近所の飲食店で「時給1300円」でパート中。台風で「今日はシフトなし」と連絡がありましたが“日給7800円”は支払われないのでしょうか?「休業手当」が支払われる場合とは
しかし、休業の理由によっては、パート先が休業手当を支払ってくれることがあります。本記事では、休業手当を受けられる要件や休業手当の金額、台風などで店が休みになった場合の休業手当支払いの有無などを紹介します。
特定社会保険労務士・FP1級技能士
休業手当とは?
休業手当とは、働ける状態の従業員を会社の都合で休ませた場合、生活保障として、会社から従業員に支払われる手当のことです。休業手当の支払いは、労働基準法第26条により会社側の義務とされていて、違反した場合は罰則もあります。
「会社側の都合で休業させた場合」であれば、会社は従業員に休業手当を支払わなければなりません。会社側の都合とは、故意や過失だけでなく経営難なども含みます。
ただし、不可抗力による場合は除外されます。ここでいう不可抗力とは、会社側の努力や注意ではどうしても避けられない事情で、次の2つを満たすものとされています。
・会社経営者の力が及ばない外部的な原因によるもの
・通常の会社経営者として最大の注意を尽くしても避けられなかった事故
不可抗力による休業の場合は、会社側は休業手当の支払いは不要です。
休業手当はいくら?
では、会社都合で休んだ場合、休業手当はいくらになるのでしょうか?
休業手当は、「平均賃金の100分の60以上」とされています。平均賃金とは、直近3ヶ月間にその従業員に支払われた賃金の合計額を、その期間の暦日数で割った金額です。つまり、公休日を含めた「1日当たりの給料」と言えます。
ただし、パート従業員の場合、この計算式では平均賃金額が低くなりすぎることがあるため、別の計算式(最低保障額の計算式)が設けられています。最低保障額は、直近3ヶ月間の賃金合計を「その期間の労働日数」で割った金額の60%です。
休業手当の計算例
本記事のタイトルの例で試算してみましょう。時給1300円・1日6時間(日給7800円)、週2日の勤務とします。パート先は近所とのことなので、通勤手当は0円とします(ほかの手当もなし)。
前月 勤務日数8日(暦日数30日) 6万2400円
前々月 勤務日数8日(暦日数31日) 6万2400円
3ヶ月前 勤務日数7日(暦日数30日) 5万4600円
直近3ヶ月の給料合計17万9400円/暦日数の合計91日=1971円42銭
直近3ヶ月の給料合計17万9400円/勤務日数の合計23日×0.6=4680.00円
上記より、平均賃金(原則)の計算式で算出した金額より、最低保証額のほうが額は大きいため、平均賃金は「4680円」です。
平均賃金4680円×0.6×休業日数1日=2808円
休業手当は、2808円となります。
このようなケースでは休業手当は支払われる? 4つの具体的ケースを紹介
台風で店が休業の場合、「自然災害だから不可抗力だよね」と、店側は休業手当の支払いが不要だと感じるかもしれません。しかし、台風がきっかけだとしても、店を開けない具体的な理由によっては、休業手当の支払いが必要になるケースもあります。
「どうせお客さんは来ないから」
雨風が激しい台風の日、わざわざ外食しようと思う人はあまりいないでしょう。店主としては、店を開けた場合の光熱費・人件費と予想売上を引き比べて「今日は休みにしてしまおう」と判断するかもしれません。
この場合、店を開けようと思えば開けられる状態であるにもかかわらず店主の判断で休業を決定しているため、休業手当の支払いが必要です。
従業員の安全を考えて……
「こんな台風の日に従業員に出勤させたら、通勤途上で転倒したり、飛ばされた看板でけがをしたりするかもしれない」と考えて休業を決めた場合も、店主の判断による休業になるため、休業手当を支払わなければなりません。
店が浸水した!
台風の威力が大きく、店が浸水したり調理機材が使えなくなったりするなどの被害が出た場合、これは店主の力の及ばない不可抗力といえます。そのため、この場合は休業手当の支払いは必要ありません。
避難指示が出た!
行政機関から避難指示が出たために店を休まざるを得ないときも、休業手当の支払いは不要です。避難勧告は行政機関から出ているもので、店主が判断する余地はないためです。
まとめ
休業手当は、従業員は働く準備があるのに会社側の都合で就労させなかった場合に、会社から従業員に支払われる保障手当です。大地震や大型台風などの天災事変が起き、不可抗力で休業する場合は、休業手当の支払いは必要ありません。
ただし、台風などに起因していても、休業を「会社の判断で」決めた場合は、休業手当を支払う必要があります。
出典
e-Gov法令検索 労働基準法
厚生労働省 休業手当について
厚生労働省 地震に伴う休業に関する取扱いについて
執筆者 : 橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士
