「時給1300円」で働くパート主婦ですが、月給21万円の「正社員登用」を勧められました。時給換算で“手取りが減る”のでコスパが悪く感じますが、正社員になるべきですか?

配信日: 2025.11.05
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「時給1300円」で働くパート主婦ですが、月給21万円の「正社員登用」を勧められました。時給換算で“手取りが減る”のでコスパが悪く感じますが、正社員になるべきですか?
「時給制のままのほうが得なのでは?」というのは、パートで長く働く人が、正社員登用の打診を受けたときに抱きがちな疑問です。
 
一見すると、月給21万円の正社員よりも、時給1300円で働いたほうが「時給換算では高い」ように見えるかもしれません。しかし、給与明細に表れない部分に、長期的な損得の分かれ道があるのです。
 
本記事では、「時給1300円パート」と「月給21万円正社員」を数字で比較し、社会保険や年金、将来の安定性まで踏まえて考えます。
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時給1300円×週5日パートと月給21万円正社員の差を数字で比較

表面的な金額だけを見ると、時給制のほうが効率よく稼げるように思うかもしれません。しかし、実際の手取り額や社会保険料、企業負担分まで含めて比較すると、見え方が大きく変わります。
 

実際の月収を計算してみよう

時給1300円で1日7時間、週5日・月22日働いた場合、月収は以下の通りです。
 
1300円×7時間×22日=約20万200円
 
正社員としての月給が21万円の場合、ここから社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険)や税金(所得税、住民税)が控除されます。結果として手取りは16~17万円程度となり、この時点では「パートのほうが手取りは多い」と感じても無理はありません。
 

社会保険料の控除が生む見かけ上の損

パート勤務で社会保険に加入していない場合、支払うのは主に所得税と住民税のみです。そのため、正社員と同じ勤務時間でも手取りが約19~20万円と多く見えるケースが多いでしょう。しかし、正社員の社会保険料は「労使折半」であり、健康保険や年金などの保険料の約半分は会社が負担しています。
 
例えば、社会保険料の自己負担が月3万円の場合で考えてみましょう。企業負担もまた月3万円の社会保険料を負担しており、給与には見えない「実質的な報酬」と考えられます。つまり、21万円(給与)+3万円(会社負担)=実質24万円の総報酬となるわけです。
 

社会保険・賞与・退職金・年金で差がつく

正社員のメリットは、「将来の安心」に直結する社会保険制度に加入できることです。健康保険に入ることで、病気やけがで働けなくなった場合に「傷病手当金」(給与の約3分の2を最長1年6ヶ月)を受け取れます。出産時には「出産手当金」や「出産育児一時金」も支給対象です。
 
そして、原則65歳から受け取れる老齢年金の額が違います。例えば、国民年金のみの加入者が満額で月約6万9000円受け取るのに対し、厚生年金加入者は勤続年数に応じて月10~15万円前後を受け取ることも可能です。
 
さらに、賞与や退職金、昇給制度など、パートにはない収入の伸びしろがあります。年2回の賞与が各1ヶ月分出るだけで、年収は約42万円増える計算です。このように「今の時給」だけでは見えない部分で、将来の家計に大きな差がついていきます。
 

扶養の壁・ライフステージで変わる最適解

主婦層が悩むポイントの1つが「扶養の壁」です。年収が123万円を超えると、配偶者特別控除の控除額は段階的に減少します。
 
さらに、配偶者の健康保険の扶養に入っている場合、年収130万円を超えると社会保険への加入が必要です。そのため、「130万円を超えると損」というイメージが広まっていますが、社会保険に入ることで得られる保障を考慮すれば、必ずしも損とはいえません。
 
一方、子育て中や介護中など、家庭の事情でフルタイム勤務が難しい場合は、短時間正社員制度や時短勤務を活用し、段階的に働き方を変えていくのも選択肢です。ライフステージに応じて、「扶養内で働く」か「社会保険で備える」かを見直すことが、家計の安定につながります。
 

今の手取りより将来の安心を選ぶという考え方もある

短期的にはパートのほうが時給換算で得に見えることがありますが、社会保険や年金、昇給、退職金、そして安定した雇用という要素を含めると、正社員の価値は数字以上に大きいものです。
 
年齢を重ねるほど老後資金の準備期間が限られてくるため、厚生年金の加入期間を延ばすことは「将来の生活防衛策」にもなります。正社員登用の話が来たら、「損か得か」ではなく「守りと安心の投資」として前向きに検討してみてください。
 

出典

日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
厚生労働省年金局 令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
国税庁 No.1195 配偶者特別控除
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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