世帯年収800万円でも「JALは年1回がやっと」な3人家族…普段は「格安LCC」なら、意外と“生活のゆとり”はない!? 家計の内訳から分析
しかし、子どもがいて住宅ローン返済中となると、現実はどうでしょうか。趣味や旅行にもお金を使いたいものの、家計を考えると「ぜいたくはできない」と感じる家庭は少なくないのではないでしょうか。
本記事では、世帯年収800万円の3人家族をモデルに、JALでの旅行は年1回が限界で、普段はLCCを選ぶ場合の生活余裕度を家計の内訳から分析します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
世帯年収800万円の手取りと家計の現実
世帯年収800万円の手取りは、扶養家族の人数や各種控除により異なりますが、一般的には額面の75%から85%程度、年間約600万円から640万円です。今回は、月額の手取りを52万円と仮定して進めます。
ここから、日々の生活費や固定費を支払います。総務省統計局の「家計調査(2024年)」によれば、3人世帯の消費支出(住居費を除く)は月平均約27万円です。
これに住宅ローンの返済が加わります。住宅金融支援機構の「2024年度 フラット35利用者調査」によると、融資利用者の1ヶ月当り返済額は11万8000円となっています。
子どもの教育費も必要です。文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」では、公立中学校の子どもの学習費は月額4万5000円ほどかかっています。
これらの平均的な支出(27万円+11万8000円+4万5000円)を、月の手取り52万円から差し引くと、残るのはおおよそ8万7000円です。各家庭で状況は異なりますが、この残りから将来のための貯蓄も考えなければなりません。旅行などに回せるお金は、決して多くないと分かります。
国内旅行、JALとLCCの費用差はどれくらい?
家計に余裕がない中で旅行を楽しむには、費用の節約が欠かせません。特に航空券代は、JALのようなフルサービスキャリア(FSC)か、LCC(格安航空会社)かで大きく変わります。
例えば、東京(羽田/成田)から沖縄(那覇)へ、家族3人(大人2名、子ども1名)がオフシーズンに週末を含めて往復する場合を比較します。JAL(日本航空)なら羽田発着で便利ですが、費用は高めです。3人往復で12万円から18万円程度が必要です。
一方、LCC(Peach Aviationなど)は成田発着が多くなります。運賃は3人往復で5万円から9万円程度に抑えられますが、手荷物料が別途必要な場合があります。
この例では、JAL(仮に15万円)とLCC(仮に8万円)の差額は7万円です。繁忙期なら差はさらに開きます。宿泊費や現地費用が別途10万円かかると仮定すると、総額はLCC利用で18万円、JAL利用で25万円かかります。
JALとLCC、バランスをとり家計と両立
年収800万円世帯の家計状況からすると、毎回JALを使用する旅行は厳しく、LCCを活用する計画が現実的といえます。
年間の旅行予算を40万円に設定したとすると、JALを利用した沖縄旅行(総額25万円)を1回、残る予算15万円で、LCCを利用して札幌(総額10万円程度)へもう1回といった配分が可能です。
もし、すべての旅行をLCCで済ませるなら、沖縄旅行(18万円)と札幌旅行(10万円)を足してもまだ12万円余ります。もう1回近場の旅行へいける計算となり、回数を増やせます。ただし、毎回LCCでは、座席の狭さや快適なサービスなどで物足りなさを感じるかもしれません。
コストを抑えて旅行の回数を増やしたいならLCCを利用し、年に1回くらいはJALで快適な旅を楽しむといった使い分けをすれば、限られた予算内で満足度を高められるでしょう。
年収800万円でも「メリハリ消費」。堅実な家計管理が旅行を楽しむカギ
世帯年収800万円といっても、住宅ローンや子どもの教育費を抱える3人家族の家計に、大きな余裕はありません。手取りから固定費や貯蓄を差し引くと、自由に使えるお金は限られます。
限られた予算の中でLCCを利用して旅行費用を抑えつつ、年に1回はJALを利用して快適な旅行を楽しむという「メリハリ」をつけることで、日々の仕事や家計管理のモチベーション維持にもつながります。
大切なのは、額面ではなく、実際の手取り額や将来必要となる費用を具体的に把握することです。家計を理解し、何にお金を使い、どこを節約するのかを考えて優先順位をつける、そうした堅実な家計管理こそ、限られた予算の中でも家族旅行を楽しむコツといえます。
出典
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2024年(令和6年)
住宅金融支援機構 2024年度 フラット35利用者調査
文部科学省 令和5年度子供の学習費調査の結果について
執筆者 : 山口克雄
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
