今後は“水道代”が「月平均4000円→7200円」に!? 日本の水道管の多くは、すでに“耐用年数”超え…「8割値上げ」の試算を知ってゾッとした“将来の負担”とは
こうした老朽化は下水道だけでなく、水道管でも深刻化しています。財務省の研究機関は、水道管の老朽化対策を水道料金だけでまかなう場合、「全国平均で8割の値上げが必要」と試算しました。
家庭の水道代は現在、月平均4000円ですが、8割の値上げとなると将来的に7200円へと増える計算です。本記事では、水道料金値上げの試算の背景や課題、そして生活への影響について詳しく解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
水道料金が値上げされる背景
日本の水道の多くは、昭和30~40年代の高度経済成長期に全国で整備されました。その時期に整備された水道管はすでに耐用年数を超えており、老朽化による漏水や破裂のリスクが年々高まっています。
国土交通省によると、全国の水道管路の総延長は約74万キロメートルにのぼります。そのうち法定耐用年数を超えた水道管路は、図表1のとおり、2023年時点で約9%、2030年には約2割、2040年には約4割に達する見通しです。
図表1
国土交通省 社会資本の老朽化の現状と将来
つまり、今後15年ほどで老朽化管が倍増する可能性があるということです。更新工事が必要なのは明らかですが、その費用は莫大です。自治体の財政だけでまかなうのは難しく、国は水道料金を引き上げ、利用者に広く負担を求めざるを得ない状況と言えます。
家計に直撃する「8割値上げ」の試算
一般社団法人エネルギー情報センターによれば、水道料金の全国平均は2024年時点で、図表2のとおり4032円です。
図表2
一般社団法人エネルギー情報センター 電気・ガス・他の光熱・水道料金の平均目安
仮にこの水道料金が8割値上げされると、月7258円に跳ね上がります。年間では約3.9万円の追加負担です。なお、この「平均で83%引き上げが必要」とする試算は、財務総合政策研究所の分析によるものです。
9割以上の自治体で「値上げ不可避」
一方で、水の安全保障戦略機構の2024年の調査では、図表3のとおり、人口減少の影響で、2046年度までに全国の約96%の自治体が水道料金の値上げを迫られるとしており、その平均上昇率は48%、中央値は37%と推計されています。
図表3
EY Japan 水の安全保障戦略機構事務局 人口減少時代の水道料金はどうなるのか?(2024年版)
先の財務総研の試算は最悪のシナリオを想定した一方、同機構の分析は全国の水道事業体の平均的な見通しを示すものですが、方向性としてはどちらも「大幅な値上げが避けられない」という点で一致しています。
人口減少による利用者減と設備更新費の増加が同時進行する中、水道料金だけで老朽化対策をまかなうのには限界があります。特に地方では利用者が少なく、1人あたりの負担が重くなりやすい構造です。
将来の水道を守るためにできること
厚生労働省によると、現在の更新ペースでは、全国の水道管をすべて取り替えるのに約140年かかるとされています。それだけ、老朽化の進行に対して更新が追いついていないのが現状です。
こうした状況の中で、水道料金の値上げは避けられない課題となっています。ただし、こうした状況下では、「負担が増える」という見方だけでなく、安全な水を将来にわたって守るための投資と捉えることも大切と言えます。
国や自治体には、ムダを減らし、効率的に資金を使う仕組みづくりが求められます。そして、国民一人ひとりが少しずつ負担を分かち合う意識を持つことが、安定した水道サービスを維持するために欠かせないのかもしれません。
出典
国土交通省 社会資本の老朽化の現状と将来
一般社団法人エネルギー情報センター 電気・ガス・他の光熱・水道料金の平均目安
EY Japan 水の安全保障戦略機構事務局 人口減少時代の水道料金はどうなるのか?(2024年版)
執筆者 : 諸岡拓也
2級ファイナンシャル・プランニング技能士



