手取り30万円なのに生活が苦しい…周囲は旅行に貯金も。これって自分だけ少ないってこと?

配信日: 2025.10.26
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手取り30万円なのに生活が苦しい…周囲は旅行に貯金も。これって自分だけ少ないってこと?
私たちは周りの人と比較して、うらやんだり不安になったりしがちです。
 
ただ家計運営は、もとから保有している資産(不動産や親からの遺産など)、生活スタイル、一人暮らしか、配偶者や子どもがいるか、副収入があるか、住んでいる地域(家賃・物価水準)などによって大きく変わります。「給料が多いから」だけとはかぎらない、ということを認識したうえで考えてみましょう。
柴沼直美

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com

手取り30万円は「多い」ほうか?

国税庁の「令和6年分 民間給与実態統計調査」によれば、1年間を通じて勤務した給与所得者の平均給与は 478万円 です。年収478万円を月割りにすると、額面でおよそ 月約40万円前後(ボーナスを含まない場合) です。
 
ただし、会社の規模・業種・地域・勤続年数などで幅があります。民間調査機関が公表している給与所得者の年収「中央値」は 350万円 程度とされているのを目にしますが、これは高所得者に引っ張られた平均値よりやや控えめな水準です。
 
このことから、「手取り30万円」がすぐに「平均以上」あるいは「裕福」だとは言い切れません。多くの人はこれより少ないか、近い、という水準にあります。
 
一方で、総務省の「家計調査 家計収支編 2024年」によれば、2人以上の勤労者世帯で1ヶ月の消費支出の平均は 32万5137 円 です。
 
これらから、手取り30万円という金額は、一般的な支出水準と比べて、支出をある程度抑えれば生活可能な範囲ではあるということがいえます。ただし、家賃や通信・保険・ローンなど固定費がかさむと、余裕がなくなる可能性も十分にありそうです。
 

家計が「苦しい」となる原因を整理する

「手取り30万円でも生活が苦しい」と感じる背景には、いくつか典型的な原因があります。図表1にまとめてみましたので振り返ってみましょう。
 
図表1

図表1

 
このうち、思い当たる項目を改善できれば、「苦しい」感覚が軽減できるでしょう。
 

周囲の友人が「旅行ができる! 貯金ができる!」と見える理由

それでも周りの友人や同僚が旅行をしたり、貯金をしていたりするように見える背景には、以下のような事情が考えられます。
 
1. 固定費・住居費が安い
実家暮らし、地方在住、賃貸の家賃が低いなどで、生活コストそのものが抑えられている可能性があります。
 
2. 副収入やボーナスなどの一時収入
副業・投資・臨時収入がある、ボーナスが大きい会社である、昇給率が高い可能性があります。
 
3. 見せ方と実際の支出のズレ
旅行は回数が少なく、節約旅行、ポイントやディスカウントキャンペーンを活用するなど、周りから見るほど実際は散財していないケースもあります。
 
4. 貯金方法の工夫
「先取り貯金」「自動振替」を設定して、あらかじめ自由に使える金額を制限して資産形成の工夫をしているかもしれません。
 
人それぞれ、もともとの前提条件や優先順位、価値観が異なります。他人の目に映る姿と本人のお金との付き合い方は違います。
 

「十分にもらっている」かの判断

それでも、自分の給料30万円が「十分か」を判断する材料として客観的な指標を使ってみましょう。
 
1. 手取り収入-必要支出
手取り収入から、最低限の生活コストを差し引いた余裕がどれだけあるか、振り返ってみましょう。これがプラスであれば「余裕あり」、マイナスだと「苦しい」と感じやすくなります。
 
2. 目標・優先順位との比較
旅行・趣味・将来の貯蓄・住宅購入など、「優先してやりたいこと」に対して、今の収入でうまく回せるかを判断基準にしてみましょう。例えば、高額なマンション購入を3年後に検討しているとしたら、「苦しい」と感じる可能性は高くなります。
 
3. 周りでなく「自分自身」の基準と比較する
「手取りの年収だけ同じ」でも、「保有資産や副収入、家族構成など」の差を加味すると周りの友人と比較はできません。
 
自分自身の「安心できる生活」「ゆとりある生活」「理想」の水準を設定して比較してみましょう。「安心できる生活を送ることのできる水準」であれば、いたずらに不安を感じる必要はないケースが多いことに気づくかもしれません。
 

まとめ

結論として、手取り30万円という数字だけで「十分かどうか」を判断することは不可能です。生活の「苦しさ」は、収入だけでなく資産や支出構造・価値観・優先順位によって大きく左右されます。
 
周囲と比べるのではなく、自分が「安心できる生活ライン」を明確にしたうえで、そこに至っていないために不安に感じるのであれば、提案した改善案などをご参考に無理のない範囲で取り組んでいくことが大切です。
 

出典

国税庁 令和6年分 民間給与実態統計調査
総務省統計局 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 2024年 第1表
 
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者

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