今回は、親子リレーとはどんなものなのか、どのようなメリット・デメリットがあるのかについて解説します。
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監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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住宅ローンの親子リレーとは
親子リレーは、親と子の2世代にわたって返済できる住宅ローンです。
金融機関によって「親子リレー返済」「親子二世代型」などいろいろな呼び方があります。契約者である親がまず返済をし、特定の条件を満たす子の世代でも返済をしていくものです。
家が欲しいと思っても、収入面や年齢面であきらめなければならないという人もいらっしゃるでしょう。実は、住宅ローンは1人だけで借り入れなければならない、というものではありません。ペアローンや収入合算のように、2人で借り入れができるものもあります。
特に年齢面で住宅ローンをあきらめた人に知ってほしいのが、この「親子リレー」という商品です。
親子ペアローンとの違い
親子ペアローンと親子リレーローンの大きな違いは、住宅ローン契約の本数です。親子リレーローンは住宅ローン契約1本ですが、親子ペアローンの住宅ローン契約は2本。親と子どもがそれぞれ契約者となり、それぞれで住宅ローン契約を結びます。
そのため、申込時には契約者それぞれに、年齢や年収などの申し込み条件を満たさなくてはいけません。
親子ペアローンにすれば契約者とともに、住宅ローン控除の恩恵を受けることができます。しかし、親か子どものどちらかに万が一のことが起こった場合、債務免除はその人1人分のみとなる点や、住宅ローン契約2本分の事務手数料などがかかるといった点には気を付けましょう。
親子リレーローンか親子ペアローンで悩んでいる人は、まずそれぞれの特徴やメリット・デメリットをきちんと理解するとよいでしょう。
親子リレーの取り扱いがある金融機関
住宅金融支援機構が融資する「フラット35」では、返済のしかたの1つとして「親子リレー返済」というものがあります。親子2世代にわたって住宅ローンを返済していくものですが、後継者となる返済者にいくつかの条件があります。その条件は以下のとおりです。
1:後継者が申込者の子または孫等、またはその配偶者であって、定期的な収入がある
2:後継者の年齢が、申込時に満70歳未満であること
3:後継者が連帯債務者となること
1がフラット35における親子リレー返済の特徴で、子、孫などの直系卑属、その配偶者も後継者として認められます。申込者の年齢にかかわらず、後継者の年齢に合わせて借入期間が設定できるのも大きな特徴です。
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りそな銀行には、住宅ローンの商品として「親子2世代型」があります。こちらはフラット35よりも後継者に対する条件が多く、主なものは以下のとおりです。
1:後継者が、現在同居中であるかまたは将来同居を予定している実子または養子であること
2:借入時の年齢が満20歳以上満70歳未満、完済時には後継者が満80歳未満であること
3:前年の税込み年収が100万円以上であること
4:給与所得者は1年以上の勤続年数があること、給与所得者以外は勤続年数または営業年数が3年以上あること
5:団体信用生命保険に加入可能であること
5についてはフラット35の親子リレー返済にはない項目ですが、フラット35はそもそも団体信用生命保険の加入が任意です。その他の住宅ローンは、基本的に団体信用生命保険の加入が必須なので、おぼえておくとよいでしょう。
紹介した住宅金融支援機構やりそな銀行以外にも、千葉銀行や常陽銀行でも親子リレーの取り扱いがあります。自分が検討している金融機関に親子リレーがあるかどうか、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
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親子リレーの4つの特徴とは
いくつか親子リレーを紹介してきましたが、親子リレーには通常の住宅ローンにはない特徴があります。それらの特徴は、メリットになることもあれば、デメリットにもなりうるものです。
ここでは親子リレーの特徴と、どのようなメリットやデメリットがあるのかを解説します。
①借入期間が長く設定できる
親子リレーの特徴として、借入期間が長く設定できることがあげられます。なぜ長く設定できるのかというと、後継者である子の年齢に合わせて借入期間を決めるからです。
例えば60歳の男性が「完済時点の年齢が80歳未満」である住宅ローンを1人で借りた場合、借り入れ可能期間は19年間です。ところがこれを親子ローンにして、後継者が31歳だった場合は48年間が借り入れ可能期間となります。
フラット35の借り入れ年数上限は35年間なので、上限の35年間を借入期間とすることができるのです。長期優良住宅を対象とするフラット50の場合は、上記の例でいうと48年間が借り入れ可能期間となります。
このように親が高齢であっても、親子リレーにすることで長期間の借り入れを設定できます。また、この特徴を利用して「子の住宅購入を、数年間ローン返済することで支援する」といったこともできます。
②住宅ローンの契約が1本の扱いである
