10月から「時給1040円→1100円」になり“106万円の壁”を超えそうです。少し超えたくらいなら「社会保険」に加入しなくて大丈夫ですか?

配信日: 2025.10.31
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10月から「時給1040円→1100円」になり“106万円の壁”を超えそうです。少し超えたくらいなら「社会保険」に加入しなくて大丈夫ですか?
「このまま働き続けたら、106万円の壁を越えてしまうかも……」そんな不安を感じている人はいませんか?
 
10月の最低賃金引き上げで時給が上がったのはうれしいけれど、扶養内で働く人にとっては悩ましい問題です。
 
ここでは、「少しくらい壁を超えても大丈夫なのか?」を分かりやすく解説。106万円・130万円の壁の仕組みから、収入調整の考え方、今後の働き方の見直しポイントまで紹介します。
よし・こう

1級ファイナンシャル・プランニング技能士・CFP

年収の壁106万円・130万円とは何か

配偶者の扶養に入っていて、パートやアルバイトで働く人がよく耳にするのが「年収の壁」という言葉でしょう。
 
年収の壁にはいくつか種類がありますが、その中でも特に多くの人が気をつける必要があるのが「106万円の壁」と「130万円の壁」です。
 
どちらも「社会保険料を自分で払うかどうか」を分ける目安の金額です。この金額を超えて働くと、健康保険や年金の保険料を自分で負担しなければならなくなります。その結果、手取り額が減ってしまう可能性があるのです。
 

106万円・130万円の壁の条件

106万円と130万円の壁には、それぞれ適用される条件があります。
 

106万円の壁

次の条件をすべて満たすと、社会保険に加入する義務が発生します。
 

・週の勤務時間が20時間以上
・月の給与が8万8000円以上(年収に直すと約105万6000円以上)
・2ヶ月を超えて働く予定がある
・勤務先が従業員50人を超える企業

 
これらの条件を満たすと、健康保険と厚生年金への加入が必要になります。これが一般に「106万円の壁」と呼ばれるものです。
 
ただし、現場では「短期的な超過」や「一時的な昇給」であれば、会社側がすぐに加入手続きを行わないケースもあります。加入の判断は「一時的かどうか」「今後も継続してその金額以上が見込まれるか」で判断されます。
 
加入義務が発生つまり、「毎月の給与が安定して8万8000円以上になる見込み」になった時点で、会社は社会保険加入をすすめることになります。
 

130万円の壁

106万円の壁に当てはまらない人でも、年収が130万円を超えると扶養から外れることになります。この場合、自分で国民健康保険と国民年金に加入しなければなりません。これが「130万円の壁」です。
 

年収の壁に関するモデルケース

具体的にどれくらい働くと106万円を超えるのか、モデルケースで考えてみましょう。
 
例えば、従業員50人を超える会社で、週20時間以上勤務しているパートの人を想定します。
 

1~9月(9ヶ月間)
時給1040円×6時間/日×月14日=8万7360円/月
→ 9ヶ月間で8万7360円×9=78万6240円
 
10~12月(3ヶ月間)
時給1100円×6時間/日×月14日=9万2400円/月
→ 3ヶ月間で9万2400円×3=27万7200円

 
年間合計は78万6240円+27万7200円=106万3440円となります。
 
このケースでは、わずかに106万円を超えてしまうため、社会保険に加入する義務が生じる可能性があります。
 

106万円の壁を越えないためには

「扶養内で働きたい」「106万円を超えたくない」という場合は、働き方を少し調整することで対策ができます。
 
先ほどの例をもとに考えると、10~12月の働き方を次のように変えるとよいでしょう。
 

月14日勤務 → 月13日勤務に変更
1100円×6時間×13日=8万5800円/月
→ 3ヶ月で8万5800円×3=25万7400円
年間合計は78万6240円+25万7400 円=104万3640円

 
または、
 

月14日勤務 → 月12日勤務に変更
1100円×6時間×12日=7万9200円/月
→ 3ヶ月で23万7600円
年間合計は102万3840円

 
ほかにも、勤務時間を6時間から5時間に減らす、勤務先を従業員50人以下の企業に変えるといった方法もあります。
 

今後の働き方を考えておこう

2025年(令和7年)からの年金制度改正により、106万円の壁に関係するルールが段階的に変わっていく予定です。
 
具体的には、現在「月8万8000円以上(年収約106万円)」とされている条件は、最低賃金の上昇などを踏まえて、2028年までに撤廃される方向です。また、「従業員50人超」という企業規模の条件も、今後は縮小・撤廃される見込みです。
 
つまり、これからは社会保険に加入せざるをえないケースが増えていきます。ただし、社会保険に加入することは、悪いことばかりではありません。
 
例えば、健康保険に入ると「傷病手当金」や「出産一時金」を受け取れるようになります。厚生年金に入れば、将来もらえる年金額が増えるという利点もあります。
 
これまで「壁を越えないように働く」ことを重視していた人も、今後は「社会保険に入っても損をしない働き方」を考える時期にきているのかもしれません。
 
執筆者 : よし・こう
1級ファイナンシャル・プランニング技能士・CFP

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