12月の残業で「月収8万8000円」超に! 扶養を外れ“社会保険に加入”することになりますか?「月1万3000円」の負担増はキツイのですが、1ヶ月だけなら見逃してもらえないでしょうか…?
しかし、12月は各業界で繁忙期を迎え、残業などによって月収が8万8000円を超えてしまう人もいるでしょう。仮にたったひと月8万8000円を超えただけで、社会保険に入らなければならないのか、仮に入ることになった場合どれほど負担が増えるのか気になる人も多いはずです。
本記事では、社会保険の加入義務が発生する「106万円の壁」の正しい判定基準と、加入した場合の損得について解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
そもそも社会保険の加入基準とは? 残業代は含まれない
従業員数51人以上の企業に勤務している場合で「週20時間以上働く」「2ヶ月以上継続して勤務する予定がある」「学生ではない」「月収が8万8000円を超える」という4つの条件を満たすと、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入義務が発生します。
自身に社会保険の加入義務がなければ、家族の扶養に入ることができる場合は、健康保険料、厚生年金保険料の負担は発生しません。一方で社会保険に加入することになると、新たに保険料の支払い義務が発生するため、あえて月収8万8000円を超えないように働く人もいるわけです。
たまたま残業が重なり、ひと月だけ「壁」を超えたからと言って、社会保険の加入義務が発生すると困るという人も少なくないと思います。
この点、一ヶ月の給与明細の総支給額が8万8000円を超えたからと言って、即座に社会保険に加入しなければいけないわけではありません。この月額8万8000円の算定対象は、基本給と固定給の性質を持つ諸手当に限定されるからです。具体的には次の賃金は対象外となります。
・臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
・1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
・時間外労働に対して支払われる賃金(残業代)、休日労働および深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)
・最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当および家族手当)
そのため、残業が恒常的に行われ月収が8万8000円を超えることが当たり前になった場合は、契約の見直しと社会保険加入が求められることがありますが、ひと月だけ基準を超えただけでは即社会保険に加入することにはならないのです。
なお、2025年6月13日に成立した「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」により、8万8000円という基準が公布より3年以内に撤廃されることが決まっています。
これからは「8万8000円」ではなく、「月に20時間働くか」が最も大きな基準となるのです。
もし社会保険に入ることになったらどうなる?
残業による一時的な増額であれば問題ありませんが、もし契約更新で時給が上がったり、所定労働時間が増えたりして、固定給そのものが毎月8万8000円を超えた場合は当然社会保険の加入義務が生じます。
例えば、1ヶ月の固定給が9万円となった40歳以上(介護保険加入義務者)の人が、東京都の協会けんぽに加入した場合の保険料負担(月額)は次の通りです。
・健康保険料(介護保険含む):5060円
・厚生年金保険料:8052円
・雇用保険料:495円
合計1万3607円の負担が発生します。仮に月収8万円だったのが月収9万円になったとしても、実質的な手取りは7万6393円となるため働き損となってしまうのです。
ただし、手取りは減りますが、社会保険に加入することにはメリットもあります。
例えば、病気やけがで働けなくなった場合に支給される傷病手当金です。月給9万円であれば、1日あたり約1950円が最長1年6ヶ月受給できます。
さらに厚生年金に加入することで、将来受け取る年金額を増やせることもメリットです。月9万円で1年間加入すれば、65歳からもらえる年金が年間で約5800円増え、これは一生涯続きます。
さらに、年収の壁を気にせず働けることも魅力で、社会保険加入を契機としてキャリアアップにつながるかもしれません。社会保険に加入することは、収入によっては働き損になるというデメリットはありますが、社会保険に加入するメリットも含めてバランスよく判断すると良いでしょう。
まとめ
12月の残業で一時的に月収8万8000円を超えてしまっても、その超過分が残業代や交通費によるものであれば、社会保険加入の対象にはなりません。たったひと月の超過で1万3000円以上の保険料負担が発生するということはないのです。
社会保険に加入することは、手取り減少のデメリットだけではなく、「万一の保障」や「将来の年金」が増えるというメリットもあります。今後、働き方を変えたり働く時間を増やしたりして社会保険に加入するかどうかは、手取りの損得だけでなく、自分のライフプランに合わせて判断することが大切です。
出典
厚生労働省 社会保険の加入対象の拡大について
全国健康保険協会 令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)(東京支部)
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
