更新日: 2019.05.17 働き方

〈働く女性を応援する〉③主婦が起業したら夫の扶養ではいられない?

執筆者 : 黒澤佳子

〈働く女性を応援する〉③主婦が起業したら夫の扶養ではいられない?
「起業」すると変わる環境の一つに社会保険があります。手続きを忘れないように気を付けるだけでなく、自分の暮らしに影響があることですので、いろいろ知っておいた方がいいですよね。

黒澤佳子

Text:黒澤佳子(くろさわよしこ)

CFP(R)認定者、中小企業診断士

アットハーモニーマネジメントオフィス代表
栃木県出身。横浜国立大学卒業後、銀行、IT企業、監査法人を経て独立。個別相談、セミナー講師、本やコラムの執筆等を行う。
自身の子育て経験を踏まえて、明日の子どもたちが希望を持って暮らせる社会の実現を願い、金融経済教育に取り組んでいる。
また女性の起業,事業承継を中心に経営サポートを行い、大学では経営学や消費生活論の講義を担当している。

https://www.atharmony-office.jp/

起業したら扶養ではいられない?

 
例えば専業主婦が起業するとき、法人を設立する(会社を作った)場合は、社会保険が適用になるため、扶養から外れることになりますが、個人事業主の場合はすぐに扶養から抜けないといけないというわけではありません。会社の規定である「扶養の範囲内」におさまれば、扶養でいることができます。
 
個人事業主にとって、税金や社会保険料は大きな支出になります。扶養でいると、社会保険料の負担がありません。特に起業当初、売上が十分でなく経費がかさんでしまう時期には、大変助かります。
パートや正社員などの会社員と大きく違うのは、個人事業主には必要経費が認められ、所得計算上、収入から経費を差し引くことができる点です。
 
収入から必要経費を差し引いた所得が38万円を超えなければ、税金はかかりません。さらに、個人事業主の開業届を提出し、青色申告の承認を受けておくと、青色申告特別控除65万円が受けられるので、38+65=103万円まで税金がかからなくなります。
しかし世帯収入でいうと、所得が38万円を超えると、夫の配偶者控除は適用されなくなり、扶養でなくなると家族手当の支給もなくなります(家族手当がある会社の場合)。
 


 

いつまで扶養でいられる?

社会保険上は、いわゆる「130万円の壁」があります。130万円を超えるか超えないかの判断時期は、積み上げで130万円を超えたら扶養でなくなる、というわけではありません。将来にわたって130万円を超える見込みがある場合は扶養でなくなります。
 
細かな条件は会社によっても異なりますが、例えば、毎月の収入があり、それが108,400円を超える見込みとなると、1年間では130万円を超えることになるので、その仕事についた時点で扶養から外れることになります。
 
中には、所得(収入-必要経費)が130万円を超えなければ、扶養と認めてもらえる場合もあるようです。
 
個人事業主になっただけで扶養から外れるということはありませんが、収入が130万円以内であることを証明するための書類(確定申告書、課税証明書、無収入証明書等)を求められることがあります。
 

起業を理由に退職した場合は、失業保険はもらえない

雇用保険に加入しているパートや会社員だった場合、辞めるときに「雇用保険被保険者証」を受け取ります。また後日「離職票」が送られてきます。これらは失業保険をもらうために必要な書類です。
 
しかし失業給付は、「再雇用される意思があるがまだ求職中のときの生活保障」なので、起業を理由に退職した場合は受給資格がないと判断されます。
 
失業給付を受けている期間中に、起業準備を始めた場合も給付が停止されますのでご注意ください。
ただし、給付の所定日数が3分の1以上残っているなど細かい条件はありますが、「再就職手当」が受け取れる場合がありますので、開業届のコピーや事業所を証明できるものなどは用意しておくとよいでしょう。
 
Text:黒澤佳子(くろさわよしこ)
CFP(R)認定者、中小企業診断士、システム監査技術者、不正検査士(CFE)
アットハーモニーマネジメントオフィス代表