「103万円の壁」から「160万円の壁」に変わると聞きましたが、12月までに“57万円分”を追加で働いても大丈夫でしょうか? 改正内容を確認
そのため、「年収の壁がすべて変わった」と誤解しないように注意が必要です。本記事では、年収103万円の人が目標の160万円まで追加で働いた場合にどうなるのかを、2025年度の法改正内容を踏まえて解説し、手取りに影響を与える「壁」の正しい理解とポイントを紹介します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
目次
2025年度改正で変わる税制上の「壁」
これまでパートで働く人が意識してきた「103万円の壁」とは、所得税が発生せず、かつ配偶者が配偶者控除(最大38万円)を満額受けられるラインのことを指していました。
2025年分の所得からは、この税制上の「壁」の考え方が変わります。これは、基礎控除や給与所得控除などの見直しによって、所得税が課税され始める収入ラインが引き上げられるためです。
2025年度税制改正では、給与収入に対する所得税の非課税ラインが、従来の「103万円」から「最大160万円」に引き上げられることになりました。この引き上げは、低所得者層の税負担軽減と人手不足の緩和を目的としています。
配偶者控除と配偶者特別控除の改正
2025年度の改正では、配偶者控除の適用要件が「年収103万円以下」から「123万円以下」へ引き上げられました。さらに、配偶者特別控除による満額(38万円)の控除が受けられる上限も、これまでの「年収150万円」から「160万円」へと引き上げられました。
年収が160万円を超えると控除額は段階的に減少しますが、160万円までは配偶者特別控除を満額で受けられます。つまり、年収160万円まで働いた場合は、自身に対して所得税が課されず、かつ配偶者が配偶者特別控除の満額(38万円)を受けられるのです。
税制上のメリットが維持されるため、新たな「壁」として注目されています。
追加で57万円働いた場合の「社会保険の壁」と負担額
年収103万円の人が160万円まで、つまり追加で「57万円分」働いた場合、税制上の問題はありません。しかし、社会保険の扶養に関する「壁」は今回の税制改正では変更されていないため、手取り額には注意が必要です。
社会保険の106万円の壁とは
従業員数が51人以上など、一定の条件を満たす企業で働く場合、年収が約106万円(月額8万8000円)を超えると、国民健康保険・国民年金に加入するか、勤務先の社会保険に加入する義務が発生します。
社会保険の130万円の壁とは
勤務先の規模や労働時間にかかわらず、年収が130万円を超えると配偶者の社会保険の扶養から外れます。年収160万円はこの壁を超えるため、どの企業で働いていても社会保険に加入しなくてはなりません。
年収160万円になった場合の負担
年収が160万円になると社会保険の扶養から外れ、健康保険料と厚生年金保険料を合わせて年間20~25万円程度の自己負担が発生します。つまり、追加で得た57万円のうち、約3分の1~半分が社会保険料として差し引かれることになります。
そのため、年末にかけて追加で働いて年収160万円になっても、手取りが57万円丸ごと増えるわけではない点を理解しておいてください。
160万円を目指す場合、社会保険の壁に注意しよう
2025年度の税制改正により、年収160万円まで働いても税制上の優遇は維持されるようになります。しかし、税制の改正と社会保険の仕組みは別の制度であるため、160万円を超えると社会保険の「130万円の壁」により、扶養から外れて保険料負担が発生します。
この負担額は年間で20~30万円に達する場合もあり、追加収入がそのまま手取りに反映されるわけではありません。働く時間や勤務先の条件を踏まえて、どの「壁」を超えるのが得になるかを事前にシミュレーションしておきましょう。
出典
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
国税庁 令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
