来月末に退職予定、通常業務が忙しいうえに引き継ぎ作業もあり、有給を使う暇がない! 退職日になると余った有給は無駄になるの?
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員
大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。
有給休暇の買い取りは原則として認められない
退職までに有給休暇を使い切れず残してしまうのは、もったいないことです。「“有給”なのだから、使わない分は会社が買い取ってくれればいいのに……」 そう思う方も多いのではないでしょうか。
しかし、有給休暇は基本的に会社が買い取ることはできません。
労働基準法第39条で規定された年次有給休暇(有給)は、「従業員の心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために付与されるもの」とされています。会社としても、従業員が疲れを癒やし、充実した時間を過ごすことで、さらに仕事に打ち込んでもらえることを期待しています(※1)。
そのため、安易に有給を買い取ることは従業員の心身の健康回復を妨げることになりかねず、法の趣旨に反するため認められていません。有給と引き換えに金銭を給付することは,結局法定日数を付与していないのと同じことになってしまうからです(※2)。
例外的に買い取りしてもらえる事情とは
ただし、例外的に買い取りが可能な場合があり、次の3つのケースが挙げられます。
(1) 法定日数を超える部分の有給を買い上げる場合
(2) 退職時に未消化で残っている有給
退職後は有給の権利行使ができなくなることが根拠に挙げられます。
(3) 時効によって権利の消滅した有給
有給の権利は繰り越せますが、時効は2年間です(労働基準法第115条)。時効で消滅した有給は、その時点で法律の対象外になると考えられるためです(※2)。
いずれの場合も、勤務先が認めた場合(就業規則で規定している等)となりますが、未消化の日数相当額を手当として支給することは可能です。つまり、退職時に使い切れなかった有給日数分を無駄にしないため、手当として支給を受けられる可能性はあります。
ただ、従業員としても、退職時の引き継ぎ業務が滞りなく進むよう対応する義務がありますから、より職場の理解を醸成しておく環境づくりが求められると思われます。
会社に買い取りの義務はない
もしも、会社が有給の買い取りを制度として認めていたらどうなるでしょうか?
もともと多忙で有給を取りにくい方は、「いざとなれば法定を超える分は買い取ってもらえばいい」と、早々と取得をあきらめてしまったり、引き継ぎを退職ギリギリまで行ってほしい上司が「未消化の分は買い取るから」と、従業員の権利を侵す発言を軽々に口にしてしまったりする懸念さえあります。
冒頭に記した法の趣旨に照らしても、有給取得を促進する世の中の流れに逆行してしまいます。そのような従業員の立場に立った考え方から、たとえ違法ではなくても、上記のケースいずれについて、買い取り制度を設けている会社は非常に少ないと考えられます。
法定以上を付与している日数分については、会社独自制度ですから買い取り制度を設けても問題ないようにみえます。ただその場合、あえて法定以上の有給取得を奨励し、福利厚生を充実させているにもかかわらず、取得の動機付けを弱めるような規定を設けるのは矛盾しているといえるでしょう。
なお、買い取りが認められる場合も、結果的に未消化になった分が対象であり、事前に買い取りを予約することは禁じられています。
退職時も買い取りはハードルが高い
退職時に未消化で残してしまう有給については、客先対応や引き継ぎなどに余人をもって代えられず、会社指示で最終日まで対応せざるを得ないなど、退職日までの予定を自分の裁量でコントロールするのが困難なケースがあるでしょう。
本来取得したかった休暇予定日を会社指示で返上するのであれば、会社側は「時季変更権」の行使に伴い代替取得日を確保する必要がありますが、その候補日がもう後日に残されていないのは従業員の責とはいえません。
この場合は、制度はなくても買い取りしてもらえる可能性があるか、会社に相談してみてもよいでしょう。
ただし、もともと会社に買い取り義務がないことや他の同様の事例における区分けの問題、そもそも休暇取得に向けた職場努力が行われたのか、といったハードルがいくつもあることから、容易には認められないのではと考えられます。もし、退職理由が転職であれば、転職先で新たに有給休暇が付与されます。
年間の保有日数を、有給付与から退職までの期間で案分した日数分ぐらいは消化して退職できるよう、退職時に慌てないためにも普段から計画的に取得していくことが大切だといえるでしょう。
出典
(※1)厚生労働省 労働基準情報 FAQ (よくある質問) 年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。
(※2)広島県商工労働局雇用労働政策課 広島県雇用労働情報サイト わーくわくネットひろしま 6-4 未消化の年休を買上げることは問題ないか 労働相談Q&A
執筆者 : 伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員
