繰り上げ返済で十分な効果を得るためには、繰り上げ返済で生じるデメリットを理解し、回避するための対策をとることが大切です。
そこでこの記事では、繰り上げ返済にともなうデメリットについて解説します。繰り上げ返済の方法やタイミングを判断する材料の1つとして、ぜひ参考にしてください。
日々の生活における、お金にまつわる消費者の疑問や不安に対する解決策や知識、金融業界の最新トレンドを、解りやすく毎日配信しております。お金に関するコンシェルジュを目指し、快適で、より良い生活のアイディアを提供します。
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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目次
住宅ローンの繰り上げ返済とは?
住宅ローンの「繰り上げ返済」とは、月々の返済とは別に、前倒しで返済をすることです。
繰り上げ返済の種類には、ローン残高を全額まとめて返済(完済)する「全部繰り上げ返済」と、一部だけを前倒しで返済する「一部繰り上げ返済」があります。また、一部繰り上げ返済は、返済額をどのように元金に充当するかによって「期間短縮型」と「返済額軽減型」に分かれます。
・期間短縮型
繰り上げ返済した金額を、残りの返済期間の返済の一部に充当する方式。毎月の返済額はかわらないものの、返済期間を短縮でき、短縮された期間に発生するはずだった利息が削減されます。
・返済額軽減型
繰り上げ返済をした金額を残返済期間全体にならして充当する方式。毎月の返済額が減額され、さらに元金が減った分利息も軽減されます。
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住宅ローンを繰り上げ返済するメリットは?
繰り上げ返済の最大のメリットは、最終返済日までに支払うはずの利息を節約できる点です。繰り上げ返済をしたお金は、元金に充当されます。将来返済する予定だった元金を前倒しで返済することで、繰り上げ返済した元金に対応する金利を支払わなくてよくなるのです。
また、期間短縮型の場合は、返済が当初の予定よりも早く終わるため、年齢が高くなる前に家計の負担を減らせるという利点もあります。
一方、返済額軽減型は月々の返済の負担が軽減できるため、毎月の固定費を負担に感じている方にとってメリットが大きい方法だといえるでしょう。
繰り上げ返済で生じる可能性がある3つのデメリット
繰り上げ返済は、適切に利用すれば大きなメリットのある手段です。しかし、繰り上げ返済の手続き方法や繰り上げ返済をする金額、タイミングなどによってはデメリットが生じることもあるため、慎重に検討することが大切です。
繰り上げ返済にともない発生する可能性がある主なデメリットは、次の3点です。
1.手数料がかかることがある
2.手元資金不足に陥ることがある
3.住宅ローン控除が適用されなくなることがある
以下で、それぞれについて詳しくみていきましょう。
手数料がかかることがある
金融機関によっては、繰り上げ返済手続きの際に手数料がかかります。繰り上げ返済の回数が増えると、手数料の負担も大きくなるため注意しましょう。繰り上げ返済のタイミングや金額によっては、効果が手数料負担で相殺されてしまうことも考えられます。
インターネットからの手続きなら手数料が無料になるなど、手続きの方法によって繰り上げ返済手数料の金額が異なる金融機関もあります。繰り上げ返済をするときには、手続き方法ごとの手数料を確認して、できるだけコストのかからない方法を選択するとよいでしょう。
手元資金不足に陥ることがある
繰り上げ返済を利用すると将来の支払金利が削減されるため、長期的にみれば金銭的な負担が軽減されます。しかし、短期的には手元の資金が減少することになるため、注意が必要です。特に期間短縮型の場合は毎月の返済額が据え置かれるため、資金不足に陥りやすいという側面があります。
繰り上げ返済をする際は、急な出費やライフイベントごとにかかる費用などに十分に備えたうえで、それでも余裕がある資金だけを返済に回すようにしましょう。
住宅ローン控除が適用されなくなることがある
住宅ローン控除の適用中に繰り上げ返済をするときは、住宅ローンの残りの返済期間に注意しなければなりません。
住宅ローン控除が適用されるのは、返済期間が10年以上の住宅ローンです。繰り上げ返済などでローンの返済期間を短縮する場合は、短縮後の期間が10年以上あることが求められます。期間短縮型で繰り上げ返済をした結果、残りの返済期間が10年を切ると、住宅ローン控除は受けられなくなるのです。
また、住宅ローン控除の減税額は住宅ローンの年末残高が多いほど大きくなります。繰り上げ返済をして残高が減れば、その分、減税額が少なくなることも頭に置いておいてください。
住宅ローン控除の適用中に繰り上げ返済を検討する際は、双方の効果を具体的にシミュレーションしたうえで、繰り上げ返済のタイミングを決めましょう。
