妻が扶養を外れて働くことを検討しています。もし外れたら自分の手取りも減りますか? 世帯全体で手取りが減ることってあるのでしょうか?
本記事では、扶養を外れることで起きる主な変化や、手取りが減るケースの仕組みを解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
なぜ扶養を外れると影響が出るのか
扶養を外れるとは、主に税制上または社会保険上の扶養から外れることを指します。
税制上は、2025年の改正により配偶者控除の対象年収は、これまでの103万円から123万円に引き上げられました。この上限を超えると、夫の所得税や住民税が増える可能性が出てきます。また、配偶者特別控除の適用対象年収は給与のみの場合、123 万円超201万6000円未満ですが、それを超えると控除が受けられなくなります。
一方、社会保険上の扶養から外れると、妻自身が勤務先を通じて健康保険や厚生年金に加入することになり、保険料を自己負担するようになります。その結果、妻本人の手取り額は減少します。
つまり、妻が働いて収入が増えても、税金や保険料の負担増が収入増を上回ることがあり、世帯全体の手取りが減ることが起こり得るのです。
世帯手取りが減る年収の壁
扶養を外れたことで世帯全体の手取りが減る典型的な原因が、「年収の壁」と呼ばれる収入ラインです。主な壁は次のとおりです。
・123万円の壁
2025年の税制改正により、配偶者控除の対象となる年収は、従来の103万円から2025年の税制改正により123万円に引き上げられました。妻の年収がこの金額を超える場合は、夫の所得税における配偶者控除が使えなくなります。
・106万円の壁
勤務先の従業員数などの条件を満たす場合、妻の年収が106万円を超えると妻自身が社会保険に加入し、保険料の自己負担が発生します。
・130万円の壁
一般的に、妻の年収が130万円を超えると夫の社会保険扶養から外れ、妻が自分で保険料を支払う必要が生じます。
・160万円の壁
2025年の税制改正により、配偶者特別控除の満額適用上限が150万円から160万円に引き上げられました。これを超えると控除額が段階的に減額し、夫の税負担が増えます。
例えば、妻の年収が130万円を少し超えた場合、収入は増えても社会保険料の自己負担増や夫の控除減少により、世帯全体の手取りが一時的に減ることがあります。これは「働き損」と呼ばれる現象で、特に130万円前後で生じやすいといわれています。
夫の手取りにも影響がある?
妻が扶養を外れても、夫の給料そのものが減るわけではありません。しかし、夫の税金計算における配偶者控除や配偶者特別控除の適用範囲が変わることで、結果的に夫の手取りが減ることがあります。
また、妻が社会保険の扶養から外れることで夫の保険料が変わるわけではありませんが、世帯単位で見た可処分所得は減少することが一般的です。したがって、夫婦それぞれの手取りの増減にかかわらず、合計額で判断することが重要です。
扶養を外れて働くときのチェックポイント
妻が扶養を外れて働くことを検討する際には、以下のステップを踏んで確認することが重要です。
1. 妻の年収見込みを把握する
勤務時間や時給、ボーナスなどを含めた年間収入を予測します。
2. 税制・社会保険の影響を確認する
2025年の税制改正による配偶者控除や配偶者特別控除の適用基準を確認し、年収の壁に該当するかどうかを検討します。
3. 世帯全体の手取りをシミュレーションする
妻の収入増による社会保険料の自己負担や、夫の配偶者控除の減少による税負担増加を含め、世帯全体の手取り収入がどう変わるかをシミュレーションしましょう。
4. 将来のメリットも考慮する
妻が社会保険に加入すると将来の年金額が増え、傷病手当金などの保障も受けられるようになります。短期的に手取りが減っても、長期的には家計の安定につながるメリットも考慮に入れることが大切です。
受給と負担の仕組みを理解して、損を防ごう
扶養を外れて働くことは、収入の増加やキャリア形成につながる前向きな選択です。しかし、制度を理解せずに判断すると、「頑張って働いたのに世帯の手取りが減った」といった事態が起こる可能性があります。
だからこそ、税金や社会保険の影響を正しく把握し、自分たちの家計にどのような影響があるかを具体的に計算することが大切です。短期的な損得にとどまらず、将来受けられる年金額や傷病手当金といった保障も含めて総合的に考えることで、世帯として最も合理的な働き方を判断できるでしょう。
出典
首相官邸 いわゆる「年収の壁」対策
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
