40歳で「扶養内ギリギリ」のパート勤務をしています。10月から“時給アップ”で年収が「130万円」を超えそうです。扶養から外れると、社会保険料はいくら引かれますか?
しかし時給アップなどの結果、働き方を変えていなくても社会保険の扶養範囲を超えてしまうケースもあるでしょう。その場合、どのくらい社会保険料がかかるのでしょうか?
本記事では、パートで働く妻(40歳)が、会社員の夫の扶養から外れたときの社会保険料について紹介します。
特定社会保険労務士・FP1級技能士
社会保険の扶養を外れるとどうなる?
妻が夫の社会保険の被扶養者である場合、妻のパート収入が年130万円以上になると、原則として扶養から外れます。次の事例で考えてみましょう。
妻の勤務先:従業員数20人程の中小企業
時給:10月から上がり、1300円になる
労働時間:月に85時間程(雇用保険のみ加入)
通勤手当・賞与等:なし
このケースの場合、妻の毎月のパート収入は時給アップにより11万円を超え、年間換算で130万円以上になります。しかし時給が上がっても労働時間は変わらないため、社会保険の加入要件を満たしません。よって、国民健康保険料や国民年金保険料を自分で支払うことになります。
国民健康保険料はいくら?
国民健康保険料は自治体によって計算方法や金額が異なります。また、国民健康保険料は前年の収入によって計算されるため、前年の働き方にも左右されます。
今回のケースでは「昨年まで扶養の範囲内だったが、今秋の時給アップで扶養から外れそう」とのことなので、「前年の年間収入は125万円(1ヶ月当たり約10万4166円)程だった」と想定してみましょう。この収入の場合、東京都新宿区の例をとると、2025年度の国民健康保険料(概算額)は1ヶ月当たり9571円(介護保険料含む)です。
国民年金保険料はいくら?
国民年金保険料(2025年度)は、1ヶ月1万7510円です。この額は全国一律です。
社会保険料の合計はいくら?
国民健康保険料の月約9500円と、国民年金保険料の月1万7510円、さらに雇用保険料(月573円)も合算すると、1ヶ月当たりの社会保険料合計額は2万7000円を超えます。約11万円の月給に対して月2万7000円の社会保険料はウエイトが大きいと思う人も少なくないかもしれません。
労働時間を減らすと?
国民健康保険料と国民年金保険料の負担を避けるため、労働時間を減らして年収を調整することを検討する人もいるでしょう。他の条件は変えずに、労働時間を85時間から75時間に減らした場合を考えてみましょう。
時給:10月から上がり、1300円になる
労働時間:月に75時間程(-10時間)
通勤手当・賞与等:なし
1ヶ月の労働時間を75時間まで減少させると、雇用保険加入要件のひとつである「週20時間以上」の要件から外れるため、雇用保険料がかからなくなります。
時給1300円×75時間で、1ヶ月の給与は9万7500円です。労働時間が減った分、パート収入も減少しますが、年間収入が130万円未満になるため、夫の扶養範囲内にとどまります。その結果、健康保険料はかからず、国民年金は第3号被保険者のままです。
ただし、あまりに労働時間を減らしてしまうと、パート先で担当できる仕事の範囲が狭まったり、周囲とのバランスを欠いたりすることもあるため、事前に会社とよく話し合った方がよいでしょう。
自分で社会保険に加入する場合
扶養を外れてしまうなら、いっそ労働時間を大幅に増やし、自分で会社の社会保険に加入することを選択するという考えもあります。他の条件は変えずに、労働時間を85時間から125時間に増やした場合を考えてみましょう。
時給:10月から上がり、1300円になる
労働時間:月に125時間程(+40時間)
通勤手当・賞与等:なし
労働時間を月125時間まで増やすと、月の給与は16万円を超えます。健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険に加入し、社会保険料の合計額は月2万4700円程になります(東京都の事業所で、全国健康保険協会加入の場合)。
保険料負担はありますが、メリットもあります。自分で社会保険に加入するため、将来の老齢年金受給額が増加します。さらに、在職中にケガや病気をした際には、健康保険から傷病手当金の支給などの保障があります。ただし労働時間が増えるので、仕事と家庭を両立させるのに、周囲の協力が必要となることなどが考えられます。
まとめ
年収換算額が増えて夫の扶養を外れると、自分で社会保険料を支払う義務が発生します。これまで扶養内だった場合は、社会保険料を大きな負担と感じるかもしれません。
労働時間を減らして扶養から外れないようにする・労働時間を大幅に増やして自分で社会保険に加入するなど、工夫の方法はありますが、お金だけでなく働きやすさも考慮し、自分に合った働き方を考えてみるのもよいかもしれません。
出典
全国健康保険協会 被扶養者とは?
新宿区 令和7年度 国民健康保険料 概算早見表(給与/年金のみの場合)
執筆者 : 橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士
