電気代に「1万円以上」上乗せされている“再エネ賦課金”…実際どこへ流れてる? 国民負担のしくみを解説

配信日: 2025.10.24
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電気代に「1万円以上」上乗せされている“再エネ賦課金”…実際どこへ流れてる? 国民負担のしくみを解説
電気代の明細を見ると必ず記載されている「再エネ賦課金」。これは、再生可能エネルギーの普及のため、再生可能エネルギーにより発電した電気を電力会社が買い取った費用を、電気を使うすべての人で分担する仕組みです。
 
標準的な電気使用をしている家庭であれば月1000円前後、年間にすると1万円以上の負担になります。このお金はいったいどこへ流れているのでしょうか?
 
本記事では、制度の背景と仕組み、そして国民負担がどう使われているのかをわかりやすく解説します。
諸岡拓也

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

再エネ賦課金とは

再エネ賦課金は、正式名称で「再生可能エネルギー発電促進賦課金」と呼ばれるもので、電気代の明細を見ると必ず含まれています。背景には、2012年に始まった「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)」があります。
 
この制度では、個人や企業が太陽光パネルや風力発電を使って作った電気を、電力会社が一定の高い価格で買い取ることが義務づけられています。なぜ買い取るのかというと、再エネ発電は設備費が高く、売電価格が安いと普及が進まないからです。高値で買い取ることで、再エネ設備の導入を促す狙いがあります。
 
その費用は、図表1のとおり、私たち利用者が支払う「再エネ賦課金」として電気代に上乗せされます。
 
図表1

図表1

関西電力 再生可能エネルギー発電促進賦課金
 
つまり、私たちが払う賦課金は、太陽光や風力などの再エネ普及を支えるための財源になっています。
 

ここ10年で「賦課金」はどれだけ増えた? 一般家庭の負担を試算

2012年度に制度が始まった当初、一般家庭の負担は、多くても「年間で」数千円程度でした。しかし再エネ導入が進むにつれて買い取り費用が膨らみ、賦課金単価は年々上昇しています。
 
2012年度時点で0.22円だった賦課金単価は、2025年度時点では3.98円です。
 
一方で、図表2のとおり、年間の電気消費量の全国平均は、一世帯あたり3950キロワットアワーです。
 
図表2

図表2

環境省 家庭部門のCO2排出実態統計調査
 
年間の平均使用量3950キロワットアワーを12ヶ月で割ると、1ヶ月あたりでは約330キロワットアワーです。計算すると、月の賦課金負担は約1314円です。年間では約1万5760円に達します。2012年の年間約871円と比較すると、実に「18倍以上」になっています。
 

今後の見通しと家計への影響

問題は、この負担が今後も続く見通しにあることです。制度開始から10年以上が経ち、再エネ設備の増加によって支払総額は依然として増加傾向にあります。
 
2022年からは、市場の価格に合わせて売電できる「FIP制度」が導入されました。これにより、発電事業者は電気が高く売れる時間帯に多く発電し、効率よく収益を得られるようになります。
 
結果として、無駄な発電を減らし、再エネの普及と国民の負担軽減の両立が期待されています。
 
しかし、制度移行期にある現在は、FITによる買い取り費用が依然として大きく、賦課金の総額は上昇を続けています。標準的な電気使用をしている家庭では、年間1万円を超える負担となっています。
 
電気使用量が多い世帯や、全国平均を上回る北陸地域では、2万円近くに達するケースもあります。こうした固定費の増加は、家計にとって無視できない影響を及ぼしており、光熱費全体の圧迫要因となっています。
 

制度を理解し、できる備えを

再エネ賦課金は、消費者にとって「避けられない負担」ですが、再生可能エネルギーの普及を支える重要な仕組みでもあります。国や自治体も、導入コストの低減や制度の見直しを進めており、将来的には負担の平準化が期待されます。私たちも節電意識を高めたり、太陽光発電・蓄電池を活用したりと、生活の中でできる備えを検討することが大切です。
 

出典

関西電力 再生可能エネルギー発電促進賦課金
経済産業省 再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2025年度以降の買取価格等と2025年度の賦課金単価を設定します
環境省 家庭部門のCO2排出実態統計調査
 
執筆者 : 諸岡拓也
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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