76歳の父の“窓口の負担額”が「8000円→1万円」に増えていました。前月と同じ治療ですが、物価が上がったせいで“医療費も値上がり”したのでしょうか? 窓口負担が増えた理由とは
この数年は、さまざまなモノやサービスが値上がりしていますが、医療費の窓口負担が増えることと物価高騰は関係ありません。75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の自己負担割合の変更が理由です。
本記事では、後期高齢者医療制度の自己負担割合変更のポイントと、窓口負担が増えることによる家計への影響について解説します。
FP2級、日商簿記3級、管理栄養士
後期高齢者医療制度はどう変わった?
後期高齢者医療制度とは、75歳以上の人、または65歳から74歳までの人で一定の障害の状態にあると認定を受けた人が加入する公的医療保険制度の1つです。後期高齢者医療制度の窓口負担は、原則として1割ですが、所得が次の条件を満たす人は、2022年10月から窓口負担が2割へ引き上げられました。
(1)同じ世帯の被保険者の中に、課税所得が28万円以上の人がいる
(2)同じ世帯の被保険者の年金収入とその他の所得の合計が次の金額に該当する
・単身世帯の場合:200万円以上
・2人以上の場合:合計320万円以上
負担割合が1割から2割になると、受けた治療にかかる医療費が同じでも、支払う金額が倍になり負担が大きいため、増加額の上限を月3000円までとする配慮措置が外来に限り導入されました。外来医療費が月5万円の場合で具体的に計算すると次のようになります。
・1割の場合の窓口負担:5000円
・2割の場合の窓口負担:1万円
・1割から2割への変更による増加額:1万円-5000円=5000円
本来であれば窓口負担は1万円となるはずですが、増加額は3000円が上限となるため、配慮措置を含めた実際の窓口負担額は、8000円(5000円+3000円)に抑えられます。
この配慮措置が、2025年9月30日までで終了し、2025年10月からは本来の2割負担である1万円を支払うことになりました。これが同じ治療でも窓口負担が増えた理由です。
家計への影響はどれくらい?
厚生労働省の推計によると、本来の2割負担が適用されることによる窓口支払額の増加は、年平均で約3万4000円増えるとされています。あくまで平均値であり、普段の医療費が高額な人にとっては、自己負担が大きくなるのではと心配になるかもしれません。医療費の自己負担に関係する別の制度として、「高額療養費制度」があります。
この制度があることにより、現役並みの所得がある場合を除き、外来のみの自己負担は月1万8000円、外来と入院を合わせた場合は月5万7600円が上限となります。医療費が大きくかかった場合でも、窓口負担は一定額で頭打ちになるため、家計の負担増を抑える効果があります。
医療費に関する制度を正しく理解して家計管理に生かそう
今回の窓口負担の増加は、物価高によるものではなく、2022年から段階的に進められていた後期高齢者医療制度の、自己負担割合変更に伴う配慮措置の終了が原因です。一定の所得がある場合、自己負担割合が1割から2割に引き上げられ、年平均で約3万4000円窓口負担が増えるとの推計があります。
一方で、高額療養費制度によって、自己負担額は外来で月1万8000円、入院を含む場合で月5万7600円が上限となり、多くの医療費がかかる場合でも、窓口負担は一定額で頭打ちになります。家族に75歳以上の人がいる場合、これらの制度を正しく理解し、医療費がどの程度増えるのかを確認しておきましょう。
出典
政府広報オンライン 後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?
厚生労働省 後期高齢者の窓口負担割合の在り方について
執筆者 : 東雲悠太
FP2級、日商簿記3級、管理栄養士
