「年収1000万円」の人は、どれくらい“貯金”できてる? 生活レベルは意外と堅実?「貯金・借金」事情をデータをもとに確認
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
年収1000万円の人は堅実な暮らしぶり
年収900万円~1000万円の2人以上の世帯の、1ヶ月の収入と支出のデータがあります。総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2024年」によると、2人以上の世帯のうち勤労者世帯の収入と支出の内訳は図表1の通りです。
図表1
総務省統計局 家計調査 家計収支編 2024年より筆者作成
実収入76万7307円に対し、消費支出は36万9103円と、決して多い金額ではありません。ほかの年収階級を見ても、収入が多くなるに比例して消費支出は増えていますが、極端に多い金額ではありません。
年収階級別に支出を見ると、年収が高くなるにつれて食料費は増えていきますが、光熱・水道費や保険医療費などは、年収階級の違いによる大きな差は見られません。
なお、年収900万円~1000万円クラスでは、可処分所得に対して税金や社会保険料の占める割合が約22%と、4分の1近くが税金などの支払いにあてられています。
世帯人員は3.46人、18歳未満人員は0.94人であるのに対し、65歳以上人員は0.17人であることから、多くが夫婦2人に子ども1人の世帯と考えられます。
世帯主の配偶者のうち女性の有業率は71.8%と、7割が共働き世帯です。ちなみに、年収が高くなるほど女性の有業率は上昇しています。
年収1000万円の人の貯金と借金事情
それでは、年収1000万円の人は、どれくらい貯金・借り入れをしているのでしょうか。総務省統計局の「家計調査 貯蓄・負債編 2024年」によると、年収900万円~1000万円の2人以上の世帯のうち、勤労者世帯の1世帯当たり平均金額は次の通りです。
・年間収入:944万円
・貯蓄:1829万円
・負債:1447万円
貯蓄は1819万円でした。年収が200万円未満の世帯の貯蓄479万円から、年収が増えるにつれ貯蓄額も増える傾向はありますが、逆になっている年収階級もあり、必ずしも比例して増えていくわけではないようです。
一方、負債は1447万円で、内訳を見ると住宅・土地のための負債が1325万円でした。また、住宅・土地以外の負債は103万円となっており、住宅ローン以外にも何かしら借り入れをしていることが分かります。
年収1000万円の人は積極的に資産運用をしている
金融経済教育推進機構の「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」から、もう少し深掘りして見ていきましょう。
年収1000万~1200万円未満の2人以上世帯の、年齢別金融資産額は図表2の通りです。
図表2
金融経済教育推進機構 家計の金融行動に関する世論調査(2024年)より筆者作成
年齢が上がるにつれて、平均は増えていますが、中央値を見ると30代が1000万円、50代が825万円と、必ずしも年齢に比例しているわけではありません。
次に、年収1000万~1200万円未満の単身世帯のデータである図表3を見てみましょう。
図表3
金融経済教育推進機構 家計の金融行動に関する世論調査(2024年)より筆者作成
中央値が0円の年代も見られ、貯蓄している人とそうでない人の二極化していることが分かります。
年収1000万円の人が貯蓄する理由
貯蓄をしている人は、どのような理由でしているのでしょうか。
前記の「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」によると、年収1000万円~1200万円未満の世帯で、貯蓄を保有している目的(3つまでの複数回答)を見てみると、「老後の生活資金のため」と回答した人が、単身世帯で52.9%、2人以上の世帯で64.6%と、半分以上の人が回答し、ほかの目的よりも高くなっています。
単身世帯で次に多かった目的が「旅行、レジャーの資金」で29.4%、2人以上の世帯で多かった目的が、「病気や不時の災害への備え」で42%と、世帯によって違いが見られました。2人以上の世帯で3番目に多かったのが、「子どもの教育資金」で24.1%でした。世帯人数が増えると、家族のための貯蓄がメインとなっていることが分かります。
年収1000万円の人の金融行動
どのような金融行動をしているのか、いくつかの質問を通して見ていきましょう。金融資産をより安全にするために、「何らかの行動をした」と回答した人は、年収1000万円~1200万円未満の単身世帯で58.8%、2人以上の世帯で45.1%でした。どちらも年収が上がるにつれ、何らかの行動をしていると回答した割合が多くなっています。
また、元本割れを起こす可能性があるが、収益性の高いと見込まれる金融商品の保有については、「積極的に保有しようと思っている」と答えた年収1000万円~1200万円未満の単身世帯が41.2%、 2人以上の世帯が28%でした。
「一部は保有しようと思っている」と回答した人と合わせると、単身世帯が70.6%、2人以上の世帯が71.6%となっており、約7割の人が積極的に運用したいと考えていることが分かります。
年収1000万円の人は家計にメリハリがある
年収1000万円の世帯は7割が共働きで、消費を抑えた堅実な暮らしを送りつつ、住宅ローンという大きな負債を抱えています。
同時に、将来(特に老後)や家族のために、貯蓄だけでなくリスクをとった積極的な資産運用を行う傾向が強いことが分かりました。同じ年収で家計が厳しいという人は、支出を参考にして、抑えられるところはないか考えてみましょう。
出典
総務省 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 2024年
金融経済教育推進機構 家計の金融行動に関する世論調査 2024年
執筆者 : 金成時葉
2級ファイナンシャル・プランニング技能士



