出張先のホテルで「朝食付きプラン8000円」は承認されたのに、なぜか「ホテル代7000円+コンビニ朝食1000円」は却下された! どちらも“必要経費”なのにナゼ? 経費精算の謎ルールとは
「ホテル1泊・朝食付きプラン8000円」の代金は旅費として全額承認されるのに、「ホテル1泊・素泊まりプラン7000円+朝食代1000円」の代金はホテル代しか承認されないといった、「経理の謎ルール」はなぜ起きるのでしょう。
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
出張中の食費は「自腹」が基本
基本的には、業務命令による出張の間であっても、「社員個人の食事代」は「必要経費」になりえません。
「ご飯を食べる」という行為は、出張先だろうが自宅にいようが、生きていく上で絶対にかかる個人的な費用だとみなされるからです。仕事相手との「接待交際費」や「会議費」としてのお弁当代などは別ですが、出張先で社員個人が食べる朝食や夕食は、あくまで自己負担が原則です。
ただ、出張先での食事はどうしても「外食」になってしまい、通常生活の中での食事よりも費用が高くなりがちです。そこで良心的な会社では、旅費を精算する場合には「旅行雑費」「出張日当」などの形で、1泊あたり数百円から数千円の手当を追加してくれる場合があります。
これらを会社が支出している場合は、経理としては「出張中にかかる食事代は、雑費や日当として支出済みである」という理由ができますので、旅費精算の際に「コンビニで朝食をまかなった際のレシート」などを提出しても承認されない、ということが起きえます。
それならば、「ホテルの朝食付き宿泊プラン」にも「食事代」が含まれているために却下されそうなものですが、これは以下のような理由で認められる事が多いです。
1. 領収書に「宿泊代」としか書かれないことが多いから
ホテルが発行する領収書は、朝食代込みであっても「ご宿泊代」として一括で記載されることがほとんどです。経理から見れば、それが素泊まりなのか朝食付きなのか、パッと見では判別できません(※明細を見れば分かりますが、出張旅費規程の上限内であれば、あえて細かく追及しない会社も多いです)。
2. 会社が「朝食付きまではセーフ」と実務上認めているから
多くの会社では、「出張時のホテル朝食は、宿泊と一体のサービスとして宿泊費に含めてよい」という暗黙の、あるいは社内規定で明文化されたルールを持っています。
特にビジネスホテルにおいては、朝食はホテル側の付帯サービスという認識が強いため、上限金額(例えば「1泊1万円以内」)に収まっていれば、目くじらを立てないという運用が一般的です。
つまり、コンビニの領収書は「明確に個人の食費」だと分かってしまうためにNGですが、ホテルの宿泊費としての領収書であれば「一部は食事代でも、宿泊費という枠に収まっている」ために承認される、という形式上の違いが経理の取り扱いを左右していると言えるでしょう。
「経理の謎ルール」を逆手に取った「商品券付き宿泊プラン」が存在する宿も
会社の経理が基本としている「宿泊費が旅費の上限に収まっていれば、社員が負担した全額を精算する」という慣例を逆手に取って、「商品券付き宿泊プラン」を提供しているホテルも多く存在します。
例えば、素泊まり7000円のホテルで「商品券3000円分付きプラン(合計1万円)」に泊まり、領収書は「宿泊代1万円」で切ってもらえば、社員は3000円分の商品券を会社経費で取得できるというようなスキームです。
ひと昔前まで、このような宿泊プランは多く利用されていたと聞きますが、最近はこのような領収書を経理に提出すると却下される、あるいは厳しく咎められることが多いようです。これは、経理が意地悪をしているわけではなく、税務調査で不備を指摘されないための正当な行為だと言えます。
そもそも会社が負担する経費は、「業務に必要な支出」でなければなりません。前記のような宿泊パックは、「社員が個人的に使える商品券を、会社のお金で買った」という行為になりますので、それは「経費」ではなく「社員への給与(経済的利益の供与)」とみなされてしまいます。
もし、税務調査が入ってこのような行為が発覚すると、会社は「給与として処理せず、所得税の源泉徴収を漏らしていた」とされ、ペナルティを受ける事態が起きえます。
経理が厳しい企業では、社員から提出された領収書に「宿泊代」としか書かれていなくても、ネットでそのホテルの料金プランを調べたり、明細書の提出を義務付けたりして、不正なプラン(商品券、マッサージ券、お土産付きなど)を利用していないか見破るようになっています。
まとめ
社員の旅費を負担する会社にとっては、業務命令による出張の間であっても、「社員個人の食事代」は「必要経費」になりえません。そのため、出張中の食事代を記載したレシートを経理に提出しても、多くの場合は不承認となってしまいます。
「朝食付き宿泊プラン」であれば、朝食代は会社が経費として支出できる「宿泊費」として認められるため、全体を経費として承認されるケースは多いようですが、これは日本企業に独特に存在する「経理のグレーゾーン」と言えるかもしれません。
執筆者 : 山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
