「都内で家賃4万だから」と“風呂なし物件”に住む息子…近所の銭湯に通っているそうですが、かえって「高くつく」のではないでしょうか? 銭湯代を含めて試算
しかし本当に、銭湯通いで節約になるのでしょうか。今回は、家賃4万円という設定で、江戸川区と中野区をモデルに検証してみます。
AFP
23区で家賃4万円はどれほど安い?
東京都内で「家賃4万円」というと、かなり珍しい部類に入ります。
不動産ポータルサイトSUUMOによると、2025年時点での東京都23区のワンルーム平均賃料は10万円前後です。築年数が古い物件や、駅から離れたアパートでも、5~6万円台が下限の目安といえます。
例えば、江戸川区ではワンルームの相場が約5万6000~6万円台。比較的物価が安い地域といわれますが、それでも4万円台となると、築40年以上・木造・駅から徒歩15分以上・風呂なしといった条件が並ぶのが一般的です。
一方、中野区では6万円台後半から8万円前後が相場。都心へのアクセスがよいため、築古物件でもやや高めに設定されています。4万円で住める物件は、都内でも数えるほどしかありません。
東京都内の銭湯代はいくら?
東京都内の公衆浴場(銭湯)の入浴料金は、東京都の公示によって大人1回550円と定められています(2024年8月改定)。かつてのように「300円で入れる」時代は終わり、光熱費の高騰もあって値上げが続いています。
では、この銭湯代を毎日支払うとどれくらいになるでしょうか。
単純計算で 550円×30日=1万6500円。
さらに、タオルやシャンプーなどの備品代を月1000~2000円見込むと、合計約1万7500円~1万8500円。徒歩圏内に銭湯がなければ、交通費も上乗せされる可能性があります。
一見「家賃が安いから得」と思っても、銭湯代だけで月1万6000円以上かかる計算です。これを家賃に上乗せすると、実際の負担はどうなるでしょうか。
家賃+銭湯代を合計すると?
仮に家賃4万円の風呂なし物件に住み、毎日銭湯に通ったとします。
4万円+1万6500円(銭湯代)+1500円(備品代)=約5万8000円。
つまり、月にかかる「住まい+入浴」の総コストは約5万8000円になります。
江戸川区の場合、風呂付きのワンルームが6万円前後で見つかるため、差額はわずか2000円程度です。
一方、中野区では6万5000~7万円が相場なので、差は1万円前後ですが、通勤の利便性や生活の快適さを考えると、風呂付き物件のほうが現実的といえるのではないでしょうか。
また、銭湯までの移動時間を考えると、生活コストは“金額以上”に膨らみます。雨の日に外へ出る、夜遅くでは営業が終わっている、混雑していてゆっくり入れない……そうした不便さを日常的に受け入れる覚悟が必要です。
「風呂なし」は一見安く感じても、時間と手間がかかる
銭湯通いを前提にした生活は、固定費を抑える効果があるように見えますが、実際は時間・体力・利便性を犠牲にする節約術といえます。
また、光熱費(ガス・水道代)が家賃に含まれない場合は、風呂付き物件との差がさらに小さくなります。
「江戸川区で家賃4万円+銭湯代=5万8000円」と考えると、6万円台で風呂付きに住むほうが快適で実質的にお得ではないでしょうか。
中野区のように相場が高いエリアでも、「毎日は行かない」「ジム通いしてジムでシャワーを済ませる」などの工夫をしなければ、節約効果はあまり期待できないでしょう。
まとめ
風呂なし物件の家賃が安く見えるのは、あくまで“表面上の数字”です。
銭湯代や時間のロスを考えると、実際には風呂付き物件と大差がありません。特に江戸川区のように相場が抑えめの地域では、「銭湯代を家賃にまわせば風呂付きに住める」というケースが多いでしょう。
節約を目的に風呂なし物件を選ぶ場合は、「自分にとって何を削ってもいいか」を冷静に考えることが大切です。お金だけでなく、生活の快適さや時間の価値も含めて判断する、それが都内で賢く暮らすための、意外と重要な視点といえます。
執筆者 : 宇野源一
AFP
