年収130万円を超えると「夫の扶養から外れる」って本当? 社会保険料を自分で払うとどのくらい負担が増える?

配信日: 2025.10.31
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年収130万円を超えると「夫の扶養から外れる」って本当? 社会保険料を自分で払うとどのくらい負担が増える?
令和7年度の税制改正により、所得税の非課税上限が見直され、令和7年12月1日に施行されます。これにより年収160万円未満であれば所得税は課税されなくなりますが、社会保険の扶養要件の変更は見送られています。
 
今回は、年収130万円を超えると「夫の扶養から外れる」といわれる社会保険料の仕組みと、その負担について考えていきます。
吉野裕一

夢実現プランナー

2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
各種セミナーやコラムなど多数の実績があり、定評を受けている

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130万円の壁とは

よく年収の壁といわれますが、この壁はいくつかあります。特に、最初に意識されるのが「103万円の壁」ではないでしょうか。この「103万円の壁」は、扶養要件ではなく、所得税が非課税となる上限になります。
 
一方、社会保険の扶養に関わる年収の壁としては、「106万円の壁」や「130万円の壁」があります。
 
「106万円の壁」は、従業員51人以上の企業などに勤める人が対象です。令和7年度の年金制度の改正により、「106万円の壁」の撤廃が決まり、令和17年までに段階的に従業員数の要件が引き下げられます。
 
「130万円の壁」は、現在の「106万円の壁」の対象外となる、従業員が50人以下の企業に勤めている人が該当します。年収が130万円を超えた場合に、勤務先で社会保険に加入できれば、厚生年金や健康保険に加入することになりますが、企業での加入ができない場合には、自身で国民年金や国民健康保険に加入することになります。
 

130万円を超えたらどうなる?

130万円を超えた場合で、自身で国民年金と国民健康保険を加入すると、社会保険料として支払うのは、国民年金保険料の月額1万7510円(令和7年度)と国民健康保険料になります。
 
国民健康保険料は各自治体によって料率等が違いますが、総所得金額から市民税の基礎控除を引いた所得割算定基礎額で保険料を計算していきます。
 
例えば東京都千代田区在住で40歳以上の場合、年収130万円から給与所得控除の55万円を引いた75万円から市民税の基礎控除43万円を引いた32万円が所得割算定基礎額となります。
 
東京都千代田区のホームページにある計算シートで計算すると、国民健康保険料は年間10万3024円、月額約8586円で、国民年金保険料と合わせると合計2万6096円です。
 
年収130万円の月収は10万8333円となりますので、10万8333円から2万6096円を引いた8万2237円が手取りとなります。
 
市民税の基礎控除や所得割の料率は自治体によって違いますので、自治体のホームページで確認するとよいでしょう。各自治体のなかには、国民健康保険料のシミュレーションができるツールを公開しているところもあります。
 

扶養を外れるとデメリットばかり?

社会保険の扶養内で働いていた場合、社会保険は配偶者が加入している健康保険の被扶養者および国民年金の第3号被保険者となっているため、自分で保険料を負担することなく社会保険に加入しているということになります。
 
しかし、130万円を超えると扶養から外れ、自分で社会保険料を負担する必要が生じるため、手取り額が減り「損をした」と感じる人もいるでしょう。
 
先述の東京都千代田区の場合、年収155万円以上の収入があれば、それまでと変わらない手取りを維持することができます。ただし、収入は増えても社会保険料の負担が生じるため、働く時間を増やしても実際の手取りはほとんど変わらないという状況になります。
 
収入を増やしたい場合は、パートやアルバイトで働くのではなく正社員で働くという選択肢もありますが、パートやアルバイトのままで勤め先の社会保険に加入できないかを確認してみてはいかがでしょうか。
 
自身で会社の社会保険に加入した場合のメリットとして、厚生年金に加入することになり、将来受け取る年金の額が増えることが考えられます。
 
令和7年度の税制改正により、所得税が非課税となる上限が年収160万円未満に引き上げられました。
 
例えば東京都千代田区在住で40歳以上の場合、年収160万円だと健康保険料率は11.50%(労働者負担分は2分の1)で、標準報酬等級10等級に該当し月額の本人負担は7705円となります。
 
厚生年金保険料(18.3%を労使折半)は約1万2261円、雇用保険料(労働者負担0.55%)は約733円で、これらを合わせると社会保険料の合計は約2万699円です。
 
この場合、手取りは11万2600円前後となり、収入を大きく減らすことなく社会保険に加入し、将来の年金額を増やすことができるというメリットがあります。
 
ただし配偶者の勤め先で「家族手当」や「配偶者手当」などが支給されている場合には、所得要件などで外れてしまうこともありますので確認しておきましょう。
 

まとめ

「年収の壁」は複数存在し、それぞれ所得税や社会保険で異なる基準が設けられています。よく耳にする「103万円の壁」は所得税がかかるかどうかの線引きでしたが、令和7年12月1日以降は年収160万円未満であれば所得税が課税されないことになりました。
 
一方で社会保険の扶養要件に関わる「106万円の壁」「130万円の壁」の変更は見送られたため、働き方に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
 
今後は社会保険の年収要件も段階的に見直される見込みのため、年金制度改正の動きなどにも注目しましょう。
 

出典

厚生労働省 年金制度改正が成立しました
東京都千代田区 保険料の計算方法
全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)
厚生労働省 令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内
 
執筆者 : 吉野裕一
夢実現プランナー

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