扶養内「月収5万円」パート中ですが、10月から12月まで「月収10万円✕3ヶ月」になりそうです。短期間の“掛け持ち”なら扶養を外れませんよね?
税金と社会保険では扶養の判断基準が異なるため、正確な知識が必要です。本記事では、それぞれの「壁」について分かりやすく解説します。
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「年収75万円」は税制上の扶養からは外れない
税法上の「壁」とは、自身の所得税が非課税になる「103万円の壁」(2025年12月からは160万円)と、配偶者控除が満額適用される「103万円の壁」(2025年12月から123万円)を指します。これらは、毎年1月1日から12月31日までの年間収入で判断されます。
例えば、1月から9月までの9ヶ月間を月収5万円で働き、10月から12月までの3ヶ月間を月収10万円で働いた場合、年収は「(5万円×9ヶ月)+(10万円×3ヶ月)=45万円+30万円=75万円」です。
年収が75万円であれば、所得税や配偶者控除の基準を下回るため、税制上の扶養(配偶者控除)から外れる心配はありません。住民税も非課税となるのが一般的です。したがって、税金面では月収10万円で3ヶ月間働いても問題はありません。
短期的な収入増が「社会保険の扶養」を外れる可能性
一方、社会保険の扶養(健康保険・厚生年金など)は税制とは異なり、「1ヶ月あたりの収入額」で判断されます。社会保険の扶養から外れる月収の基準は、年収130万円を12ヶ月で割った「月額10万8333円」です。
10月から12月にかけて月収10万円で働いた場合、月収は10万8333円を下回るため、基準上は扶養の範囲内となります。そのため、多くの人は「短期間なら問題ない」と考えがちです。
健康保険組合による判断の違い
しかし、月収10万円が数ヶ月間続いた場合は「恒常的に収入が増えた」と見なされ、扶養から外れるケースもあります。扶養から外れると、社会保険料として年間で20万円近い負担が発生し、結果として手取りが大幅に減る恐れがあるでしょう。
判断基準は健康保険組合ごとに異なるため、個人での判断は困難です。配偶者の勤務先が加入している健康保険組合に事前に相談し、収入がどの程度までなら扶養内で認められるのかを確認しておいてください。
月収10万円は「106万円の壁」にも注意
社会保険の扶養には、「106万円の壁」と呼ばれる基準も存在します。これは、会社の規模や勤務条件を満たす場合に、年収が約106万円(月額8万8000円)を超えると社会保険への加入が義務付けられるというものです。
106万円の壁に関する条件と注意点
健康保険・厚生年金保険の加入対象となるのは、以下のとおりです。
・週の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金が8万8000円以上
・2ヶ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない
月収10万円の期間が3ヶ月間あるケースでは、一見するとこの条件に当てはまりそうに感じるでしょう。ここで注意が必要なのは「掛け持ちパート」で追加の5万円を稼ぐという点です。
月収10万円を目指すのであれば掛け持ちを
パートを掛け持ちして月10万円を稼いだ場合、労働時間や賃金を合計して「106万円」の判断はされません。社会保険の加入義務は勤務先ごとに判断されるため、A社とB社でそれぞれ月収5万円なら、どちらも「月額8万8000円未満」で社会保険加入の対象外です。
このように、掛け持ちを上手に活用することで、社会保険料の負担を抑えつつ短期間で収入を増やすことが可能です。
社会保険の壁に注意しよう
短期間の掛け持ちで月収が10万円になる場合、年収の合計75万円は税制上の扶養である「103万円の壁」を下回るため問題ありません。ただし、社会保険の扶養は「今後の年間見込み」で判断されるため、月額10万8333円を恒常的に超えると判断されれば扶養を外れる可能性があります。
したがって、収入を一時的に増やす場合でも、配偶者の健康保険組合に確認しておくことが重要です。さらに、月額8万8000円を超えると社会保険加入の対象となるため、月収10万円を目指す場合は別の勤務先でパートを掛け持ちするなどの工夫が必要です。
短期間であっても収入を増やす際には、税金と社会保険の両方の「壁」に十分注意しましょう。
出典
国税庁 No.1199 基礎控除
国税庁 No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか
国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.1800 パート収入はいくらまで所得税がかからないか
国税庁 令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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