今までうまく調整していたのに、最低賃金引き上げで「130万円」の壁を超えそう…勤務時間を減らす・増やす、どちらが得?
本記事では、そもそも「130万円の壁」とは何か、壁を超えた場合にどのような影響が出るのかを整理した上で、「勤務時間を減らすかどうか」を判断するための考え方を、具体例を交えて解説します。
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目次
「130万円の壁」とは? 何が起こるか制度面から整理
「130万円の壁」とは、年収が130万円を超えると社会保険の扶養から外れる年収のボーダーラインを指します。扶養のままであれば、基本的に健康保険や年金保険の保険料を自分で支払う必要はありませんが、壁を超えると自ら加入し、保険料を負担する必要が出てきます。
これによって手取りが減少するため、この基準を意識して働く人が多くみられます。
さらに、勤務先の規模が大きい場合は「106万円の壁」が先に影響することもあります。従業員51人以上の企業では、年収106万円を超えるなど一定の条件を満たすと、社会保険の加入義務が発生するため、130万円未満でも保険料負担が始まるケースもあります。つまり、自身の雇用条件に応じてどの「壁」が当てはまるのかを正しく理解することが重要です。
なお、厚生労働省によると、「106万円の壁」の賃金要件については、最低賃金の引き上げ状況を踏まえて、令和7年6月から3年以内に撤廃される見通しということです。
最低賃金アップで「130万円超え」が現実味を帯びる理由
最低賃金が上がると、同じ勤務時間でも年収が増えるため、知らないうちに壁を超えてしまうことがあります。例えば、時給が1320円に引き上げられた場合、週に19時間働くだけで年収130万円を超える試算があります。これまでと同じ働き方を続けても、賃金上昇によって自動的に収入が増えてしまう可能性があるわけです。
こうした状況では、「今まで通りの勤務時間だから大丈夫」という感覚では調整が難しくなるかもしれません。シフトを決める際には、月ごとの勤務時間と年収の見込みをあらかじめ確認し、どのくらい働くとどの程度の収入になるのかを具体的に把握しておく必要があります。
勤務時間を減らす・超える、どちらが得かを試算する視点
「勤務時間を減らして扶養内にとどまるか」「壁を超えて働くか」は、それぞれメリットとデメリットがあります。130万円を超えると、自分で健康保険料や年金保険料を支払う必要が出てくるほか、所得税や住民税も発生するため、手取りは減少します。
また、130万円を超えて働き、配偶者(特別)控除が縮小されると、世帯全体の負担も増える可能性があります。そのため、単純に「たくさん働けば得」というわけではありません。
一方で、社会保険に加入すると、将来の年金受給額が増えるという長期的なメリットがあります。さらに、傷病手当金や出産手当金などの給付を受けられる仕組みも整うため、安心感は大きくなります。年収が増えることで家計に余裕ができるほか、職場でのキャリアアップの機会が広がる可能性もあります。
また、政府は「年収の壁・支援強化パッケージ」を導入しており、一時的に収入が増えて130万円の壁を超えた場合でも、事業主が「一時的な超過」であると証明すれば、扶養から外れない扱いにできる特例もあります。
つまり、勤務時間を減らすか、あえて壁を超えて働くかは、短期的な手取り額だけでなく、将来の保障や制度上の支援も含めて総合的に判断する必要があります。
まとめ:判断する上で押さえるべきポイントと今後の対応
最低賃金の引き上げによって「130万円の壁」がこれまで以上に意識されるようになると考えられますが、勤務時間を減らすかどうかは単純な二択ではありません。超えたときに発生する保険料や税負担を把握した上で、将来的なメリットや制度上の支援も考慮して判断することが大切です。
また、自分の勤務先の社会保険制度や自治体の保険料率、扶養認定の基準などを確認し、年収の見込みをもとに早めにシミュレーションしておくと安心です。
「130万円の壁」は避けるべき障害というより、制度を理解して上手に付き合うべきラインです。焦って勤務時間を減らす前に、自分にとってどちらの働き方が将来の安心につながるかを見極めることが、これからの時代にはより重要になっていくでしょう。
出典
厚生労働省 「年収の壁」への対応
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