親子リレーの場合は、住宅ローンの契約は1本です。そのため返済するのは2人でも、手数料は1本分で済むことになります。これが親子ペアローンになると住宅ローン契約が2本になり、手数料も2本分と高額になってしまいます。
ただし、注意しなければいけないのが「土地・住宅の持ち分」です。例えば親子リレーで住宅を建て、将来は子のものになるからと土地・建物すべてを子の所有にしたとしましょう。こうした場合、お金を払っているのに親に所有権がないため、贈与とみなされてしまう可能性があります。贈与は、ある一定以上の金額になると贈与税が発生します。
こうしたトラブルを避けるために、土地・住宅の持ち分は住宅ローンの比率と同じにして設定しておくとよいでしょう。
③子どもへの将来の負担が大きい
親子リレーローンは、完済まで親・子どもが2世代で返済するため、途中でどちらかが働けなくなった場合の残債の肩代わりについて注意が必要です。一般的に考えれば、親のほうが働けなくなる可能性が高いため、子どもの負担が大きくなる恐れがあります。
また、独身の子どもと親子リレーローンを組んだ場合、子どものライフステージの変化に対応できるかどうかもよく検討しなくてはいけません。
もし、将来子どもが結婚して、自分の家を持つかもしれないのであれば、親子リレーローンはよく考えて契約したほうがよいでしょう。
④親が死亡した場合トラブルになりやすい
一般的に親子リレーローンは、同居予定の親子が組むことが多いローンです。親が健在のうちは特に問題ありませんが、親が死亡して住宅の相続を行うときに、兄弟姉妹がいると持ち分の分割を主張されるかもしれません。
このようなトラブルを回避するためにも、事前に親や兄弟姉妹とよく話し合って、対策を立てておいたほうがよいでしょう。
また、親が死亡したあと親の保有分は相続税の対象になります。親の住宅の持ち分によっては、高額な相続税がかかる可能性があるため注意が必要です。
しかし、あまりにも持ち分に合っていない登記をすると、贈与とみなされることもあります。
最終的には子どものものになるので、最初から持ち分をすべて子どもにしようと考える人もいますが、やめておきましょう。親名義の不動産を子どもに贈与したとみなされる「みなし贈与」になると、贈与税が課税されることになります。
親子リレーローンを利用するための条件
親子リレーローンは、子どもなどの一定の条件を満たす人を後継者として、2世代で住宅ローンを返済する制度です。親子リレーローンを利用するための条件があるので、しっかりと理解しておきましょう。
この見出しでは、血縁関係と同居の条件や、返済能力について詳しく解説します。
血縁関係と同居の状況
親子リレーローンを利用するには、申込者本人(親)と後継者(子)の関係や同居の状況が確認されます。利用するためには下記の条件を満たす必要があります。
●申込者ご本人の子ども、もしくはその配偶者で定期収入がある人
●申込時の年齢が満70歳未満の人
●連帯債務者になることができる人
学生・未成年でも可能な場合がありますので、詳しくは金融機関に確認してください。
また、親子リレーローンは同居しているかどうかも1つのポイントとして挙げられます。商品によっては、同居を前提としているものもあれば、親子であれば同居は問わないものもあります。
こちらも、気になる人は事前に金融機関に確認しておくと安心です。
返済能力がある
親子リレーローンも通常の住宅ローンと同じで、返済能力がない人は審査で落ちてしまいます。金融機関によって細かい条件は変わりますが、下記で挙げる条件を参考にしておくとよいでしょう。
●前年の税込年収が100万円以上の人
●給与所得者の場合は勤続年数1年以上の人
●給与所得者以外の場合は勤続もしくは営業年数3年以上の人
また、返済負担率を超えた金額で契約はできないため、他社の借り入れがないかどうかにも注意してください。
親子リレーローンをおすすめできる人
親子リレーローンは、2世代でローン返済するものなので、借入額が増やせるなどのメリットがある一方、子どもに負担がかかりやすくなるなどのデメリットがあります。
それらを踏まえたうえで、親子リレーローンをおすすめできる人は、下記で挙げる人です。
●毎月の返済額を抑えたい人
●1人では住宅ローンが組めない人
返済期間を長く設定できる親子リレーローンは、できる限り毎月の返済額を抑えたい人におすすめです。同じ借入金額でも、返済期間が長くなればそれだけ毎月の支払額が少なくなります。
月々の負担が減れば、余裕ができた分貯蓄に回したり、養育費などに回したりすることが可能になります。計画的に資金がたまれば、住宅ローンの繰上返済もしやすくなるでしょう。
また、年齢や収入の関係で住宅ローンが組めない人も、親子リレーローンなら組める可能性があります。2人の収入を合わせれば、借入希望額も増やせるので、理想のマイホームが手に入るかもしれません。
まずは家族、子どもと話し合ってどうするか考えよう
親が高齢で住宅ローンを組みにくい場合でも、親子リレーを使えば住宅ローンを組める可能性が出てきます。ただ、後継者である子も債務を負う形になるため、子が別途、住宅建築やマンション購入を考えているなら、逆にその希望は通りにくくなってしまいます。
まずは家族で話し合いをもち、自分の意思を伝え、子の意思を確認するところから始めてみましょう。親子リレーは、子の住宅購入支援であっても条件は変わりません。家族のライフイベントと意思をしっかり確認して、良い方向に進めるように話し合ってみてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
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