「固定残業代20時間込み」で月収35万円の求人を見つけました。…でも残業しなかった月もこの金額もらえるの?

配信日: 2025.10.11
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「固定残業代20時間込み」で月収35万円の求人を見つけました。…でも残業しなかった月もこの金額もらえるの?
就職・転職活動中に求人を見ていると、「固定残業代」という表記を見かけることがあるでしょう。固定残業代が含まれる給与は、残業の有無で変動するのでしょうか? 本記事で、FPである筆者がその仕組みを解説します。
當舎緑

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

そもそも固定残業代が利用できる条件とは

求人募集を見るときに、だれでも一番に気になるところが給与なのは間違いありません。賃金に関する条件は、必ず書面で詳細に記載しなければなりません。今回は、転職活動中ですから、転職先の就業規則などのような詳細な確認はできませんが、疑問があるのであれば、その疑問点についてしっかりと説明を求めましょう。
 
本来、固定残業代が有効だと判断されるには、以下のような条件が必要です。
 

(1)就業規則や労働契約書において、基本給と固定残業代が明確に区分されていること
 
(2)固定残業代が何時間分の残業を含んでいるか明示されており、その時間未満であったとしても固定残業代が減らされることはなく、その時間を超えるときには、超えた分の残業代が計算されて支給されること
 
(3)時間外・休日・深夜ごとの割増率を考慮して算定していること

 
これらの条件が満たされない給与制度を記載している求人募集は、無効です。
 
固定残業代の賃金制度を導入している会社に転職する場合、「給料の内訳」「労働時間の記録の方法」「もし残業時間が20時間を超えない月があったとしても手当は減額されないのか」「残業代が20時間を超えるときには超えた分の残業代が支払われるのか」などについて確認を取り、この点をうやむやにしか説明できない企業への転職は考え直したほうがいいかもしれません。
 

残業代込みの計算は本当に正確か?

今回の給料は、「残業代込みで35万円」となっています。この内訳について考えてみましょう。
 
例えば、基本給が30万円、この会社の平均所定労働時間は20日160時間とします。これを時給に換算すると、1875円となります。
 
時間外労働もしくは深夜労働の割増率を25%にすると、2344円が割増分の単価です。休日手当の割増率が35%とすると、2531円が単価となります。この場合の固定残業代に含まれる時間外労働20時間分は、4万6875円が正確な残業代です。
 
次に、休日労働も含まれるケースも考えてみましょう。
 
15時間分を時間外労働の25%、5時間分が休日労働35%の残業代が含まれるとすると、2344円×15時間+2531円×5時間=4万7815円となります。
 
今回は残業代込みで35万円ということで、この内訳が分からないことからあくまでも試算ですが、時間外や深夜、休日の割増率を組み合わせると、25%、35%、50%、60%など複数の割増率が存在するため、残業代の計算は非常に複雑な計算となります。
 
ちなみに、先ほどの例による給与明細は図表1のようになります。
 
図表1

図表1

 

転職中だからこそ見極めたい!

固定残業代を導入している会社は、残業代を支払いたくない会社だと勘違いされることがあります。ただし、タイムカードなどで労働時間を記録し、複数の割増率から1分単位の残業代を含めた給与計算は面倒でミスも多くなりがちになるため、固定残業代の導入により事務処理の効率化がはかられることもあるでしょう。
 
固定残業代を導入する目的はさまざまあり、転職中の方にとって、いちいち質問をするのは難しいかもしれません。入社してから「こんなことなら、もっと詳細に確認するべきだった」と後悔をしないように、しっかりと確認しましょう。
 
執筆者 : 當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

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