「夫の年収700万円」世帯で、妻が“年収130万円”を超えると…夫の手取りは実際いくら減る?
では、今回のケースのように、夫の年収700万円の世帯において、妻の年収が130万円を超えると、夫の手取りは実際にどれほど減るのでしょうか。
本記事では、令和7年度税制改正の内容に基づきつつ、130万円の壁の仕組みと影響について詳しく解説します。
行政書士
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
「130万円の壁」は基本的に夫の手取りには関係がない
「130万円の壁」とは、パートなどで働く際に、配偶者の社会保険上の扶養から外れる基準を指します。
そのため、今回のケースでは妻の年収が130万円を超えたことで、それが夫の手取りに影響するわけではありません。年収130万円を超えることで、たしかに社会保険の扶養から外れて、社会保険料を負担する必要が出ますが、それはあくまでも自身のパート収入からです。
夫の手取りを気にするのであれば、超えてはいけない年収の壁は、「123万円の壁」と「201万円の壁」です。なぜなら、扶養に入っているパートの妻の収入が増えることによって夫の手取りが影響を受ける理由は、主に配偶者控除と配偶者特別控除だからです。
配偶者控除と配偶者特別控除
では、配偶者控除と配偶者特別控除について確認していきましょう。配偶者控除とは、妻自身に所得があっても、それが58万円以下であれば、夫の合計所得金額が年間1000万円以下であることが条件にはなりますが、妻の所得に応じて、夫が13万円から38万円の所得控除が得られるというものです。
この場合の所得とは、収入から各種控除を差し引いたものです。所得58万円以下というのは、収入がパートの給料のみであれば、年収123万円以下であると言い換えられます。これがいわゆる123万円の壁です。
それに対して配偶者特別控除とは、配偶者控除が受けられなくとも、所得133万円以下(収入がパートの給料のみであれば年収201万5999円以下)であれば、その金額と夫の収入に応じて、夫が1万円から38万円の所得控除が受けられるというものになります。
実際にどのくらいの額が夫の手取りから減っていく?
では、仮に今回のケースで、妻が配偶者控除、および配偶者特別控除の適用が減っていく、あるいは控除が適用されなくなるほど働いたとして、夫の手取りはどのくらい減っていくのでしょうか。
夫の年収は700万円ということなので、所得税の税率が20%、住民税は10%、そして夫の所得が900万円以下と仮定します。
もし、妻の年収が201万5999円を超えて配偶者特別控除を一切受けられないとしたら、夫の控除額は38万円減り、所得が38万円増えることになります。その場合、所得税は7万6000円、そして住民税が3万8000円で、合計で11万4000円ほども夫の手取りが減ると考えられるのです。
また、仮に妻の年収が180万円を超え、185万円まで働いた場合の控除額は16万円です。この場合に減ってしまう夫の手取りは6万6000円ほどと考えられます。
まとめ
妻が年収130万円を超えて働いても、その影響は妻自身に社会保険料が発生するにとどまり、基本的に夫の手取りには影響がありません。しかし、160万円を超えてからは、夫の配偶者特別控除が縮小し始めるため、夫の手取りが減ります。
社会保険と税は複雑であり、どれくらい稼ぐと世帯として損をしないのかは、個別の事情によって異なります。
もし、より損をしない形で、年収の壁を意識して働きたいというのであれば、一度信頼できるFPなどの専門家に相談することをおすすめいたします。
執筆者 : 柘植輝
行政書士
