よく「106万の壁」「130万の壁」「160万円の壁」って聞きますが、結局どの金額を超えると損するのでしょうか?
本記事では、2025年時点での制度をもとに、3つの壁の正しい理解と働き方の考え方を解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
目次
「106万円の壁」:社会保険の加入ライン
最初に意識したいのが、「106万円の壁」です。これは、パートなど短時間勤務者が厚生年金と健康保険に加入する義務が発生する基準を指します。
週20時間以上働き、月収8万8000円(年収換算で約106万円)以上、雇用期間2ヶ月超で学生でないことなどの条件を満たし、勤務先の従業員数が50人以上であれば社会保険加入の対象となります。なお、2027年10月以降は企業規模の要件が段階的に撤廃され、小規模企業でも多くのパートタイム労働者が加入対象となる見込みです。
社会保険に加入すると、毎月の給与から保険料が天引きされるため、手取り額は減少します。例えば、年収106万円を少し超えた場合、月1万円前後の保険料負担が発生する可能性があります。
その一方で負担が増える分、将来の厚生年金受給額が増え、傷病手当金や出産手当金などの健康保険の給付が受けられるなど、長期的な社会保障が充実します。短期的には手取りが減少するものの、長期的には重要なメリットがある点を理解しておきましょう。
「130万円の壁」:配偶者の扶養を外れるライン
「130万円の壁」は、配偶者の健康保険の扶養から外れるかどうかを左右する基準です。原則として年収130万円を超えると配偶者の扶養から外れ、自分で社会保険に加入し、保険料を負担する必要があります。
社会保険に加入すると、保険料の負担が毎月の給与から差し引かれるため毎月の手取りは減りますが、106万円の壁と同様にその分将来の年金受給額が増え、万が一のときの保障が厚くなります。
このため、「130万円を超えると損」とは一概に言い切れません。長期間働く予定がある場合は、扶養の枠にとらわれず、自身で保険に加入することで長期的な安定を図る選択も十分に考えられます。
「160万円の壁」:所得税の課税ライン
従来、「103万円の壁」と呼ばれていた所得税の非課税ラインは、2025年の税制改正により「160万円の壁」へと引き上げられます。この改正により、基礎控除が最大95万円、給与所得控除の最低保障額が65万円に引き上げられ、両者の合計で年収160万円以下であれば所得税がかからない仕組みになります。
したがって、これまで「年収103万円までに抑えないと税金がかかる」と思っていた方も、今後はより柔軟に働けるようになります。
ただし、住民税の非課税ラインは所得税ほど高くはなく(おおむね100万円前後)、所得税非課税でも住民税が課される場合があります。また、配偶者控除や配偶者特別控除の制度も所得に応じて変わるため、世帯全体での所得状況を確認することが重要です。
結局、どの壁を超えると“損”なのか?
「損か得か」は、単純に年収だけで判断できません。例えば前述のとおり、106万円を超えて社会保険に加入すると手取りは減りますが、その分将来の年金や健康保険の保障が増えます。130万円を超えて扶養から外れても自分で社会保険に加入して、加入期間が長くなれば老後の年金受給額は大きくなります。
その一方で、扶養内で働くメリットは税金や保険料の負担が軽く、短期的な手取りを維持できることです。
そのため、単に目先の損得にとらわれるのではなく、「どのくらい働きたいのか」「どのくらいの年収を目指すのか」「老後の保障をどのように考えるのか」という長期的な視点で判断することが大切です。
今後は制度改正が進み、年収の壁はさらに緩やかになる見込みです。働き方を固定的に考えるよりも、自分のライフステージに合わせて柔軟に働き方や収入計画を見直す姿勢が求められるでしょう。
将来を見据えて働き方を考えよう
「106万の壁」「130万の壁」「160万円の壁」は、損を避けるための制限ではなく、自分の働き方や家計を見直す目安として捉えるべきものです。短期的には手取りが減ることもありますが、将来的な年金や社会保障の増加を含めたトータルバランスで判断することが、より賢明な選択です。
また、制度改正は今後も続く見込みのため、最新のルールを常に確認しながら、家計全体での最適な働き方を設計していきましょう。
出典
首相官邸 いわゆる「年収の壁」対策
厚生労働省 「年収の壁」への対応
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
