転職が決まり「12月いっぱい」で退職予定…早めに「辞めます」と言うと“ボーナスに不利”ですか? 支払われない場合もあるのでしょうか?
本記事では、退職を早めに伝えるとボーナスに不利になるのか、また状況によっては支払われないことがあるのかについて解説します。
ファイナンシャルプランナー2級
目次
ボーナスは「必ずもらえるお金」ではない
実はボーナス(賞与)は法律で必ず支給するよう義務づけられたものではありません。労働基準法にはボーナスに関する規定はなく、「支給するかどうか」「支給の条件は何か」は会社ごとの就業規則や賃金規程で決めることになっています。
厚生労働省が公表しているモデル就業規則でも、ボーナスは「会社が必要に応じて支給することがある」とされており、支給の有無や条件は各社が定める規程に委ねられているのです。
ボーナスの支給要件となる「支給日在籍要件」
ボーナスの支給要件は会社ごとで異なりますが、支給日に在籍していることを条件とする「支給日在籍要件」を設けている会社があります。
「支給日在籍要件」とは、「支給日に在籍している社員にボーナスを支給する」といったルールです。もし支給日が12月20日で退職日が12月31日であれば、12月20日時点では在籍しているため、要件を満たすことになります。
しかし仮に12月15日付で退職していた場合は、支給日に在籍していないため、ボーナスを受け取れない可能性があるということです。つまり、同じ「12月退職」でも、支給日と退職日がいつかによって大きく結果が変わるのです。
退職予定者だからといって自動的に不支給になるわけではない
「辞めると伝えたらボーナスがもらえなくなるのではないか」と心配する人もいるでしょう。一般的に「退職を予定しているから」という理由だけで直ちにボーナスなしという判断になりにくいと考えられますが、あくまで会社が定めた支給条件を満たしているかがポイントになります。
会社によっては「退職予定者については賞与を減額または不支給とする」と規定していることもあります。就業規則や賃金規程にこの文言がはっきりと明記され、社員に周知されていれば、退職の旨を伝えた時点で不支給が決定されるケースもあるのです。
また、ボーナスは人事評価や業績に基づいて金額が決まることも多いため、退職が決まっている社員に対して評価が厳しくなるケースも考えられます。こうした点も含め、ボーナス額が減るリスクはゼロとは言えません。このように、単に「辞める」と伝えたからといって即不支給になるわけではありませんが、会社の規定次第で結果が変わります。
ボーナスが支払われない可能性のあるケース
ボーナスが支給されないのは、具体的にどんなときなのでしょうか。
支給日在籍要件を満たしていない場合
仮に12月20日が支給日の場合、12月19日までに退社してしまうと支給対象外となる可能性があります。
退職予定者に関する不支給条項がある場合
就業規則に「退職予定者には支給しない」と明記されていると、その規定に従って支給されないことがあります。
懲戒解雇や重大な規律違反がある場合
懲戒解雇といった特別な事情がある場合は、不支給や減額の対象となることがあります。
業績不振による全体不支給
会社の業績が大きく悪化したときは、退職者に限らず、全社員に対してボーナスが支給されないこともあります。
安心してボーナスを受け取るための注意点
ボーナスをきちんと受け取るためには、退職を伝える前に就業規則や賃金規程を読み、支給日在籍要件や退職者への取り扱いがどう定められているかを確認することが重要です。
もし「支給日当日に在籍していれば支給する」となっていた場合は、支給日以降を退職日として設定すれば、ボーナスを受け取れる可能性が高いでしょう。例えば「12月20日が支給日」と分かっているなら、12月31日を退職日にすることで支給対象に含まれやすくなります。
また退職の意思を伝えるときは、できるだけ円満に進めることも大切です。引き継ぎを丁寧に行い、最後まで誠実に勤務する姿勢を見せることで、不利益を受けるリスクを減らすことができるでしょう。
まとめ
「12月いっぱいで退職する」と決まっていても、冬のボーナスがどうなるかは会社の規定によって異なります。特に「支給日在籍要件」がある場合は、ボーナスの支給日に在籍しているかどうかが大きなポイントになることを覚えておきましょう。
退職予定だからといって自動的に不支給になるわけではありませんが、減額規定や人事評価の影響で金額が変わることもあります。しっかりとボーナスを受け取るために、事前に就業規則を確認し、退職日を支給日に合わせて調整するなどの工夫をするようにすると安心です。
出典
厚生労働省 モデル就業規則について
執筆者 : 渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級