効果的に繰り上げ返済するポイント
繰り上げ返済でできるだけ不利益を被らず、効率的に効果を上げるには、デメリットを理解することに加えて、次のようなポイントを意識するのが大切です。
・できるだけ早いタイミングで繰り上げ返済を実行する
・目的に応じて「期間短縮型」「返済額軽減型」を使い分ける
・今後のライフイベントを想定して資金計画を立てる
これらをおろそかにすると、思うような負担軽減効果を得られないだけでなく、負担が大きくなる可能性もあるため注意しましょう。以下で、それぞれ説明します。
できるだけ早いタイミングで実行する
住宅ローンの繰り上げ返済は一般的に、できるだけ早く、借入残高が多い時期に行うほうが、効果が高くなります。
【例】期間短縮型で300万円を繰り上げ返済する場合
借入額:3000万円
金利:全期間固定金利型1.5%
返済期間:30年
返済方式:元利均等返済
ボーナス返済:なし
・残り返済期間:29年0ヶ月⇒25年5ヶ月
・減少する利息額:150万5956円
・残り返済期間:25年0ヶ月⇒21年7ヶ月
・減少する利息額:125万325円
・残り返済期間:20年0ヶ月⇒16年10ヶ月
・減少する利息額:95万594円
・残り返済期間:10年0ヶ月⇒7年4ヶ月
・減少する利息額:41万1772円
※金融広報中央委員会 知るぽると「繰り上げ返済シミュレーション」を利用してシミュレーションしています。
※こちらは概算になりますので、実際の金額とは異なる場合があります。
家計に無理のない範囲で、住宅ローン控除との兼ね合いなども考えながら、できるだけ前倒しで繰り上げ返済するとよいでしょう。
目的に応じて「期間短縮型」「返済額軽減型」を使い分ける
住宅ローンの繰り上げ返済で目的どおりの効果を得るには、「期間短縮型」「返済額軽減型」の違いを理解して使い分ける必要があります。
・期間短縮型:完済時期を早めたい場合、総返済額をできるだけ抑えたい場合
・返済額軽減型:毎月の返済の負担を減らしたい場合
繰り上げ返済によって最も欲しい効果は何なのかをしっかり整理したうえで、目的に合う方法を選択しましょう。
今後のライフイベントを想定して資金計画を立てる
住宅ローンの返済は長期にわたるため、返済期間中にさまざまなライフイベントが起こり、まとまった資金が必要となるのが普通です。例えば、次のような資金が必要となることが考えられます。
・子どもの教育費
・冠婚葬祭費(子どもの結婚費用など)
・病気やけがの治療費・療養費
住宅ローンの繰り上げ返済をすると、長期的にみれば負担が減るものの、手元の資金は一時的に大きく減少します。
無理な繰り上げ返済よって家計が圧迫されれば、本末転倒です。いざというときに貯蓄がなくて焦らないよう、今後起こり得るライフイベントを想定して、余裕をもった資金計画のもと繰り上げ返済を行いましょう。
借り換えのほうが負担軽減効果が大きい可能性がある
住宅ローンの返済額の軽減が目的であれば、ほかの金融機関での「借り換え」も選択肢の1つです。場合によっては、借り換えのほうが繰り上げ返済よりも大きな効果を得られることもあります。
借り換えで大きな効果が出やすいといわれる条件は、次のとおりです。
・住宅ローンの残高が1000万円以上ある
・借り換え前と後の金利差が年1%以上である
・返済期間が10年以上残っている
条件に当てはまる場合は、借り換えを検討してみてもよいでしょう。また、上の条件に当てはまらなくてもメリットがあるケースもあるため、借り換えと繰り上げ返済の両方を試算して、比較するのがおすすめです。
借り換えの良いところは、手元の資金を持ち出す必要がない点です。適切に借り換えができれば、繰り上げ返済のメリットである資金不足を回避しながら、返済負担を軽減できます。
ただし、借り換えをするには借換先の審査を受けなければならず、手続きの手間や審査落ちのリスクがともないます。また、借換時には手数料などの費用が発生するため、借り換えの効果が相殺されたり、かえって負担が増えたりするケースがあることにも注意しましょう。
住宅ローンを繰り上げ返済はメリット・デメリットを比較して利用しましょう
繰り上げ返済には、将来的な利息の支払額を削減して、負担を軽減するという大きなメリットがあります。支払期間の短縮や月々の支払額の軽減など、目的に応じた方式の選択も可能です。
しかし、適切な方法で繰り上げ返済を実行しないと、かえって負担感が増したり効果が小さくなったりといったデメリットが生じることがあるため、十分に注意しましょう。
繰り上げ返済を検討するときには、手数料や住宅ローン控除などさまざまな要素を考慮したうえで効果を試算し、ベストな方法、タイミングを見極めることが重要です。
出典
金融広報中央委員会 知るぽると「繰り上げ返済シミュレーション」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
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