補助金で今から「太陽光発電」を始めても“元が取れない”って本当ですか? わが家は「築20年の一軒家」ですが、設置はできるでしょうか?
本記事では、太陽光発電は本当に「元が取れない」のかどうかを、現在の費用相場や売電価格をもとに検証します。築20年の一軒家でも設置できるのか、そして後悔しないために知っておきたいメリットとデメリットについて解説します。
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目次
太陽光発電は「元が取れない」は本当か? 費用相場と売電価格の現状
太陽光発電システムが普及し始めた頃は初期費用が非常に高額でしたが、近年は下がってきました。それでも「元が取れない」といわれる背景には、売電価格(FIT制度)の下落があります。
資源エネルギー庁の資料によれば、2024年設置の住宅用太陽光発電のシステム平均価格は1キロワットあたり28万6000円です。一般家庭では4~5キロワットの設置が多く、総額は114~143万円程度となります。
また、調達価格等算定委員会による「令和7年度以降の調達価格等に関する意見」では、2025年度(4~9月)の10キロワット未満の売電単価(FIT制度)は1キロワットアワーあたり15円とされています。
一方、全国家庭電気製品公正取引協議会が定める電気料金の目安は1キロワットアワーあたり31円です。かつては売電単価が高く、余剰電力を売ることで収益を得られましたが、現在は売電よりも「自家消費による電気代削減効果」で判断する時代となっています。
売電単価が電気代単価を下回るため、自宅で発電した電気を優先的に使い、割高な電気を買わずに済ませることでメリットが生まれます。投資回収期間は以前より長くなる傾向にありますが、電気代の高騰が続けば十分に「元を取る」ことは可能です。
築20年の一軒家でも設置は可能か?【家の構造とリスク】
築20年だからといって、太陽光発電の設置ができないわけではありません。実際、多くの築20年前後の住宅で設置実績があります。重要なのは家の状態であり、設置可否を判断する際には主に屋根の強度、屋根の形状・面積、防水性といった要素が関わります。
築年数がたつと、屋根材や構造体が劣化している可能性があるため、設置前には専門業者による耐震診断や屋根の劣化診断を受けておくと安心です。また、屋根の形状や向き、勾配によっては十分な発電が得られない場合も想定しながら、発電効率も含めて判断する必要があります。
さらに、設置工事では屋根に穴を開けるため防水性が低下し、雨漏りするリスクが高まります。業者による適切な防水処理や、必要に応じた重ねぶきの検討が欠かせません。
築20年を超えると、屋根の塗り替えやふき替えといったメンテナンス時期に差し掛かります。太陽光パネルの設置と同時に屋根工事を行えば、足場代などを一本化でき、コスト削減につながるケースもあるでしょう。
設置シミュレーション:143万円の初期費用を回収するには?
初期費用143万円(5キロワットで設置)を例に、回収期間をシミュレーションします。太陽光発電の発電量はシステム容量1キロワットあたり年間約1000~1200キロワットアワーが目安とされ、5キロワットで年間5000~6000キロワットアワーの発電が見込めます。
まずは、自家消費による電気代削減効果です。1キロワットあたり年間1000キロワットアワー発電し、そのうち70%を自家消費したと仮定します。電気料金単価を31円/キロワットアワーとすると「5キロワット×1000キロワットアワー×70%×31円」で、年間約10万8500円削減できるでしょう。
残り30%を売電した場合、単価15円/キロワットアワーで「5キロワット×1000キロワットアワー×30%×15円」となり、年間2万2500円の収入です。これらを合計すると、年間13万1000円の経済効果となります。
設置費用143万円をこの効果で割ると「143万円÷13万1000円=約10.9年」となり、回収期間はおよそ11年という試算です。補助金を利用すれば初期費用が抑えられ、回収期間はさらに短縮できます。
電気代が高い家庭や日中の消費電力が多い家庭であれば、10年程度での回収も十分に可能です。
太陽光発電は「元を取れる」が、事前診断が必須
太陽光発電は売電単価が下がった現在でも、電気代削減効果を中心としたメリットで十分に「元を取る」ことが可能です。電気料金が高止まりしている今だからこそ、自家消費による効果は大きくなっています。
また、築20年の住宅でも設置できますが、屋根の劣化や強度を確認するための専門業者による事前診断は不可欠です。補助金の活用や屋根工事との同時施工なども視野に入れて複合的に検討することが、後悔のない選択につながるでしょう。
出典
資源エネルギー庁 太陽光発電について(2024年12月)
資源エネルギー庁 買取価格・期間等(2025年度以降)FIT・FIP制度
公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会 よくある質問 Q&A
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
