会社でインフルエンザが流行!インフルエンザは「出勤停止」だけど、やっぱり欠勤扱い・無給なの?
では、そのとき給与はどう扱われるのでしょうか。
1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®認定者/中小企業診断士
新卒で警察官としてキャリアをスタート。その後、都内税理士法人で勤務し、多くの企業の経理業務を手がけた経験を活かして独立しました。現在は、「会社のお金」と「家庭のお金」をワンストップで相談できるパートナーとして活動しています。
小学生の子どもを育てるママでもあり、ライフプラン作成やキャッシュフロー分析など、個人やご家庭向けの具体的で実用的なアドバイスを提供しています。
企業経理相談や経営分析にも精通しており、これまでの経験を基に、経営者が抱えるお金の悩みに幅広く対応。さらに、執筆やセミナー活動も行い、「知って得するお金の知識」を届けています。お金の管理や経営に関するお悩みがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
体調不良で働けない場合(自己都合)
まず、インフルエンザによる高熱や強い倦怠感など、本人の体調不良によって働けない場合です。
この場合は、「私傷病による欠勤」と判断され、法律上は会社側に給与支払い義務がありません。つまり、一般的には次のようになります。
・欠勤扱い(基本的に無給)
・有給休暇が残っていれば使用可能(有給休暇を使うかどうかは本人が選べます。)
有給休暇を使えば給与は通常どおり支払われますが、使用しない場合は欠勤扱いとなり、その日の賃金は発生しません。この取り扱いは、インフルエンザに限らず、風邪や胃腸炎など、体調不良によって働くことができない場合と同じですね。
会社から出勤停止を命じられた場合
症状が軽く、働く意思や能力があるにもかかわらず、会社の判断で出勤停止を命じられるケースがあります。たとえば、熱は下がっているのに「社内感染を防ぐため一定期間出社しないように」などと指示される場合です。
この場合、休む理由は本人ではなく会社側にあります。そのため、法律上は「会社都合の休業」に該当し、労働基準法26条の休業手当が適用されるといわれています。休業手当のポイントは次のとおりです。
・平均賃金の60%以上を支給
・欠勤扱いにはできない
・有給休暇を会社が一方的に充当することはできない
本人が希望する場合に限り、休業手当ではなく有給休暇を使うこともできますが、あくまで本人の判断によります。
長期間働けない場合
季節性インフルエンザは通常数日で回復しますが、長期にわたり働けない状態が続く場合もあります。その場合に使えるのが、健康保険の「傷病手当金」です。これは、病気の休業中に生活を保障するための制度です。
この制度の主な要件は次のとおりです。
・業務外の事由による病気やけがの療養のための休業であること
・仕事に就くことができないこと
インフルエンザで医師の療養指示がある場合は、この要件に当てはまると考えられます。
・連続する3日間を含む4日以上仕事に就けなかったこと
・休業した期間について給与の支払いがないこと
ただし、給与が一部支給されていても傷病手当金より少なければ、その差額が支給されます。有給休暇を利用している場合は対象になりません。
支給額は、直近の標準報酬月額をもとに計算されます(加入期間などによって例外的な計算方法になる場合もあります)。傷病手当金は、待機期間(連続3日)終了後の4日目以降の働けなかった日に対して支給されます。
手当や制度をどう使い分けるか
休んだときにお金がもらえるかどうかは、「どの制度を使うか」によって変わります。
有給休暇なら給与は100%、休業手当なら平均賃金の60%以上、傷病手当金なら4日目から約3分の2が支給されます。ただし、有給休暇の残り日数やインフルエンザで休んだ日数の長さによって、どの制度が使えるかは変わってきます。そのため、自分の状況に合わせてどれを使うのが最適なのかを判断することが大切です。
また、会社によっては「特別休暇」という制度を設けている場合があります。インフルエンザや感染症のときだけ使える会社もあれば、無給扱いのケースもあります。
特別休暇は会社が自主的に決める制度なので、内容は会社ごとに異なります。どんな制度があるかは、健康なうちに就業規則をチェックしておくことがとても重要です。制度があるのに使われなかったり、使えるはずの休暇が申請できなかったりするのは避けたいところです。いざというときに損をしないために、事前に確認しておきましょう。
まとめ
インフルエンザで仕事を休む場面では、「誰の判断で休むことになったのか」「いまの自分の体調はどうか」によって、適用される制度が大きく変わります。
・自己都合での休み → 欠勤扱い(有給使用は本人判断)
・会社から出勤停止 → 休業手当
・長期間働けない → 傷病手当金
もし自分がどのケースに当てはまるのか迷ったときは、会社の就業規則や人事担当者に確認してみると安心です。
突然のインフルエンザは不安も大きいものですが、制度の違いを知っておけば、必要な手続きを落ち着いて進めることができます。体調が優れないときは無理をせず、安心して療養してください。
出典
全国健康保険協会 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
執筆者 : 富澤佳代子
1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®認定者/中小企業診断士
