定年まであと“5年”なのに、貯金が「300万円」しか貯まっていません。50~60代で「2000万円」以上貯めている人は、実際どのくらいいるのでしょうか?
本記事では、公的データをもとに、同年代の貯蓄額の実態を解説します。自分の貯蓄額が客観的に見てどの位置にあるのかを知り、今後の対策を考えるヒントにしてください。
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「老後2000万円」といわれるようになった背景
金融庁の「市場ワーキング・グループ」報告書によれば、高齢夫婦無職世帯の平均的な暮らしでは毎月の赤字額が約5万円と算出されました。これを老後30年間続くと仮定した場合、約2000万円が不足することから、いわゆる「老後2000万円問題」として注目されるようになったのです。
あくまで目安ではありますが、この金額は多くの人に衝撃を与え、「老後に安心して暮らすための指標」として広く意識されるようになりました。老後の生活設計を考える上で、この2000万円という数字は1つの大きな基準点として役立つでしょう。
この問題をきっかけに、多くの人が自身の家計や資産状況を見直すきっかけとなりました。では、実際に2000万円以上の金融資産を持っている人はどのくらいいるのでしょうか。
50代と60代、貯蓄額のリアルな実態は?
金融経済教育推進機構の「家計の金融行動に関する世論調査2024年」によると、50代と60代で二人以上世帯の金融資産保有額は図表1の通りです。
図表1
| 金融資産保有額 | 50代 | 60代 |
|---|---|---|
| 0万円(金融資産非保有) | 29.2% | 20.5% |
| 100万円未満 | 8.7% | 6.5% |
| 100万円〜200万円未満 | 5.9% | 5.3% |
| 200万円〜300万円未満 | 5.1% | 3.7% |
| 300万円〜400万円未満 | 3.7% | 3.1% |
| 400万円〜500万円未満 | 3.2% | 3.1% |
| 500万円〜700万円未満 | 6.3% | 6.3% |
| 700万円〜1000万円未満 | 5.8% | 5.3% |
| 1000万円〜1500万円未満 | 7.6% | 8.9% |
| 1500万円〜2000万円未満 | 3.8% | 5.8% |
| 2000万円〜3000万円未満 | 6.3% | 8.0% |
| 3000万円以上 | 10.7% | 20.0% |
| 無回答 | 3.8% | 3.6% |
| 平均 | 1168万円 | 2033万円 |
| 中央値 | 250万円 | 650万円 |
金融経済教育推進機構 家計の金融行動に関する世論調査2024年より筆者作成
図表1より、50代の金融資産平均額は1168万円、60代は2033万円であり、60代の平均額は2000万円を超えています。しかし、60代で実際に2000万円以上の金融資産を保有している割合は28%程度にとどまります。
ここで重要なのが「平均値」と「中央値」の違いです。平均値は一部の富裕層によって大きく引き上げられるため、実感とかけ離れることが少なくありません。一方、中央値は世帯を並べたときに真ん中に位置する金額であり、より実感に近い結果を反映しているといえます。
例えば、50代の平均貯蓄額は1168万円ですが、中央値は250万円です。つまり、現在の貯蓄額が300万円であっても、必ずしも少なすぎるわけではありません。自分の貯蓄額が平均値と比べてどうなのかを把握することは重要ですが、中央値と比較することで、より多くの人が置かれている現実的な立ち位置を理解できます。
定年までにやるべきこと【今からでも間に合う対策】
定年までに貯蓄を増やすためには、まず自分が将来受け取れる年金額を正確に把握することが重要です。「ねんきん定期便」で確認すれば、老後の収入を具体的にイメージできます。
次に、家計の支出を徹底的に見直しましょう。通信費や保険料、車の維持費などの固定費を削減することは、貯蓄の大きな助けになります。また、定年後も働くことが可能であれば、年金受給までの収入を確保できるため、貯蓄の取り崩しを防げます。
さらに、NISA(少額投資非課税制度)などの非課税制度を活用して、リスクの低い金融商品で少しずつ資産を増やす方法も併せて検討し、少しでも2000万円に近づけるよう対策を練ってみましょう。
これらの対策は、今すぐ始められるものばかりです。行動に移すことで、漠然とした将来への不安が、具体的な安心へと変わっていくでしょう。
定年までの5年間を「備える期間」にしよう
定年を目前に控え、貯蓄額が300万円であることは、決して悲観することではありません。日本の50代の平均貯蓄額は1168万円ですが、中央値は250万円です。また、実際に60代で2000万円以上の貯蓄がある人は28%となっています。
これまでの貯蓄額を気にするのではなく、定年までの5年間を「老後に備えるための期間」と捉えてみてはいかがでしょうか。家計の見直しや働き方の検討、資産運用の活用など、今からできる対策を1つずつ実行し、安心して老後を迎える準備をしていきましょう。
出典
金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
金融経済教育推進機構 家計の金融行動に関する世論調査2024年
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
