パート勤務で「手取り13万円」ですが、生活保護で“同額もらえる”と聞きやるせないです…これなら「働くだけ損」ですか?“最低賃金・生活保護額”を比較
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
最低賃金で働いた月収と生活保護支給額のリアル
令和7年度の最低賃金は、全国加重平均で時給1121円となりました。都道府県によって大きなばらつきがありますが、ここでは青森県のデータ(最低時給1029円)を参考に、時給1030円で勤務(月に20日、1日8時間勤務)をしている40歳で一人暮らしの人の手取り月収をシミュレーションしてみましょう。
(給与月額)
1030円×8時間×20日=16万4800円
(社会保険料の自己負担額)
・健康保険料
標準報酬月額16万円:9152円
・厚生年金保険料
標準報酬月額16万円:1万4640円
・雇用保険料
16万4800円×5.5/1000=906円
社会保険料額小計
2万4698円
(税金)
・所得税:2680円
・住民税:約5000円
これらを差し引くと、手取り金額は月額で13万2422円となります。
一方、青森市(2級地-1)における一人暮らしの人の生活保護費(月額)は以下の通りになります
生活扶助:7万1460円
住宅扶助:3万1000円
合計額:10万2460円
これはあくまでも一人暮らしで障がいなどの無い人への保護費であるため、世帯に扶養する子どもがいる、母子家庭であるなどの事情によっては生活保護費が増額されます。加えて、生活保護受給世帯には医療費の自己負担が無くなるなどの措置も用意されています。
比較してみると、最低賃金で働いている人のほうが3万円程度は「手取り額」が多くなる計算ですが、週に5日、1日8時間労働の結果で手に入れられる賃金がこの程度であれば、生活保護のほうがましであると感じる人が多いのは無理のないことかもしれません。
本来の「生活保護」の理念と、給与以外の「労働の価値」を考えよう
そもそも生活保護の制度は、日本国憲法第25条に定められた「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という理念に基づいてつくられたもので、生活に困窮する人々が自立することを目的とした制度です。そのため、基本的に以下の4要件を満たしていなければ制度は使用できません。
1. 世帯の収入が最低生活費以下であること
2. 利用し得る資産がないこと
3. 働く能力があっても働けない状況であること
4. 扶養義務者からの扶養を受けられないこと
また、体調が万全でないなどの理由で時短勤務しかできず、「働いているけれど、給料が最低生活費(生活保護基準額)に届かない」などの事情がある場合、差額を受給することもできます。例えば、病気や事情で時短勤務しかできず、月収が8万円しかなかった場合、居住地域の最低生活費が11万円なら、差額の3万円を受給することも可能です。
生活保護は、あくまでも「健康で文化的な最低限度の生活」をすべての国民に保障するためのものでしかありませんので、貯金が自由にしづらい、定期的なケースワーカーの訪問があるなど、生活には多くの制限がかかります。
最低賃金でも働いていれば、月に数万円とはいえ、生活保護費相当額よりも自由に使えるお金があるというのは大きなメリットでしょう。また、仕事を通じて得られるスキルや人脈は、将来的により良い生活を送るための資源になります。
キャリアコンサルタントでもある筆者としては、きれいごとに聞こえるかもしれませんが。「労働」には受け取る給与以外にも大きな価値がそれぞれの仕事にあるはずで、それを感じられる仕事に就いていただきたいと強く願っています。
「働いたら損・負け」という価値観を完全に否定はしませんが、自分にとって「働いたほうが楽しい・得」だと思える仕事にめぐりあい、ゆくゆくは自分から進んで収入をさらに増やしたいと思えるようになるよう、自分なりの行動をしていただきたいです。
まとめ
居住地域にもよりますが、最低賃金でフルタイム働いた時の月額手取り金額と、生活保護を受給した時の月額受取額には数万円程度の差しかありません。しかし、生活保護を受けるには厳しい条件をクリアする必要があり、受給中は定期的な生活チェックを行政から受ける必要があることなどの不便も生じます。
労働には、得た賃金を自由に使えること、労働を通じてスキルを身につけたり人脈を広げたりできることなど、賃金以外の価値も必ずあります。それらに価値を感じられる場所で働き、より良い人生を送っていただきたいと思います。
出典
厚生労働省 生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和7年10月)
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分から)の健康保険・厚生年金保険の保険料額表(青森支部)
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
