仕事を減らして“母の介護”をしたいのですが、会社に時短勤務制度がありません……。“収入減”を補う「公的制度」はありますか?
本記事では、育児・介護休業法の内容と介護によって収入が減った場合に、収入減を補うための給付金について解説します。
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
育児・介護休業法について
育児・介護休業法に基づく制度は法律で保障されているため、たとえ会社の就業規則に規定がなくても、要件を満たしていれば取得を申し出ることができます。以下、主な内容について解説します。
1.介護のための時短勤務制度
介護休業法は、事業主は要介護状態にある対象家族を介護する労働者に対して、所定労働時間短縮等の措置を講じなければならないと定めています。
具体的には、
(1)短時間勤務
(2)フレックスタイム制度
(3)始業・就業時間の繰上げ、繰下げ
(4)介護サービスの費用の助成
なお、ここでの要介護状態とは、「負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」と定義されています。
したがって、お母さまがこの要介護状態に該当するかが制度活用の分かれ目となります。以下、2~4も同様、要介護状態である家族を対象とした場合に活用できる制度となっています。
2.介護休業制度
要介護状態にある家族を介護するために、休暇を取得することができる制度です。介護休暇を取得できる期間は、 対象家族1人につき、通算93日まで、3回に分けて取得できます。
3.介護休暇制度
要介護状態にある家族の介護や通院の付き添いなどの世話をするための休暇制度です。1日単位または時間単位で取得でき、対象家族1人につき、1年度に5日まで。対象家族が2人以上の場合は10日まで取得できます。
4.所定外時間および時間外労働の制限
要介護状態にある対象家族を介護する労働者から請求があった場合には、所定外労働時間を超えて労働してはならないこと、制限時間(1ヶ月24時間、1年150時間)を超えて時間外労働をさせてはならないと定められています。介護終了までは、何度でも請求することができます。
“収入減”を補う「公的制度」
介護休業を取得して仕事を休むことで収入が減る場合、雇用保険の制度として「介護休業給付金」を受給できます。以下、詳しく確認していきます。
1.支給要件
雇用保険の被保険者であること。
ただし、被保険者である期間が、介護休業開始日以前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12ヶ月以上あることが必要です。
休業期間中に支給された賃金が、休業前の賃金の80%未満であることも要件です。80%以上の場合、給付金は支給されません。以上は無期雇用労働者のケースであり、有期雇用労働者の場合は要件が異なります。
2.支給額
おおむね賃金の67%が支給されます。具体的には以下の計算式で算出されます。
支給額=休業開始時賃金日額×支給日数×67%
なお、介護休業給付金は、対象家族一人につき最大93日まで、最大3回までの分割で支給されます。
3.申請手続き
介護休業給付の申請手続は、被保険者本人が希望する場合は、本人が申請手続きを行うことも可能ですが、原則として、事業主を経由して行う必要があります。詳細は、勤務先の担当部署に相談してください。
まとめ
介護のための時短勤務制度が会社になくても、法律で定められた義務が事業者にはあります。ただし、制度を活用するための要件がありますので、まずは人事担当者や上司に、介護を理由とした短時間勤務や介護休業・介護休暇の取得について相談してみると良いでしょう。
また、収入減を補う「介護休業給付金」制度もありますので、これらの制度をうまく活用することで、仕事と介護の両立を支援する道が開ける可能性があります。ぜひ検討してみてください。
出典
1.厚生労働省 パンフ:介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等
厚生労働省 Q&A~介護休業給付
執筆者 : 堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー
