住宅ローンを借り換えるのに良い時期を理解すれば「借り換えたのに負担が増えた……」などという失敗をしなくて済みます。
ここでは、住宅ローン借り換えの時期について、条件やタイミングを待つときの注意点をまとめました。合わせて条件別の借り換え例も紹介していますので、参考にしてください。
日々の生活における、お金にまつわる消費者の疑問や不安に対する解決策や知識、金融業界の最新トレンドを、解りやすく毎日配信しております。お金に関するコンシェルジュを目指し、快適で、より良い生活のアイディアを提供します。
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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目次
住宅ローンの借り換えに向いているタイミング5つ
住宅ローンの借り換えによって最良の効果を得るためには、借換先の選定と同様に借り換える時期も大切です。住宅ローンの残高や残年数、金利、生活の状況といった条件をもとに、借り換えに適した時期を見極めましょう。
具体的には、次のような条件に当てはまる時期が、住宅ローンの借り換えに向いているといわれています。
①返済残高1000万円以上、残りの返済年数10年以上のとき
ローン残高や残年数は、借り換えのメリットがどのぐらい出るのかを左右する、重要要素です。返済額の軽減という点に注目すると、効果が出やすいのはローン残高が1000万円、残りの返済年数が10年を下回らない時期だといわれています。
例えば、ローン残高900万円/残りの返済年数8年/金利2.0%(元利均等返済・ボーナス払いなし・金利変動なし)の住宅ローンを、金利以外は同様の条件で、金利1.0%の住宅ローンに借り換えたとしましょう。
計算すると、借り換え後の総返済額は37万8122円減額されます。しかし、借り換えには事務手数料などの諸費用がかかるため、場合によっては借り換えよりも負担が大きくなってしまいます。
※住宅金融支援機構「借換えシミュレーション」を利用。
※このシミュレーションは概算です。実際の金額とは異なる場合がございます。
②更新で返済中の住宅ローンの金利が上がったとき
住宅ローンには、金利の見直しが行われるタイミングがあります。金利見直しによって金利が上がったら、借り換えを検討するのに良い時期だといえるでしょう。
なぜなら、より金利が低いほかの住宅ローンに借り換えることで、総支払額を低減できる可能性が高くなるためです。一般的には、借り換え前後で金利差が1%以上あれば、十分な減額が見込めます。
また、当初固定金利の優遇期間が終わるときにも金利が上がることがあるため、状況次第では借り換えを視野に入れてもよいでしょう。
③金利水準が返済中の住宅ローンより下がった
金利水準が返済中の住宅ローンと比べて下がったタイミングであれば、より金利の低い借換先を探しやすくなります。
住宅ローンの借り換えでは、借り換え前後の金利差が大きいほど効果が出やすい仕組みです。そのため、借り換えでできるだけ大きな効果を出したいと考えるなら、金利水準が下がったタイミングで借り換えを検討するとよいでしょう。
④職業や収入が変化する前
転職する、もしくは勤務形態が変化する予定がある場合であれば、職業や収入が変わる前の時期に申し込む方が、借り換えの審査で有利になる可能性があります。
住宅ローンの審査において、年収や職業、勤続年数は重要な判断基準項目です。転職して勤続年数が短くなれば収入の安定性が低いと見なされて、審査では不利になるでしょう。
特に借り換えの場合は、新規借り入れよりも審査の基準が上がるともいわれているため、転職後すぐの申し込みは避けた方が無難です。また、勤務形態の変化によって万が一年収が下がると審査基準において不利になるリスクが上がります。
⑤ライフステージに変化があったとき
子どもの誕生や進学などによってライフステージが変わると、家計の状況も変化します。
家計における支出のなかでも大きな割合を占める住宅ローンの負担を見直すという意味で、節目に合わせて借り換えを検討することは、良い選択肢の1つといえるでしょう。
また、ライフステージが変わることにより、今までよりも手厚い備えが必要となることもあります。住宅ローン借り換えのタイミングを利用して、団信の保障内容をより充実したものに切り替えることも可能です。
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住宅ローンの借り換えを検討した方がいい人
住宅ローンは長期間にわたって返済が続く場合がほとんどのため、返済期間中に家計の状況や市場の動向、ライフステージなどが変化することは珍しくありません。
次のような人は、住宅ローンを借り換えて借り入れ条件などの最適化を図るのに良いタイミングだといえます。
4つのパターンを挙げますので、それぞれ詳しくみていきましょう。
①月々の返済の負担が大きいと感じる人
住宅ローンの借り換えで得られる最大のメリットは、利息負担を軽減し、月々の返済額を減らせる点にあります。
家計の変化などによって「現在の借入条件では返済の負担が重い」と感じる場合は、より金利の低い住宅ローンへの借り換えを検討するとよいでしょう。
また、借り換えによってボーナス返済の金額を下げる(なしにする)、返済期間を短縮するといった調整も可能です。返済内容が家計にそぐわなくなったと感じたら、借り換えを検討してみましょう。
②金利タイプを変更したいと考えている人
住宅ローンを借り換える際には、金利タイプを改めて選択できます。 そのため、例えば次のような場合には、住宅ローン借り換えが有力な選択肢となるでしょう。
・今後の金利上昇リスクを見越して変動金利から固定金利に変更したい
・当初の固定期間が終わったため改めて固定金利で借り直したい
・より金利の低い変動金利に切り替えたい
③現在の団体信用生命保険(団信)の内容に不安がある人
住宅ローンを借り換えると、一般的には団信も借換先のものになります。つまり、借り換えによって、団信を最新のものに切り替えられるわけです。
団信の保障内容は年々アップデートされており、カバー範囲がより幅広く、柔軟に選択できるものが多く登場しています。現在の団信の保障が十分ではないと感じる場合は、より手厚い団信が付く住宅ローンに借り換えるのも1つの方法です。
④リフォームを予定している人
金融機関にもよりますが、住宅ローンを借り換える際に、リフォームの施工費用を上乗せして借りられる場合があります。
リフォームローンは住宅ローンと比べて、金利が高めに設定されているものが少なくありません。リフォームのタイミングでリフォーム費用込みの住宅ローンに借り換えれば、トータルのコストを抑えられる可能性があります。
金利タイプ別の借り換え時期の考え方
現在の住宅ローンの金利タイプによっても、借り換えに有利な時期が異なる場合があります。3つのパターンに分けて、借り換え時期の考え方をみていきましょう。
変動金利での借り入れには、将来的な金利変動のリスクがあります。現在の金利が比較的低い水準にあるときに固定金利に借り換えてリスクを回避する方法が、選択肢の1つとなるでしょう。
ただし、残りの返済期間が短い場合は、金利が上昇した際の影響はそれほど大きくありません。そのため、設定金利の低い変動金利からわざわざ借り換える必要性は低いといえます。
固定金利から固定金利への借り換えでメリットがあるのは、借り換え後の金利が借り換え前と比べて低い場合です。今後の金利低下が見込まれる市場情勢であれば、金利が下がるタイミングを少し待つ方が、メリットが大きくなる可能性があります。
固定金利から変動金利への借り換えには、借り換え直後は返済額を抑えられても、将来的な金利上昇でメリットが失われる危険があります。
リスクが比較的小さいのは、「借り換え前後の金利差が大きく、今後の金利上昇を見込みに入れても減額効果が高いとき」「残りの返済期間が短く金利上昇の影響を受けにくい場合」などです。
借換時期を待つときの注意点
借り換えの効果が大きくなる時期を狙って、金利などの条件がよくなるタイミングを待とうと考える方もいるでしょう。
しかし、時期を待ったことによってかえってタイミングを逃し、後悔するケースもあるため注意が必要です。タイミングを待たずに、思いきって借り換えに踏み切る方が良い場合もあります。
特に頭に置いておきたいのは、次の2つのポイントです。
1.タイミングが遅れるとメリットが小さくなる可能性がある
上で説明した「ローン残高1000万円以上、残りの返済年数10年以上」という条件を満たす時期であっても、ローン残高・残りの返済年数が減少するほど、借り換えの効果は小さくなる傾向にあります。
例えばローン残高2500万円、残りの返済年数25年の住宅ローンを、金利2.0%から金利1.0%に借り換えたとしましょう(いずれも元利均等返済・ボーナス払いなし・金利変動なし)。この場合、返済総額は約352万円削減されます。
しかし、住宅ローン残高が約1650万円となる10年後に借り換えをすると、削減額は134万円程度と半分以下になってしまう計算です。
※住宅金融支援機構「借換えシミュレーション」を利用。
※このシミュレーションは概算です。実際の金額とは異なる場合がございます。
住宅ローン金利が下がるのを待って、思惑どおりに金利が下がれば問題はないかもしれません。しかし、金利が下がらない場合、待てば待つほど借り換えのメリットは失われていくのです。
2.収入や健康状態が変化するリスクがある
