「最低賃金引き上げ」を契機に、わが社では「生活賃金」を開示しようという動きが。もし下回っていたら“賃上げ”してもらえる? 「40代夫婦世帯の平均生活費」は“月額35万円”!?
本記事では、生活賃金の意味や賃上げとの関係性を整理するとともに、例として40代夫婦世帯の平均生活費を解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
「生活賃金」とは「世帯が適切な生活水準を維持できる賃金」
生活賃金(living wage/リビングウェイジ)とは、労働者とその家族が人間らしい生活水準を維持するのに必要な賃金です。ILO(国際労働機関)憲章の前文には、「妥当な生活賃金の支給」という一文が記載されています。しかし、国際的な算出基準は設けられていません。
そのため日本では、日本労働組合総連合会が国内における指標として「連合リビングウェイジ」を独自に算出しています。これは労働者が健康で文化的な生活を送り、社会的体裁を維持するのに必要な賃金の水準です。
賃上げを企業に交渉する春闘の際に、底支えや格差是正などの最低到達水準を決定するときの参考として活用されています。また、地域別最低賃金審議会での金額審議の根拠としても利用されているようです。
なお、連合リビングウェイジは地域や世帯構成によって金額が異なり、一律の水準が示されているわけではありません。そのため本記事では、特定の金額は示していません。
「生活賃金」は、「最低賃金」や「給与基準」とは異なる
最低賃金とは、雇用主が労働者に支払う最低限の給与です。また、給与基準は従業員の給与に関するルールを指します。
厚生労働省の「令和7年度地域別最低賃金の全国一覧」によると、全国加重平均額は昨年度から66円アップの1121円です。東京都では、令和7年10月3日より最低賃金の時間額が1163円から1226円に改正され、63円の増額となりました。この引き上げは目安制度が1978年に開始されて以来、過去最大の改定幅です。
雇用契約の内容によっては、最低賃金の引き上げにより給与が増加するかもしれません。また、最低賃金を下回っていた場合は最低賃金法や労働基準法により処罰の対象となる可能性があります。
一方、生活賃金はあくまでも指標であるため、必ずしも賃上げにつながるわけではありません。ただし、企業としては基準を新たに設けたり開示したりする以上、実際の給与が基準を下回っていると社会的信用に影響します。そのため、先述の春闘のように賃上げの交渉材料の一つになります。
40代夫婦世帯の平均生活費は「30万円~35万円程度」
総務省統計局の家計調査によると、2人以上の世帯のうち勤労者世帯の40代前半の消費支出は31万1400円、40代後半は34万8895円となっています。
ただし、生活賃金は生活費そのものを示すものではなく「健康で文化的な生活を送るために必要な賃金水準」という指標である点に注意が必要です。そのため、これらの生活費データを生活賃金にそのまま当てはめることはできません。
企業が生活賃金を開示している場合は、現在の生活水準や支出状況と比較し、自身の収入が適切な水準にあるかを確認する材料として活用するとよいでしょう。
まとめ
生活賃金は、労働者とその家族が生活するうえで必要とされる賃金水準を示す指標の一つですが、最低賃金のように支払いが義務付けられているものではありません。そのため、企業が開示する生活賃金の水準を下回っていたとしても、直ちに賃上げが行われるとは限りません。
一方で、40代夫婦世帯では月30万円を超える生活費がかかっているというデータもあり、自身の収入が現在の生活水準と比べて妥当かを見直す材料にはなります。生活賃金は賃上げを保証するものではありませんが、給与水準を考えるうえでの“一つの目安”として捉えることが重要でしょう。
出典
国際労働機関 ILO憲章、フィラデルフィア宣言
日本労働組合総連合会 「連合リビングウェイジ」
厚生労働省 令和7年度地域別最低賃金の全国一覧
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
