正社員で事務職をしていて、手取り月19万円ほどです。パートは時給1500円と高く、ストレスも少ない気がします。パートで働くデメリットはありますか?
近年は高時給のパート求人も増えており、働き方の自由度やストレスの少なさから、正社員からパートへの転換を考える人も増えています。本記事では、収入面・保障面・将来設計の観点から、実態を整理してみます。
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目次
パートの時給1500円は正社員の手取り19万円とあまり変わらない
時給1500円で1日7時間・週5日・月20日勤務の場合、月の総支給額(額面)は21万円になります。この勤務時間であれば社会保険への加入が必要となり、保険料や年金が給与から天引きされるため、実際の手取りは18~19万円程度に減少します。
一方、今回の正社員の手取り19万円は、社会保険料や税金などを差し引いた後の「実際に受け取る金額」です。時給・額面だけを比較するとパートのほうが得に見えますが、社会保険料や税負担を考慮した実質所得では両者の差が縮まる、または逆にパートのほうが少なくなるケースもあるのです。
また、パートではボーナスや退職金が支給されないケースが多く、年単位・生涯単位で見れば総収入は正社員を下回る可能性もあります。収入面だけでなく、働き方を比較するうえでは社会保険や雇用の安定性といった制度面の違いも重要です。
以下で金額面以外の違いとして、社会保険・年金の保障や雇用の安定性などの面を見ていきましょう。
社会保険・年金の保障が不十分になる場合がある
パート勤務の最大の注意点は、社会保険や厚生年金に加入できないケースがあることです。
勤務時間や日数が一定基準に満たない場合は、健康保険や厚生年金の対象外となり、自分で国民健康保険や国民年金に加入しなければなりません。この場合、保険料は全額自己負担となるため、実質的な手取りは想定より少なくなる可能性があります。
さらに、国民年金のみの加入の場合は、将来受け取れる年金額も少なくなります。したがって、短期的には時給が高く見えても、長期的には収入総額が下がる可能性もあるため注意が必要です。
雇用の安定性が低く、昇給・昇進の機会が限られる
パート勤務は、契約期間が定められた有期雇用である場合が多く、契約更新の有無や勤務時間の調整が会社の都合で決まることもあります。
また、正社員のような昇給・賞与・昇進制度が十分に整備されていないことが多く、長期的なキャリア形成という面では伸びしろが限られる点もデメリットです。
こちらの面でも短期間で収入が高く見えるかもしれませんが、ボーナスや退職金、昇給を含めた年収で比較すると、正社員との格差は広がります。
福利厚生や手当が受けられないケースが多い
交通費や手当の支給条件は企業によって異なりますが、正社員に支給される交通費や住宅手当、家族手当、慶弔休暇などの福利厚生について、パート勤務では勤務時間や雇用区分に応じて支給額が限定されるか、対象外となる場合があります。
特に退職金制度や賞与がない職場では、総支給額が少なくなるだけでなく、長期的な貯蓄ペースにも影響が及ぶ可能性があります。また、企業によってはパートに対する研修や教育制度への参加機会も限られ、スキルアップの機会が少なくなる場合もあります。
このように、表面上の時給が高く見えても、福利厚生や将来的な保障など見えにくい価値が減少している可能性があります。
職場での立場や裁量が小さくなる
パートは基本的に補助的な業務を担うポジションとされ、組織内での発言力や裁量は正社員よりも制限されることが多いです。
ただし、同一の職務内容や責任を負う場合は、待遇差が不合理とされることもあります。「同じ仕事をしているのに待遇が違う」と感じる場面や、契約更新時に希望の勤務条件を通しにくい場面も少なくありません。
また、担当業務が限定的であるため、仕事の幅が広がりにくく、キャリアアップに結び付きにくいという側面もあります。
パート勤務は、ストレスが比較的少ないという点は魅力ですが、その分やりがいや責任のある仕事に関わる機会が限られる可能性があります。
デメリットを減らすための働き方の工夫
もしパート勤務を検討する場合は、次のような工夫でデメリットを減らすことができます。
まず、社会保険に加入できる条件(週の勤務時間や日数など)を満たすように働き方を調整することが効果的です。また、複数の仕事の掛け持ちや副業で収入を補うことで、収入の安定性を高めることも可能です。
さらに、職場での勤務実績や信頼を積み上げることで、昇給交渉や契約改善につながる可能性もあります。
「いずれは独立したい」「家庭と両立したい」といった、将来の目標を踏まえて柔軟に働き方を設計することが重要です。
パートの働きやすさとリスクを見比べて選ぼう
パート勤務は柔軟な働き方ができるため、ストレスが少ないなどの魅力がありますが、社会保険や年金、雇用の安定性といった面では正社員に比べて不利になることがあります。したがって、表面上の時給だけで判断せず、手取り額や将来的な保障、キャリア形成のバランスを考慮して比較することが大切です。
正社員からパートに切り替える際には、「今の生活に合うか」という短期的な視点に加え、「将来どのような働き方をしたいか」という長期的視点を持って判断しましょう。
出典
厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト パート・アルバイトのみなさま
厚生労働省 パートタイム労働者とは
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
