更新日: 2024.06.27 年収
天皇陛下の収入はどのくらい? 気になる仕事内容と併せて解説
先帝譲位による皇位継承は、江戸時代後期1817年の光格天皇以来なので、202年ぶりのことです。また近代憲法典制定以降、初めてのことでもあったため、さまざまな人たちに注目されました。
しかし普段の生活においては、政治の場面などに出ることはないため、天皇陛下が何をされているのか、よく分からないという人も多いでしょう。本記事では天皇陛下の仕事内容や、収入について解説します。
執筆者:古田靖昭(ふるた やすあき)
二級ファイナンシャルプランニング技能士
天皇陛下の仕事内容
現在の天皇陛下の仕事は、大きく「国事行為」「公的行為」「私的行為」の3つに分かれています。
国事行為
国事行為は、日本国憲法第6条と第7条に記載されていることが主な役割です。憲法第6条には、内閣総理大臣と最高裁判所長官の「任命」と記述されています。内閣総理大臣は、与党第1党の党首が国会において、また最高裁判所長官は内閣においてそれぞれ指名された後、皇居において天皇陛下より任命されます。
歴史的に時の為政者の選び方は、さまざまなものがあります。例えば平安時代の朝廷は、摂政または関白などが中心であり、藤原氏の中の五摂家といわれる「近衛」「九条」「一条」「二条」「鷹司」の家の中から輩出されました。しかし就任する人は決まっていても、公式に摂政または関白になるには天皇陛下が形式的に任官を認める必要がありました。
いわば憲法第6条の国事行為による任命権は、歴史的な意味合いも含めたものとなっているといえるでしょう。
憲法第7条に記述されているその他の役割として、国会によって制定された法律、内閣による政令などを公布することや、国会の召集などがあります。国事行為をするには、内閣の助言と承認が必要であり、内閣が責任を負います。
天皇が責任を負わないというのは、立憲君主国では採用されていることであり、大日本帝国憲法第3条の「天皇の神聖不可侵」というのも君主に責任を及ぼさないために定められていました。
公的行為
公的行為は、憲法第1条にある「日本国民統合の象徴」としてすることです。各種大会などの行幸や、国際親善、外国への公式訪問などが該当します。
私的行為
私的行為は、天皇陛下の個人的な行動とされがちですが、その中に祭祀行為が含まれています。祭祀行為は国家や国民のために祈願することで、代表的なものは宮中祭祀です。宮中祭祀は、皇居の中にある宮中三殿において行います。
例えば、11月23日には新嘗祭(にいなめさい)という、天皇陛下が新穀を、天照大神を始めとする神々に供えて感謝を奏上する儀式があります。
祭祀行為は、現在でこそ私的行為とされているものの、鎌倉時代の順徳天皇の宸筆である「禁秘御抄」においては、「およそ禁中作法、まず神事、のち他事、旦暮(たんぼ)敬神の叡慮(えいりょ)懈怠(けたい)なく」として神事は最優先すべき事項として挙げられています。
天皇陛下の収入
現在の天皇陛下の収入は、皇室経済法に定められる「内廷費」「皇族費」「宮廷費」のうち、内廷費から得ることになります。
内廷費とは、天皇・皇后両陛下や上皇・上皇后両陛下、愛子内親王殿下の日常の費用などに充てるもので、法律によって定額が定められています。2023年度は3億2400万円です。なお内廷費として支出したものは、御手元金となるので、宮内庁の経理する公金ではありません。
天皇陛下の収入は3億2400万円の中に含まれるため、明確に収入が決まっているわけではありません。
しかし秋篠宮家を始めとした各宮家については、皇族費から支出するものであり、2023年度の総額は2億6017万円です。皇族1人当たり年額3050万円であり、皇位継承順位1位の秋篠宮皇嗣殿下は9150万円になっています。
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象徴としての役割
天皇陛下の収入は、内廷費3億2400万円に含まれるため、明確に金額が公表されているわけではありません。しかし日本の歴史を一身で背負われているにふさわしい金額といえるのではないでしょうか。
2022年天皇陛下のお誕生日に際した記者会見において、歴代の天皇として、戦国時代の後奈良天皇の宸翰(しんかん)般若心経の奥書「私は民の父母として、徳を行き渡らせることができず心を痛めている」という思いを紹介されています。
また、鎌倉時代の花園天皇が皇太子量仁(かずひと、後の光厳天皇)親王に宛てた「誡太子書(かいたいしのしょ)」において徳を積むことの大切さや道義、礼儀を含めた学問をしなければならないことを紹介されました。
そして歴代の天皇の事績を心に留めて、研鑽を積みつつ、国民を思い、国民に寄り添いながら象徴としての務めを果たすことで締めくくられていました。
日本国憲法に基づく象徴としての役割だけではなく、天皇の歴史に基づいて今上陛下は象徴としての務めを果たしているといえるのではないでしょうか。
出典
皇室事典編集委員会 皇室辞典 令和版(KADOKAWA、2019)
藤田覚 光格天皇 自身を後にし天下万民を先とし(ミネルヴァ書房、2018)
国立国会図書館 日本国憲法の誕生 大日本帝国憲法
藤田徳太郎等編 新訳詳註皇室御聖徳集(金星堂、1935)
宮内庁 予算
宮内庁 皇族費の各宮家別内訳(令和5年度)
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士