物価高で生活が苦しい声がある一方、「夏休みの旅行者数」は増加傾向に。実際に“余裕がある家庭”はどのくらい存在するのでしょうか?
このようなギャップは、「旅行できる余裕がある家庭」が確実に存在していることを示唆します。では、その「余裕ある家庭」とはどれくらい、どのような層なのか。本稿では、旅行統計と家計データをもとに、その実態を読み解くとともに、私たち自身にも使えるヒントを探ります。
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目次
物価高でも旅行需要が伸びる構図 — 背景と傾向分析
まず、旅行者数や旅行消費額の動きを最新統計で確認します。
観光庁の「旅行・観光消費動向調査」によれば、2025年4〜6月期の国内旅行消費額は 6兆7988億円 と前年同期比 +6.2 % の伸び。
同期の国内旅行延べ旅行者数は 1億4566万人(+0.3%)、旅行単価は 4万6676円(+5.8%)と報告されています。また、株式会社JTB が発表した 2025年通年予測では、国内旅行総消費額は 14兆5900億円(前年比 +3.8 %)、一人あたり旅行費用は 4万7800円(前年比 +1.1 %)と見込まれています。
海外旅行では、旅行人数 1410万人(前年比 +8.5 %)、一人あたり費用 33万4100円(前年比 +6.2 %)、総旅行消費額 4兆7100億円(前年比 +15.2 %)の予測。
これらから読み取れることは以下のとおりです。
・旅行単価や消費額は上昇傾向にあり、物価高・交通費高騰の影響を受けつつも、旅行需要は底堅く推移している。
・増加の主因は「高単価旅行」「近距離旅行+宿泊クラス上昇」「回数は抑制しつつも質を上げる旅行」など、支出重視型の層がけん引している可能性が高い。
さらに、旅行をしない層に「家計に余裕がないから」が一定割合存在することも報告されており、二極化傾向を示唆します。このように「旅行増+物価高」は矛盾ではなく、需要構造・選択構造の変化 を反映した現象ともいえます。
家計可処分所得・実質所得の推移と分布 — “余裕”を持てる層のベース
旅行余力を考えるうえで、家計可処分所得の動きは重要な指標ですが、可処分所得や貯蓄率は時期により変動します。
株式会社大和総研の2012~2024年の家計実質可処分所得の推計によると、2012年~2024年にかけて、複数のモデル世帯で実質可処分所得は上昇傾向にあるとの見方があります。特に「30代4人世帯」は10.8%の上昇と推定されています。
ただし、物価上昇を考慮しない名目値ベースでの改善がメインであり、実質の購買力改善には限界があるという指摘もあります。
これらを踏まえると、「旅行余裕を持てる層」は、可処分所得水準が高く、実質値での目減り耐性がある世帯である可能性が高いといえます。
“余裕あり”と感じる家庭の割合・実態 — 調査結果からの読み解き
株式会社JTBの旅行動向アンケートでは、「家計に余裕がある」と回答した割合は 13.9 %。一方、「家計に余裕がない」層は 48.4 % に達しており、多くの人が経済的な制約を感じています。
このことから、旅行を志向する層の中でも「余裕を感じられる」と自己評価する層は、1〜2割程度と考えるのが妥当です。ただし注意点もあります。
・この調査対象は「旅行意向者・旅行参加者」を含むため、全世帯を代表するものではない。
・「余裕」という言葉は主観的であり、所得や資産構造と必ずしも整合しない。
また、節約型旅行を選ぶことで余裕を感じられるとする家庭もあり得るため、余裕層の定義そのものが幅を持ちます。したがって、全国世帯ベースで見れば「旅行に余裕を感じられる家庭」は 全体の10~20%程度 と推定するのが、現存データの範囲では現実的な線でしょう。
旅行者増でも「家計に余裕がある家庭」は少数派
旅行者数が増えていても、実際に「家計に余裕がある」と感じている家庭は1〜2割にとどまります。物価高の中、旅行を楽しむには収支の見直しや工夫が必要です。他人と比べず、自分の家計に合った無理のない選択を心がけましょう。
出典
株式会社JTB 2025年(1月~12月)の旅行動向見通し
株式会社大和総研 2012~2024年の家計実質可処分所得の推計
株式会社JTB 旅行動向アンケート
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
