万円 |
| 合計 | 約6450万円 | 約5490万円 |
※筆者作成
このモデルでは、賃貸の方が約1000万円コストが低くなる結果となりました。ただし、持ち家はローン完済後に“資産として残る家”があり、将来的に売却や賃貸化も可能です。
つまり、支出額だけで見ると賃貸が有利に見えても、“資産の有無”という視点を加えると、持ち家のメリットも無視できません。
正解は人によって異なるが、判断の軸を持とう
持ち家か賃貸か。この議論に「絶対的な正解」はありません。しかし、「長期的なコスト」「生活の自由度」「資産価値」など、複数の観点から比較することで、自分にとっての最適解は見えてきます。
大切なのは、「なんとなく持ち家」「とりあえず賃貸」といった曖昧な選択ではなく、自分のライフスタイルや将来設計に合った住まい方を選ぶことです。
今後の暮らしにおいてどちらが自分にとって安心できるか、後悔の少ない選択ができるよう、まずは目の前の費用だけでなく“住まいの一生コスト”を意識して考えてみましょう。
出典
総務省 平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