条件の良いタイミングを待っている間に自身の収入や健康状態などの状況が変わり、新たな借り入れが難しくなるケースもあります。
住宅ローンの借り換えでは新規借り入れと同じように審査があるため、収入が減少したり、他社からの借り入れが増えたりといった事由があれば、審査に落ちる可能性が高くなります。
また、住宅ローンの借り換えでも団信の加入が必須である場合がほとんどです。しかし、大病を患うなど健康状態に問題が生じると、団信への加入が困難になることも考えられます。年齢が上がるほど、健康状態に問題が生じる可能性は増すでしょう。
将来自身の状況がどのように変化するかは、誰にも分かりません。タイミングを待つ間に借り換え自体ができない状況に陥る可能性がないとは言い切れないのです。
借換時期の見極めにはシミュレーションが重要
住宅ローンの借り換えには、返済総額や月々の返済額を軽減できるという大きなメリットがあります。しかし、借換先の選定や借り換え時期の見極めに失敗すると、借り換え前よりも負担が大きくなることもあるため注意しなければなりません。
金利などが好条件の住宅ローンが見つかり「借り換えをしようかな」と思ったら、返済をシミュレーションして、借り換え前と借り換え後を比較してみましょう。
数字を出してみることで、実際にどのぐらいのメリットが得られるのかをイメージできます。このときに気を付けたいのが、借換時には諸費用がかかることです。手数料などの費用を含めても十分なメリットがあるかどうかを確かめる必要があります。
計算は自分でもできますが、各金融機関が提供しているシミュレーターを利用すると便利です。ローン残高や残りの返済年数、利率、返済額など簡単な情報を入力するだけで、借り換え後の削減額が確認できます。
住宅ローンの借り換えのシミュレーション例
いくつかの例について実際にシミュレーションし、金利や時期による借り換えの効果の違いを比較してみます。
※計算結果の金額は「借り換え前⇒借り換え後(差額)」
■パターン1
・ローン残高2500万円
・残りの返済年数25年
・元利均等返済
・ボーナス払いなし
・金利変動なし
(1)借入金利年2.0%から年1.5%に借り換える場合
・毎月の返済額:10万5963円⇒9万9984円(△5979円)
・総返済額:3178万8933円⇒2999万5049円(△179万3884円)
(2)借入金利年2.0%から年0.7%に借り換える場合
毎月の返済額:10万5963円⇒9万861円(差額△1万5102円)
総返済額:3178万8933円⇒2725万8396円(△453万537円)
(1)は借り換え前後の金利差が1%を切っています。そのため毎月の返済額の削減効果は小さいですが、ローン残高、残りの返済年数が大きいため総返済額では、仮に諸費用が79万円以下だった場合、その諸費用を差し引いても100万円以上の削減効果が見込める計算です。
(2)のように1%以上の金利差がある場合は、毎月の返済額、返済総額ともに大幅な削減を期待できることがわかります。
■パターン2
・借入金利年2.0%から0.7%に借り換え
・元利均等返済
・ボーナス払いなし
・金利変動なし
(1)ローン残高1500万円、残りの返済年数12年の場合
毎月の返済額:11万7252円⇒10万8633円(△8619円)
総返済額:1688万4295円⇒1564万3118円(△124万1177円)
(2)残高800万円、残年数7年の場合
毎月の返済額:10万2139円⇒9万7618円(△4521円)
総返済額:857万9677円⇒819万9888円(△37万9789円)
(1)のように金利差1%以上、ローン残高1000万円以上、残りの返済年数10年以上を満たしている場合は、ローン残高に対して大きな削減効果があります。
一方、(2)のようにローン残高および残りの返済年数の条件を満たしていない場合も返済額は削減されますが、その金額は小さく、諸費用を含めるとメリットが得られないケースもあります。
ベストな時期を見極めて住宅ローンを借り換えましょう
住宅ローンを借り換える際は、条件の良い借換先を探すことも大切ですが、時期を見極めることも重要です。具体的には、ローン残高や残りの返済年数、借入金利などの条件がそろうことや、生活の変化に合わせること、そして審査で不利になる前に申し込むことがポイントです。
また、借り換えのタイミングがきたと思ったら、借り換え前後の返済額をしっかりシミュレーションして、見込んだような効果が本当にあるかどうかを確認することも忘れてはなりません。ベストな時期を選んで、よりメリットが得られる借り換えを実現しましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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