冬のボーナス前に退職予定ですが、やっぱり支給されないのでしょうか…? 転職のタイミング、損しないためにどうすべき?

配信日: 2025.11.22
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冬のボーナス前に退職予定ですが、やっぱり支給されないのでしょうか…? 転職のタイミング、損しないためにどうすべき?
転職活動をしていると、気になることの一つが「ボーナス」かもしれません。ボーナス支給日前に辞めてしまうと、ボーナスはもらえないのでしょうか? 働いていた分はまったく考慮されないのでしょうか?
林智慮

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

賞与の定めは就業規則に

労働基準法第89条には、「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して行政官庁に届け出なければならない」と定められています。
 
就業規則の記載事項には、「賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」が定められていることから(法第89条2項)、賞与の制度がある場合は、就業規則に支給要件(算定対象期間、算定基準、査定期間、支給日、支払方法等)を記載しておくことが必要とされています。
 
ところで、賞与は支払いされるべきものなのでしょうか。
 
賞与の支払いは必ず支払うよう法律で義務づけられているものではありませんが、就業規則に定められている場合や、従業員10人未満の会社で就業規則がなくても、慣行として支給されている場合や労働契約書に記載がある場合は、使用者は支払い義務を負います。
 

賞与の算定対象期間に勤務したのに

では、賞与の支払日より前に退職してしまったら、勤務した日数分のボーナスはどうなるのでしょうか。
 
厚生労働省のモデル就業規則には、「支給日在籍条項」(賞与の支給対象者を一定の日に在籍した者とする)規定を設け、その日に在籍しない者には賞与を支給しないとすることも可能であると書かれています。
 
つまり、支給日に在籍する者に限るとあれば、算定対象期間に一部や全部勤務したのに支給日前に退職してしまうと賞与が支給されないということです。
 
裁判例も、支給日在籍要件を定めた就業規則は合理性を有するとして適法とされる事例(大和銀行事件:最高裁 昭和57年10月7日)、就業規則になく慣行としての支給日要件についても適法とされている事例(京都新聞社事件:最高裁 昭和60年11月28日)があります。
 
一方で、会社の都合で実際の支給日が定められた支給予定日より遅くなってしまい、実際の支給日に従業員が退職済みの場合はどうなるのでしょう。
 
この場合は、定められた支給予定日に在籍していれば、賞与の請求権があるものとされる事例(ニプロ医事件:最高裁 昭和60年3月12日)(須賀工業事件:東京地方裁 平成12年2月14日)があります。
 
(出典:厚生労働省「中央労働委員会 労働紛争の調整事例と解説 (18)周知されていない就業規則を理由とする賞与の不支給」より)
 

退職届を出す前に就業規則の確認を

転職する場合は、退職届を出す前に就業規則で賞与の支給要件の記載を確認しておきましょう。
 
例えば、多くの場合支給日に在籍すれば賞与が受給できますが、「賞与支給日に退職している者または退職を予定している者には賞与を支給しない」という定めのある企業の場合、支給日に在職していても、退職を予定している者に対しては支給がされません。
 
賞与支給のタイミングを考慮してから退職時期を決めるのであれば、前もって就業規則の賞与支給要件を確認しておくことが大切です。その他にも、業務の引き継ぎや有給休暇の残日数等、転職先の都合も考慮して、計画的に転職をしましょう。
 

出典

デジタル庁 e-GOV法令検索 労働基準法
デジタル庁 e-GOV法令検索 労働契約法
厚生労働省 労働基準局監督課 モデル就業規則
厚生労働省 茨城労働局 職場のトラブルQ&A 賞与の支給日在籍条項は有効だが、非自発的退職の場合は例外も
厚生労働省 中央労働委員会 労働紛争の調整事例と解説 (18)周知されていない就業規則を理由とする賞与の不支給
 
執筆者 : 林智慮
CFP(R)認定者

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