暖房を「出勤1時間前」だけ使いたいです。「エアコン」「セラミックファンヒーター」は、どっちが安いですか? 1ヶ月の電気代“差額”を試算
また、暖房と言っても色々な種類がありますが、部屋全体を暖める「エアコン」と、すぐに温風が出る「セラミックファンヒーター」では、出勤前の「朝の1時間」だけ使う場合、どちらが経済的なのでしょうか。
本記事では、エアコンとセラミックファンヒーターの1ヶ月の電気代を試算し、賢い使い方を考えます。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
1時間あたりの電気代は? エアコンとヒーターの「カタログ値」比較
まず、エアコンとセラミックファンヒーターの1時間あたりの電気代を試算します。電力料金単価は31円/キロワットアワー(税込、全国家庭電気製品公正取引協議会目安)で試算します。
・エアコン(暖房定格消費電力470ワット想定):0.47キロワット×1時間×31円/キロワットアワー=約14.6円
・セラミックファンヒーター(強運転1200ワット想定):1.2キロワット×1時間×31円/キロワットアワー=約37.2円
カタログ上の数値だけ見ると、エアコンの電気代はセラミックファンヒーターの半分以下です。
これは、エアコンが「ヒートポンプ」技術で空気中の熱を集め、効率良く空気を暖める仕組みだからです。一方、セラミックファンヒーターは電気を直接熱に変えるため、即暖性はありますが消費電力が大きくなりやすい傾向にあります。
「朝の1時間」の落とし穴。エアコンは本当に安い?
カタログ上の数値ではエアコンが有利ですが、「朝の1時間」という使い方では注意が必要です。
エアコンは、冷え切った部屋を設定温度まで暖める「立ち上がり時」に最も電力を消費します。機種によっては1200ワットを超えるフルパワーで運転することもあります。
「朝の1時間」だけの使用だと、最も多く電力を使う「立ち上げ運転」だけでほぼすべての時間が消費されてしまうことにもなりかねません。これでは、エアコン本来の省エネ効果を十分に活かせない可能性があります。
仮に、1時間のうちエアコンの平均消費電力が、立ち上がり時の高負荷で800ワットになったと想定して再計算します。
・エアコン(立ち上がり時800ワット想定):0.8キロワット×1時間×31円/キロワットアワー=約24.8円
・セラミックファンヒーター(強運転1200ワット):1.2キロワット×1時間×31円/キロワットアワー=約37.2円
この試算でも、1時間連続で使う場合、エアコンの方が電気代は安くなります。1ヶ月(30日)毎日使った場合の差額は、(37.2円−24.8円)×30日=372円です。
ただし、これはあくまで試算です。実際にはお住まいの地域の気温や住宅の断熱性、エアコンの性能によって、立ち上がり時の消費電力がさらに増えることも考えられます。その場合、セラミックファンヒーターとの電気代の差が小さくなる、あるいは逆転する可能性もあります。
コストと快適性で選ぶ、朝の賢い暖房術
試算上はエアコンが有利ですが、セラミックファンヒーターには「スイッチを入れたら数秒で温風が出る」という、エアコンにない即暖性があります。
「出勤前の1時間」といっても、その過ごし方はさまざまです。家族全員がダイニングに集まって朝食をとる1時間もあれば、身支度や家事であわただしく動き回り、リビングには短時間しかいない1時間かもしれません。
もし、「リビング全体を1時間暖めたい」のであれば、エアコンが適しています。その際は、設定温度を控えめにし、風量を「自動」に設定するのが効率的です。
また、サーキュレーターを併用して暖かい空気を部屋全体に循環させたり、フィルターをこまめに清掃したりする工夫で、立ち上がり時の負担を軽減できます。
一方、「着替える洗面所だけを暖めたい」「朝食の間の15分間だけ、キッチンの足元を暖めたい」といった局所的・短時間のニーズであれば、セラミックファンヒーターが活躍します。
1200ワットで1時間(約37.2円)使い続けるのは高コストですが、15分(約9.3円)だけを使う、あるいはパワーを弱(600ワットなど)に切り替えれば、電気代を抑えつつ、必要な場所をすぐに暖めて快適に過ごすことが可能です。
電気代だけでなく「どう暖まりたいか」で選ぼう
「朝の1時間だけ」という条件でエアコンとセラミックファンヒーターの電気代を比較すると、部屋全体を1時間暖め続ける場合は、立ち上がり時の消費電力を考慮してもエアコンの方が安くなる可能性が高いと言えそうです。
一方、セラミックファンヒーターは「すぐ暖まる」「持ち運びができる」といった特徴があります。あわただしい朝の中で洗面所やキッチンの足元など、短時間で暖をとりたいシーンでは、電気代の差額以上に快適さを実感できるでしょう。
ご自身のライフスタイルを振り返り、「朝のどの時間帯に」「どこで」「どれほどの時間」暖かさが必要かを明確にすることで、節約と快適さの両立が可能になります。寒くなっていくこの季節、ご自宅の暖房器具の消費電力を確認し、最適な使い方を考えてみましょう。
出典
全国家庭電気製品公正取引協議会 よくある質問 Q&A
執筆者 : 山口克雄
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
