昨年「年収120万円」に抑えたけど“年1000時間”働いたパート主婦。年収の壁が「178万円」まで上がっても、時給が低ければ結局“貧乏暇なし”にならないでしょうか? 働き方の変化を確認
本記事では年収の壁の引き上げに伴う、働き方の変化について解説します。
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令和8年度税制改正では「年収の壁」が緩和
財務省は「令和8年度税制改正の大綱」で、年収の壁(所得税の課税ライン)を再度引き上げる方針を示しています。
今回の税制改正では、年収の壁を、令和7年に改正された160万円から178万円に引き上げる方向で調整されています。給与所得の基礎控除と給与所得控除額の合計額が引き上げられることにより、年収178万円まで所得税が課せられなくなるため、パート労働者の「税金の負担増を気にした働き控え」が減少する効果が期待されます。
しかしながら、掲題の疑問の背景には、枠が広がった分だけ長時間労働が必要になるという現実的な問題があります。
令和7年の緩和後も就業調整を実施している女性は多い
年収の壁が緩和されても、依然として多くの有配偶パート女性が一定以下の収入額に抑える就業調整を続けている実態があります。
株式会社野村総合研究所の調査では、有配偶パート女性の56.7%が年収の壁を意識して、就業時間や日数を調整していると回答しました。これは、所得税の発生や社会保険料の負担増による「手取りの減少」を避けるためと考えられます。
また、同社の別の調査では、もし年収の壁が解消された場合、就業調整をしている有配偶パート女性の67.4%が「今より働く時間を増やして年収を増やしたい」と回答していまます。また、時給の高い仕事への転職希望者が48.1%もおり、労働時間を増やすだけではなく賃金水準の引き上げも重視しているようです。
この結果から、賃金水準が変わらないまま働く時間だけを増やしても、結局は「貧乏暇なし」になってしまうのではないかという懸念は、多くの労働者が抱く切実な問題だといえるでしょう。
178万円まで稼ぐには年間1400時間以上の出勤が必要な可能性
令和7年10月に地域別最低賃金が引き上げられ、東京都は前年度より63円増額され1226円になりました。ここで、掲題の40代パート主婦を「都内勤務で年収120万円」と仮定した上で労働時間を計算してみましょう。
・年間労働時間:120万円÷1226円≒979時間
・1週間の労働時間(1年を52週に換算):年間979時間÷52週≒約19時間
つまり、年収120万円の場合、最低賃金が最も高い東京都であっても年間に1000時間近い労働が必要になる見込みです。では年収の壁の引き上げに伴い、178万円まで稼ぐ場合、労働時間はどの程度増えるのでしょう。
・年間労働時間:178万円÷1226円≒1452時間
・1週間の労働時間:年間1452時間÷52週≒約28時間
・1週間あたり増加する労働時間:28時間ー19時間≒約9時間
年収178万円を稼ぐためには、年間に1400時間以上の労働が必要になる可能性があります。1週間あたり9時間の労働時間の増加は、一概に「貧乏暇なし」とまではいえないものの、年収増と働き方のバランスを考える必要がありそうです。
まとめ
年収の壁が178万円まで引き上げられることは、収入を増やしたい人にとって朗報といえます。しかし、上限ギリギリまで働こうとして無理をしてしまっては、まさに「貧乏暇なし」になりかねません。
大切なのは、178万円まで稼がなければならないと考えるのではなく、働ける枠が広がったと捉えることです。自身の体力や家庭の状況に合わせて、無理のない範囲で賢く制度を活用していくのが正解といえるでしょう。
出典
財務省 令和8年度税制改正の大綱(1/9)
株式会社野村総合研究所 2025年から「年収の壁」が引き上げられたが有配偶パート女性の約6割は依然として就業調整を実施
株式会社野村総合研究所 「就業調整」する有配偶パート女性の67.4%が「年収の壁」解消で「今より働く時間を増やして収入を増やしたい」と回答
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
